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 NHK、テレビ朝日、TBSの看板報道番組の「顔」が、この春一斉に代わる。番組の一新、本人の意思など事情はそれぞれだが、政権への直言も目立った辛口キャスターがそろって退場していくことに、懸念の声が上がっている。

 3月末にリニューアルするTBS系の「NEWS23」は、メインキャスターの膳場貴子さん(40)が土曜夕方の「報道特集」に移り、新キャスターに星浩・朝日新聞特別編集委員(60)を起用し、放送時間も拡大する。岸井成格(しげただ)アンカー(71)も降板し、4月以降、同局専属のスペシャルコメンテーターになる。

 ジャーナリストの筑紫哲也さんのメインキャスター時代(89~07年)は2ケタ近い平均視聴率だったが、今年度は5・4%(以下、視聴率はいずれも関東地区、ビデオリサーチ調べ)。午後11時台は報道番組の激戦区で、「NEWS ZERO」(日本テレビ系)の2015年の月曜から木曜の平均視聴率は8・9%。昨年4月開始の「あしたのニュース&すぽると!」(フジテレビ系)は3・6%。「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京系)の昨年の年間平均視聴率は3・5%だ。TBSは陣容一新で報道番組の強化をはかる。

 テレビ朝日系の「報道ステーション」(月~金曜、午後9時54分)は、メインキャスターの古舘伊知郎さん(61)が契約終了に伴い3月末で降板する。

 昨年までの平均視聴率は13・2%と好調だったが、古舘さんは昨年末の会見で「(開始から)12年を一つの区切りとして辞めさせていただきたい」と話した。後任は同局の富川悠太アナウンサー(39)に決まった。久米宏さんがキャスターを務めた「ニュースステーション」から30年以上続く伝統の枠だが、関係者は「制作費を抑えたい考えもあり、当面は手堅く局アナでという判断になった。今後は状況を見極めながら進めていくことになるだろう」という。

 ある民放関係者は「高いギャラを払ってもいいと思わせるキャスターはなかなかいない。中途半端に外部の人を起用するぐらいならリスクの少ない局アナを使うのは当然。社内のモチベーションも上がる」と話す。

 一方、NHKは報道番組「クローズアップ現代」のキャスターを1993年から務めるフリーの国谷裕子(くにやひろこ)さんとの契約は更新せず、後任は局アナを軸に検討している。NHK関係者によると、現場は国谷さんの続投を強く求めたが、内容を一新するため局幹部が降板を決めたという。現在月~木曜の午後7時30分からの放送時間を、4月から午後10時に移す。NHK関係者は「国谷さんへの評価は高いが、番組の改編に合わせたキャスターの交代はつきもの」と話す。

 昨年9月、安保法案が参院特別委員会で可決されたことを、「私は強行採決だったと思います」とコメントした古舘さんなど、降板するのは辛口で知られたキャスターたち。三つの番組には最近、政権や自民党から報道内容に対する注文が相次いでいた。