Updated: Tokyo  2016/02/03 14:20  |  New York  2016/02/03 00:20  |  London  2016/02/03 05:20
 

宮崎産キャビアが世界市場に-旧ソ連の卵で始まった養殖がふ化

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    (ブルームバーグ):旧ソ連から約30年前に輸入されたチョウザメを使って開始された養殖実験がようやく実を結び、宮崎県でキャビアの生産が始まっている。キャビアは世界中で珍重される高級食材。宮崎県産キャビアは輸出される見通しで、市場で優位に立つロシアやイラン産と競合することになりそうだ。

そのことを考えると濱中章輔氏(71)の頰が緩む。同氏はシロチョウザメ約5000匹を育てる養殖場のオーナーだ。チョウザメが全長約1.4メートルに成長するまでには少なくとも8年かかる。同氏はシロチョウザメ2匹をトラックに載せ雪に覆われた道路を2時間かけて処理場に向かう。

シロチョウザメはそこで処理され、卵であるキャビアには1グラム最高1000円の値が付く。濱中氏がこの日持ち込んだ2匹のチョウザメのうち大きい方からは3.5キログラムの卵が採れた。これは平均採取量に比べ5割多い。さらにチョウザメ肉の切り身の価格は、通常の牛肉を上回る。

濱中氏は処理場で「いっぱい採れたから今夜は家で祝杯だ。酒のつまみはチョウザメの肉。和牛よりもおいしい。思っていたよりたくさん卵が採れたときは本当にうれしい」と語る。

宮崎県でのチョウザメ養殖は、年4750億円の市場規模を誇る国内養殖業界の新潮流と言える。同県が次なる世界的キャビア産地となれば、ここ数年、割安な輸入品の流入で困難な状況に陥っている国内の養殖業界にとって期待の星となりそうだ。

チョウザメ養殖

チョウザメの寿命は100年以上に及ぶ場合もあるが、ここ数十年は乱獲によって生息が脅かされている。野生のチョウザメの漁獲制限が強化される中、キャビアは値上がりし養殖物から採取したキャビアの販売が増えている。

牛や豚など畜産の盛んな宮崎県は1983年、旧ソ連から入手したチョウザメで養殖の研究を開始した。この取り組みは実を結ばなかったが、北米から輸入したシロチョウザメの養殖に成功。宮崎県水産試験場は2011年に養殖されたシロチョウザメの卵からの稚魚の大量生産に成功し、13年にキャビアの商業生産が始まった。

国内産キャビアは既に東京のミシュランの星付きフレンチレストランで提供されているほか、三越など銀座の高級デパートなどで販売されている。ただ、最も期待がかかっているのは輸出市場だ。

キャビア生産

環太平洋連携協定(TPP)の発効でオーストラリアや米国産牛肉の輸入需要が高まる可能性がある。牛肉関連事業をめぐる競争の激化が予想される中で宮崎県ではチョウザメ養殖が新たな雇用を生み出しつつある。宮崎県水産政策課の廣川祐介主査によれば、同県はキャビア産業を年間100億円規模に拡大することを目指している。これは同県の水産生産額を約3割押し上げる効果がある。

宮崎キャビア事業協同組合の坂元基雄参事によれば、宮崎県のキャビア生産高は今年300キロと、昨年の120キロ、2014年の60キロから増加する見通しだ。

原題:Soviet Fish Eggs Inspire Japanese Bid for World Power in Caviar(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 Aya Takada atakada2@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Phoebe Sedgman psedgman2@bloomberg.net

更新日時: 2016/02/03 12:33 JST

 
 
 
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