圧倒的だった存在感に陰りが見えるのは確かである。だとしても、米国ほどグ…[続きを読む]
自衛隊のイラク派遣に反対する市民の抗議活動などを、自衛隊が監視していた…
・最新の社説は朝刊休刊日を除き午前5時半ごろ更新します。(編集の都合などで遅れる場合があります)
自衛隊のイラク派遣に反対する市民の抗議活動などを、自衛隊が監視していた。07年に発覚したこの問題について、仙台高裁はきのう、原告1人について10万円の賠償を国に命じた。
実施していたのは、情報保全隊という組織で、約1千人を抱えている。自衛隊からの情報流出や隊員への働きかけ、業務・施設への妨害などを防ぐために情報を集める。それが役割だという。
控訴審では当時の保全隊長が「外部からの働きかけがあると、実力が発揮できない」と、こうした活動の必要性を証言。判決も監視活動そのものには「相応の理由があった」などとし、一審と同様に差し止め請求を退けた。
それでも、保全隊の活動に誰が歯止めをかけるのかという問題は残る。国民を監視しようとする政府機関を適切にチェックできるのか。国会は自らの機能を点検してほしい。
この話は、共産党が内部文書を入手したことから明らかになった。しかし防衛省は法廷で「安全保障に影響を及ぼしかねない」と、文書をつくったのかどうかさえ答えなかった。全容はベールに包まれたままだ。
見過ごしてはならないのは、「医療費負担の見直し」や「原水爆禁止」といった集会まで監視の対象にしていたことだ。判決が指摘したように、これらは明らかな逸脱行為だ。
控訴審では、元隊長が情報収集の対象となりえないものとして「消費増税に反対する街宣」を例に挙げた。しかし実際には、ある団体についてこう報告されている。《12時13分~50分の間、5名を集め、青森市内で『消費税増税反対』の街宣》。線引きはあいまいで、これでは市民の不安が募る。
保全隊の報告書は、保存期間を「1年未満」とされるケースがあり、情報公開の網にもひっかかりにくい。外部の目が入らず、活動の妥当性を検証することが極めて難しい。特定秘密保護法の成立で、防衛分野は幅広く特定秘密に指定することが可能となり、自衛隊の活動はブラックボックス化しかねない。
それでも特定秘密では、不十分とはいえ、政府による指定が適切かをチェックする国会の監視機関がある。保全隊の活動にそうした歯止めをかけるためにも、国会などを通じて、文民統制をきちんと機能させる必要がある。
国の方針に反対する人が、本人も周囲も知らない間に監視されているなどという世の中になってはならない。
PR比べてお得!