これは、公務員にとっては政治家の口利きからの予防である。実際、英国では、政治家と官僚の接触を原則として禁止しているので、日本のような口利きという問題は生じない。そこで、当初の案では、政治家と官僚の接触禁止を盛り込んでいた。しかし、国会での修正によって、政治家と官僚との接触を禁止しないまでも、その記録を取って公開することとした。そうした行為によって、政治家の口利きから公務員を守ろうとしたわけだ。
国家公務員制度改革基本法のような法律がなければ、政治家からの口利き話を官僚の側で聞かないのは実際に困難である。しかし、法律があれば、官僚の方から、「記録にとって公開します」と言うことができる。そうなると、政治家も口利きをしなくなるはずだ。
本件の場合どうだったのか。週刊誌報道によれば、国交省や環境省の役人は、甘利事務所と接触している。国交省の担当局長は、カネや商品券はもらっていないと言っているが、それは当然である。
問題は、きちんと記録をとって、公開していたかどうかだ。筆者が担当者であれば、国家公務員制度改革基本法の趣旨を政治家に説明するが、本件ではどうだったのだろうか。
誰でも同じだが、特に政治家や官僚は法律を知っているはずで、それに従わなければいけない。甘利氏側にはもちろん責任があるが、官僚側にもある。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)