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 ◆自主規制の風潮 危機感 日大試写会

 日本軍による捕虜虐待場面などが「反日」だとして上映反対の声があがった米映画「不屈の男 アンブロークン」。来月から公開されるのを前に、日本大学芸術学部(練馬区)で、映画を学ぶ学生向けに試写会があった。

 映画監督で作家の森達也さん、ジャーナリストの野中章弘さんを招き、表現を取り巻く日本の状況について語り合った。

 主人公は元ベルリン五輪選手の米兵。第2次大戦中に捕虜になり、収容所で激しい虐待を受ける。実話が元でアンジェリーナ・ジョリーが監督を務めた。米国では一昨年に封切られ、世界各国でも上映された。日本では上映ボイコットを求める声がネットを中心にわき起こり、配給会社がなかなか決まらなかった。

 森さんは「普通に面白かった。どこが反日なのか」と首をひねった。野中さんも「感じ方は人さまざま。ネット上の議論で上映に影響が出るなら、その方が問題」と述べた。2人は、批判を恐れて自主規制を強める社会の風潮に危機感を示した。

 学生からは、人気女優でもある監督がなぜ日本で批判の起きかねない題材を選んだかと疑問の声もあがった。森さんは日本軍の暗部を描いた作品は国内でも多数あったことを指摘。「外国人が撮った作品だから過剰反応が起きた。そこに問題の本質がある」

 映画学科1年の木村風太さん(18)は「反日的という印象は無かった。これで公開が決まらなかったことが不思議」と話した。

 (井上恵一朗)