村田が2回2分23秒のKOで9戦全勝とした。地域王者のベガを、磨いてきた右で倒したところに意義があった。ジャブもスピードがあった。これでラスベガスの不評を払拭(ふっしょく)。年内に計画されている世界戦へ弾みをつけた。
村田は3年前の4月、東洋大職員を辞めてプロ入り。五輪金メダリストの栄光を捨てての覚悟に注目が集まった。世界でも層が厚い中量級での世界とり。それでもプロ挑戦時の会見で「判定狙いのボクシングはしない。誰にも分かる形で決着がつくボクシングをしたい。何戦で世界王者になるとは言えないがプロに向いているかいないかは2年で分かると思う」と言い切った。
その2年が過ぎた。有言実行はメダリストにも相当なプレッシャーだ。その重圧を上海で解消、夢を引き寄せた。この日は中国の金メダリストの鄒市明が本土で初試合をするとあって地元メディアが注目、盛り上がった。鄒市明も村田もボブ・アラムプロモーターの契約選手。中国の巨大市場で見せた好内容によって村田はアラムプロモーターの信頼を取り戻せたと思うが、世界王者に就けば出番も増える。このKOで2500万人の上海市民にボクシングの醍醐味(だいごみ)をアピールできた意味は大きい。 (格闘技評論家)
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