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【言わねばならないこと】

(65)国民の権利、侵される 元文部官僚・寺脇研さん

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 明治憲法だって立憲主義を定めていて、憲法に基づいて政治が行われてきた。しかし、軍部が憲法の「統帥権の独立」を勝手に拡大解釈して、独断で行動したり、これを盾に政治への介入を強めるようになってから、おかしくなった。そして戦争へと突き進んだ。憲法をねじ曲げることがどんなに怖いことか、歴史から学ぶことができる。

 明治憲法では統治権は国家にあり、天皇はその最高機関として統治権を行使するという天皇機関説は通説だったのに、「不敬」とされ、排斥された。ここでも憲法がねじ曲げられた。権力側が都合のいいように憲法の解釈を変えれば、権力を縛る憲法の意味はなくなり、そこに定められた権力の正当性も失われる。

 安倍政権もいま憲法をねじ曲げている。ことは九条の解釈を変更し、集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法にとどまらない。

 例えば、憲法二三条に「学問の自由」が明記されているのに、安倍晋三首相は国会で、国立大学での国旗掲揚と国歌斉唱について「正しく実施されるべきだ」と述べた。卒業式や入学式も教育行為と位置付けられるので、大学の教育に政府が口をはさむ違憲発言だ。

 文部科学省が国立大学に人文系学部の廃止を求めるような通知を出した話も「大学の自由」への介入だ。教育委員会制度を変えたことで「教育の政治的中立」も損なわれた。

 政府が指定した情報を漏らすと厳罰を科せられる特定秘密保護法でも「知る権利」「表現の自由」が制限される恐れがある。私たちの生活全般にかかわる国民の権利が侵され始めている。

<てらわき・けん> 1952年生まれ。文科省の官僚時代は「ゆとり教育」を推進。映画評論家。京都造形芸術大教授。「立憲政治を取り戻す国民運動委員会」の世話人。

 

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