Updated: Tokyo  2016/02/03 20:01  |  New York  2016/02/03 06:01  |  London  2016/02/03 11:01
 

原油安、今回は世界経済にとって厄介な問題となる可能性

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    (ブルームバーグ):過去75年間に起こったほぼ全ての経済危機の前に原油価格は上昇していた。現在懸念されているのは、エネルギー価格の下落が世界景気を急激に悪化させるのではないかということだ。

直感的な見方には相反しているが、これが強まりつつある考え方だ。世界で商品価格下落による打撃をまさに受けている企業と投資家の割合が拡大しているためだ。例えば、米アップルは2015年10-12月の売上高が軟化した理由として、一部産油国の経済成長鈍化を挙げた。

オランダのABNアムロ銀行(アムステルダム)のチーフエコノミスト、ハン・デヨング氏は「原油価格の上昇を望み、まして祈ることになるとは思いもよらなかった。原油はぜひとも値上がりする必要がある」と指摘する。

問題は、原油価格が前回、超安値となった15年前または25年前と比較して今は世界経済の新興国への依存度が大幅に高まっているということだ。さらに、米国はサウジアラビアとロシアに並ぶ主要産油国として台頭している。以前は、原油下落によって輸入国が受ける恩恵の方が、輸出国が被る打撃を上回っていた。

さらに中国とインドを除く大半の主要新興国は、原油などの資源を豊富に保有している。国際通貨基金(IMF)によれば、これらの国々は世界の国内総生産(GDP)の約40%を占めており、この割合は1990年と比較して約2倍に拡大している。

ロシアやサウジ、ナイジェリア、ブラジルの経済成長は大きく鈍化し、マイナス成長となっているケースもある。

IMFの調査担当副ディレクター、ジアン・マリア・ミレシフェレッティ氏は「多くの原油輸出国は非常に困難な状況に陥っている。そのため、これらの国々は支出を大幅に削減する必要があり、それが経済成長に影響を及ぼすだろう」との見方を示す。

これらの国々の状況は非常に深刻で、長い間忘れ去られていた公的債務のデフォルト(債務不履行)の可能性が再び懸念され始めている。オックスフォード・エコノミクスの世界マクロ調査責任者、ガブリエル・スターン氏は「歴史を振り返ると、資源生産国がたどる可能性の高い運命は極めて悲観的なものだ」と指摘。原油価格が1バレル=10ドルを割り込み、他の商品の価格も下落した1980年代には「デフォルトを回避した資源国はむしろ例外だった」とし、同氏がモニターしていた国々のうち68%はデフォルトに陥ったと述べた。

世界の原油輸出国上位10カ国の一角を成すベネズエラについて、市場はデフォルトに陥る可能性のある国の一つとみている。2022年に満期を迎えるベネズエラ国債は額面1ドル当たり38セントで取引されており、利回りは40%を超えている。13年には10%を下回っていた。

IMFと世界銀行は既に、アゼルバイジャンとスリナムに対する緊急融資の提供について協議している。ナイジェリアも世銀とアフリカ開発銀行に支援を求めている。

原題:For Once, Low Oil Prices May Be a Problem for World’s Economy(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:ロンドン Javier Blas jblas3@bloomberg.net; Davos Simon Kennedy skennedy4@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Will Kennedy wkennedy3@bloomberg.net

更新日時: 2016/02/03 14:42 JST

 
 
 
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