今後、マイナス金利をどのように刻んで変更するのかというルールは確立されていない。将来、デフレ状況が解消されたときに、どのようにマイナス金利を縮小・解除していくのだろうか。そのことに関するコンセンサスは、今のところはない。
今わかっているのは、多くの人が理解しているのは、日銀が追い詰められたら、再びマイナス幅を広げるだろうということくらいである。マイナス幅は、物価のデフレ予想に基づいて広がっていくような、客観的な基準などには基づかないから、かえってそのことが、マイナスの債券利回りを本質的に不安定にさせる。
後々危うい副作用が?
マイナス金利と資産価格の関係
株価などの資産価格がどのように決まるかを単純に示すと、配当を金利で割り引くことで決定されると表現できる。配当割引モデルである。ここでの割引金利には、安全資産の利回りにリスクプレミアムが加味される。
今、日銀が安全資産の利回りを大きなマイナスに誘導すると、割引金利自体がマイナスになって、単純な配当割引モデルが成立しなくなる可能性がある。しかし、割引率が正であると考えると、次のようなことが起こることは容易に想像できるだろう。
リスクプレミアムがマイナス金利に喰われてしまい、割引金利自体がごく小さくなる状況である。つまり、資産価格はより大きく水ぶくれするということだ。これは、マイナス金利下ではリスク性資産への資金シフトが必要以上に促されて、資産価格が過大評価されやすいという傾向が生まれることを意味する。
しかし、厳密に考えると、ここでのリスクプレミアムは、安全資産の利回りが変動するリスクを含んでいるはずだ。日銀がマイナス金利を誘導すると、前述のように債券利回りのボラティリティが大きくなることが後々わかってくる。そうなると、マイナス金利政策を始めた当初は、リスクプレミアムが過小評価されて、資産価格は上昇するが、時間が経過して投資家たちが債券利回りのボラティリティが高まることを認識して、資産価格は下がってしまうことになる。
筆者は、マイナス金利政策ではあまりに極端な介入政策を実施しているように思えてならない。普通の風邪を引いたのに、カフェインの強いドリンク剤を飲んだ上、さらにきつめの風邪薬を服用するような過剰投与の危うさを感じる。金融緩和の弾を撃ち尽くしたから、より副作用の強い薬を飲まなくてはいけないという理屈がよく理解できない。