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800mをつなぐ「蒲蒲線」に期待が集まるワケ

東洋経済オンライン 2月2日(火)5時0分配信

 JRの蒲田駅と、京浜急行電鉄の京急蒲田駅。約800m離れたこの2駅が鉄道で結ばれていたら、羽田へのアクセスも便利になるのに、と思う人も多いはずだ。

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 鉄道での羽田空港へのアクセスは、従来からあった東京モノレールに加え、1998年に京急が羽田空港に本格的に乗り入れるようになり、充実するようになった。しかし、京急を利用する場合でも、都区内西部から羽田空港へのアクセスにはいったん品川駅に出ることが必要で、遠回りしなければならない。

■ 蒲蒲線計画とは? 

 そんな中で注目を集めているのが、JR蒲田駅と京急蒲田駅を結ぶ路線「蒲蒲線」計画だ。現在、JR蒲田駅の地上に乗り入れている東急多摩川線の新たな駅を地下に設け、そこから地下路線で京急蒲田駅までをつなぐ。国の交通政策審議会が2015年度内にまとめる答申にこの蒲蒲線計画が盛り込まれるかどうかが、東京都大田区の大きな関心事となっている。

 JR蒲田駅と京急蒲田駅を結ぶメリットは何だろうか。蒲蒲線が開通すれば、東急東横線・東京メトロ副都心線を介して、新宿や渋谷エリアからはもちろん、東急線各線を中心とした東京23区西部から羽田空港へのアクセスが大幅に向上する。

 また、副都心線は西武池袋線・東武東上線と直通運転を行っていることから、埼玉方面からの利便性向上も期待できる。今は京急の品川やモノレールの浜松町までいったん出なくてはならないが、蒲蒲線によってその必要がなくなり、首都圏各地と羽田空港を結ぶ新ルートが生まれるのだ。

 現在の羽田空港へのアクセスは、鉄道では東京モノレールと京急空港線の2路線だが、羽田空港の国際化が進展し、発着枠が拡大していくなかで、新しいアクセスルートの必要性も高まっている。

 JR東日本にも羽田空港への新路線の計画がある。そんな中で、空港と都内のほか、神奈川県内や埼玉県内とのアクセスも改善できる蒲蒲線は、整備する距離は短くてすむ割に、効果の大きい路線だ。

 蒲蒲線計画では、蒲田駅に東急多摩川線の地下駅を新たにつくり、そこから京急蒲田駅の地下までを結ぶ。東急線と京急線は線路の幅が異なるが、大田区独自の計画では、線路幅の違う区間でも直通できる「フリーゲージトレイン」で京急に乗り入れ、そのまま空港まで結ぶという。京急線へのフリーゲージトレインによる乗り入れが難しいとしても、京急蒲田駅の地下まで路線を作り、そこからエレベーターやエスカレーターで京急線のホームに上手につなぐだけで、便利になる。

 大田区は、蒲蒲線の概算建設費を1080億円と試算しており、都内への経済波及効果は初年度に2385億円になると見込んでいる。そのうち利用者の消費支出は325億円で、この支出は初年度のみの建設投資による効果と異なり、その後も年々続いていく。

■ 「商業も発展」と地元の期待大きい

 そんな蒲蒲線には、大田区関係者が熱いまなざしを寄せている。

 新空港線「蒲蒲線」整備促進区民協議会の会長・樋口幸雄さんは「区は30年前からこの800mをつなげようとしている」と語り、昔は青果市場だった大田区産業プラザPiOのある京急蒲田駅周辺と、JRの蒲田駅周辺を結ぶ東西鉄道線の必要性を以前から感じていたという。

 実際に、大田区役所の建物の地下には、蒲蒲線建設のための導入空間があるという。

 「経済波及効果が高く、2つにわかれている区内の地域と地域を結ぶことができる」。同区内の「池上生まれ池上育ち」と語る樋口さんは、217の自治会をまとめる大田区自治会連合会の会長で、区議会議員を務めていたこともある。「二つの蒲田駅を結ぶことで、商業も発展させたい」と話す。

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最終更新:2月2日(火)8時50分

東洋経済オンライン