(2016年1月26日放送)
愛知県で去年の暮れからことしにかけて急激に増えているのがひったくりの被害です。
これまで、お年寄りの女性が狙われやすいとされていましたが、最近は若い女性が被害に遭う事件が増えています。
その背景や被害から身を守る方法を名古屋放送局・福島康児記者が取材しました。
大けがをすることも
警察によりますと、愛知県での去年1年間の被害は381件にのぼりました。
被害者が大けがをした事件もありました。
春日井市では、84歳の女性がかばんをひったくられて転倒し、手の骨を折る重傷を負いました。
被害者が語る恐怖
狙われるのは、お年寄りの女性ばかりではありません。
名古屋市内で被害に遭った19歳の女性は、去年12月の夜、自宅近くの歩道を歩いていたところ、ミニバイクの男にカバンをひったくられました。
「もう、びっくりしました。まさか自分が被害者になるとは思ってなかったので。あの時は動揺が隠せなかったです。怖かったですね」と振り返ります。
当時の状況は
スマートフォンを操作しながら歩いていたという女性の当時の状況を再現してもらいました。
「携帯を右手に持って、歩道のギリギリを歩いていて、鞄を右手の肘にかけていました。そして、鞄に手が伸びてきたときに気づきましたが、何もできませんでした」
女性は強く引っ張られたはずみで転び、手や足にけがをしました。
「私はこんなことが起きるとは思っていなかったので、安心してその道を通っていたんです。もし頭などを打っていたらと思うと怖いですね」と改めて話していました。
ひったくりから身を守る
どうすればひったくりの被害から身を守ることができるのか、専門の警察官に聞きました。
「まず1点目は、バッグを持つ手です。車道側にバッグを持っていると、犯人に狙われやすいと言えます」
「2つ目は歩く位置です。車道側に近い位置に歩いていると、これも犯人に狙われやすいといえます」
実際に試してみると、車道側の手にかばんを持って車道よりを歩くと、簡単にとられてしまいます。
これに対し、かばんを持つ手を反対側にかえ、さらに距離を取って歩くと、狙われにくくなることが分かりました。
スマートフォンに気をとられ
最近ではスマートフォンの画面や音楽に気を取られている人が、被害にあう事件が増えているといいます。
千種警察署の下尾隆一生活安全課長は「スマホを見ながらメールを打ったり、音楽を聴きながらイヤホンをしたりしていると、周りの状況が分からないということで、犯人に狙われやすいといえます。被害に遭う方の大部分が、そういったスマホを見ながら、またはイヤホンを聞きながらが多いと思います」
愛知県内の傾向は
愛知県内で去年最も被害が多かったのが名古屋市の千種区、次いで中区で、一宮市でも多く発生しました。
一方で、ひったくりは、同じ犯人が同じ日に連続して行うケースが少なくありません。
これまで被害がなかった地域でも、突然被害が相次ぐこともあるので注意が必要です。
また警察によると、愛知県では被害者の90%近くが女性です。
犯人は逃げることを考えるので、捕まりにくいようお年寄りや女性を狙う傾向があるということです。
さらに人気の少ない時間帯に防犯カメラのない場所で事件が起きると、警察の捜査が難航するのが実情です。
ものをとられるだけでなく
ひったくりは誰もが被害に遭うおそれがあります。
個人情報が漏れてしまったり、大けがにつながったりすることもあり油断は大敵です。
下尾課長は「ひったくりの被害に遭った場合は、ただ単に財布やバッグをとられるというだけではなく、とられる際に引きずられて転んで大けがをする場合もあります。
自分だけは被害に遭わないという意識を払拭して、いつでも自分が被害者になるという気持ちで、道路を歩いていただきたい」と話していました。