ダルビッシュ選手の「世に出回っている“ほとんど効果の無いトレーニング”」ツイートへの反応 - Togetterまとめに関連する話。 このやり取りに関連するバランストレーニングの効果についての研究を紹介した記事がリンクされている。 バランスボールやバランスディスクなどで「バランスが鍛えられる」? – Atlas Training System 論文へのリンクもあるので、この件に興味がある人にはお勧めである。 ダルビッシュの発言に対する反論として、バランスを鍛える効果以外の効果があると指摘している人がいるが、何らかの学術研究を元に意見を提示しているわけではなく、単に思いつきや主観を書いている人ばかりである。ほとんどの場合バランストレーニングは何が可能になると宣伝されていて、それがどう検証されてきたかという前提を無視している。 可能性を考えることが無意味だとは思わないが、検証を経ていない意見は脆弱だ。スポーツ関係者・武術関係者にその種の検証なしの意見を自信ありげに表明する人がいるのは、客観性のなさやトレーニング手法の検証についての無知をさらけ出しているようで暗然とした気持ちになってくる。もちろん研究があるからと言って瑕疵のない完全な意見だというわけではないが、そういう問題を議論するレベルにさえ達していない意見を言う専門家がいるというのは良いことだとは思わない。 この件に関してid:gryphonさんが関連記事を書いていた。 思えば「体幹」という言葉や概念も(一般化は)新しいよね。いつ、だれが…… - 見えない道場本舗 気になったので簡単に調べてみた。 まず「体幹」という言葉自体は人体や生物の部位を示す専門用語として戦前から使われている。ざっと調べたところでは1889年(明治22年)の動物学雑誌の次の記事に「軆幹」という言葉が使われている。ちゃんと調べれば初出はもっと遡れるだろう。 CiNii 論文 - 發育學一斑(二二四頁ノ續キ)(第廿四版) ただし、医学・生物学用語で使われる「体幹」と体幹トレーニングの意味する範囲が完全に同じというわけではないと思う。定義の問題については最後に紹介する記事に解説がある。 次に朝日新聞・週刊朝日・AERAのデータベース「聞蔵IIビジュアル」で「体幹」の過去20年間の登場件数を検索してみた。 なお、「団体幹部」などの関係ない用語は除外している。 内容を見ると、かつては医療や障害などの記事が多く、次第にスポーツ選手のトレーニングの記事が増えてきた。特にここ10年程でスポーツ、エクササイズの用例が急増している。これはあくまで特定の新聞・雑誌記事中心の検索なので、実態とは微妙にズレがあるだろうが、世間の認知の度合いから大きく外れてはいないはずだ。なお朝日新聞では「体幹トレーニング」は1997年、高校野球の記事で初登場している。 この言葉が一般に知られ、使われるようになるのはここ10年前後でスポーツ選手の体幹トレーニングが広く知れ渡るようになってからだと言っていいだろう。 なお、体幹トレーニングの意義やポイント、その流行の問題については国立スポーツ科学センタートレーニング指導員の河森直紀氏が分かりやすい記事を書いている。2016-02-03
■バランス・トレーニングや体幹トレーニングについての最近の話題から
バランストレーニングについて
体幹について
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