(2016年2月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

複数の危機に一度に見舞われた欧州は打開策を見いだせるのか (c) Can Stock Photo

 今日の欧州のシステミックリスクについてはどのように考えるべきなのだろうか。欧州連合(EU)は、危機管理でまずまずの成功を収めている。しかし、今のように複数の危機が交差している時には、難局を何とか切り抜ける能力さえも限界に達しつつある。

 この問題が最もはっきり分かるのはギリシャだ。この国は、経済のメルトダウンと難民危機の両方に取り組んでいるが、ほかのEU諸国からは大した支援を受けていない。

 欧州委員会が先週、国境を管理できていないとギリシャ政府を批判する報告書を出した時には、マケドニアがギリシャとの国境検問所を封鎖する決断を一方的に下し、数千人の難民が国境のギリシャ側で立ち往生することになった。

 一方、アテネでは議会が年金改革を議論していた。金融面の生命維持を続ける対価として債権者たちから強いられた措置だ。

 ギリシャは、最も厳しい事例ではあるかもしれないが、複数の危機に同時に見舞われている唯一の国ではない。このジレンマに直面している国々の中で最も重要だというわけでもない。最も重要な国はイタリアだ。

ユーロ圏における長期的な持続可能性

 ローマが抱える問題はギリシャのそれとは異なるものの、イタリア経済のパフォーマンスがこれから、そうなる理由がないのに奇跡的に改善するとでも考えない限り、ユーロ圏におけるイタリアの長期的な持続可能性はギリシャと同じくらい不透明だ。

 イタリアは昨年、北アフリカからの難民の増加に圧倒された。そのうえ、数々の経済問題に直面している。生産性が過去15年間伸びていないこと、公的部門の債務が積み上がっているために政府が財政政策を発動する余地が事実上ないこと、銀行システムが2000億ユーロもの不良債権を抱えており、それ以外にも問題債権に分類される貸付債権が1500億ユーロ存在することなどだ。

 おまけに、主要な野党3党は皆、一度はユーロ圏にとどまることに疑問を呈したことがある。この3党のいずれかが近い将来に政権を握ることはなさそうだが、これらの諸問題を解決しようにも、イタリアがそれに充てられる時間に限りがあることは明白だ。