巨大国家の首脳から、グローバル企業の経営幹部までが揃って頭を抱える異常事態に突入した。株も為替も不動産も生活も、すべてを巻き込んで猛威を振るう「新型恐慌」が地球全土を覆い始めた。
日銀資料が描く驚愕の未来図
日本銀行金融機構局は総勢300名を超す日銀マンたちが働く大所帯である。経営危機で資金繰りに行き詰まった金融機関への緊急融資を決断する重責を担う部署で、日本の金融システムの安定をつかさどる「最後の砦」とも言われる日銀の中枢の一つである。
そんな金融機構局が昨年10月に作成していたレポートがいま、市場関係者の間で話題騒然となっている。金融マーケットで現在起きていることを完全に予見しているというのだ。
その「問題作」の正式名称は、『金融システムレポート別冊シリーズ』という。金融機構局は日本の金融情勢をマクロ分析した結果を『金融システムレポート』として年に2回発表しているが、これはその別冊版として出されたものである。
特定の課題やテーマについて掘り下げた分析がなされる内容で、今回はマーケットで異常事態が起きた場合にどういうことが起き得るかのシミュレーション結果に大半の紙幅が割かれている。
確かにそれを読むと、背筋が寒くなるほどに現在のマーケット情勢を言い当てている。
たとえば、このレポートでは〈アジア経済の成長が減速するシナリオ〉を想定し、その際に世界や日本でどのようなことが起こるのかをシミュレーションしているのだが、書かれている内容は、中国経済の減速を契機に世界中が混乱相場に陥っている現状そのままである。
レポートを引けば、〈アジア経済の成長率の大幅な減速を想定する〉と、〈資源価格の下落を通じて資源国経済にも悪影響を及ぼす〉。また、〈海外投資家のリスク回避姿勢が高まり、わが国の株式市場や不動産市場にこれまで流入してきた投資資金が引き揚げられ、株価や不動産価格が下落する〉とある。
中国ショックと原油暴落の嵐が同時に吹き荒れる中、日本の金融市場に投資していた海外勢が一斉に逃げ出している様が見事に予測されている。
しかも、このレポートが恐ろしいのは、「その先」までをシミュレーションしていることにある。