辞任した甘利TPP担当相「正直に言えば署名式は出たかった」

 実際には、甘利氏を辞任に追い込んだのは「わずか」1200万円だった。「週刊文春」は先月21日、千葉県にある建設会社がささいな口利きの見返りとして、過去3年にわたって甘利氏や秘書に総額1200万円を現金や接待で提供したと報じた。頼みごとがどれほど「ささい」だったかというと「自社のすぐ横で道路工事をしているせいで、自社の土地から硫化水素が発生している。補償を受けられるように力添えしてくれ」というレベルだった。

 当事者にとっては重要かもしれないが、世界経済の未来とは全く関係のないこうした口利きを依頼するため、この会社の社員は甘利氏の秘書に毎週回転寿司店で寿司をおごったという。甘利氏と直接会い、カネの入った封筒も渡した。この社員は、甘利氏が「カネだけ受け取って」依頼したことはうやむやにされたので暴露を決心したと語った。彼は非常に細かい人で、甘利氏に渡す現金をいちいちコピーしておき、これを持って週刊文春の編集部に向かった。そのため「最初から罠にはめるつもりだったのでは」という陰謀論もささやかれた。建設会社の社員の前で現金入りの封筒をスーツの内ポケットにしまったとする報道について、甘利氏は「私の記憶とは違う」と強く否定した。気持ちは分かるが、形勢を逆転できるディテールではなかった。

 辞任会見の最後の質問は「TPP署名式までもうすぐだが…」というものだった。今回のことさえなければ、今月4日に予定されているTPP署名式で甘利氏が日本代表として署名するはずだった。彼は「正直言えば、署名式は出たかった」と答えた。誰かが止めたわけではない。身の処し方を誤り、彼が自ら行けなくしてしまったのだ。会見の日、日が沈む前に安倍首相は甘利氏の後任を任命した。

東京=金秀恵(キム・スヘ)特派員
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