2016年01月19日

南ア 尾勝谷塩沢 左俣・右俣(敗退)

2016.01.09(Sat)10(Sun)

成人の日の3連休、南アルプスの戸台の手前にある尾勝谷塩沢へアイスクライミングに出かけた。
初日は二俣までアプローチ、2日目に塩沢左俣、3日目に右俣〜下山の計画。
しかし、2日目の左俣のF2の登り出しで、メンバーが墜落して足を捻挫してしまい、そこで敗退。
暖冬で発達具合はいまいちなものだろうが、登れるくらいには氷結していた。
雪は全然無い。
メンバーは、H坂さん、NK井さん、私の3人。
初めて訪れた塩沢だが、今回登ることができなかったので、またいつか来たいものだ。



■01/09(Sat)  二俣へ

年末年始のカナダでのアイスクライミングツアーの疲れが抜け切れてない感じだが、予報では天気は良いらしい。
初日は二俣までのアプローチだけなので、前夜発とせず、当日早朝都内で待ち合わせて、私の車で中央道から伊那ICへ。
戸台に至る少し手前に小黒川に架かる橋がある。
戸台大橋のような高い橋ではなく、川面の少し上に架かっているので、車道からは見下ろす形になる。
橋はチェーンで塞がれて通行止めなので、車は車道沿いに停める。
関東ナンバーの車が2台停まっており、おそらく塩沢にアイスしに入っているパーティのものだろう。

P1090445尾勝谷出合の橋
↑尾勝谷出合の橋

それにしても、見渡す限り雪は全くなく、気温もそれほど寒くない。
降雪前の晩秋といった雰囲気で、今年の暖冬具合を改めて認識させられる。
これで本当に塩沢は氷っているのだろうかと心配になる。

10時頃に歩き出す。
橋を渡って林道を歩く。
歩き出して10分ほど行った林道左手の石灰岩の岩場にはボルトが打ってあり、クライミングルートがあるようだ。
P1090448林道沿いの岩場
↑林道脇の岩場

やがて巨大な堰堤が現れる。
これは右岸側に取って付きの階段があるので、そこから越えられる。
林道の途中には2ヶ所ほど渡渉ポイントがある。
ごく浅いのだが、靴を浸水させては困るので面倒でも靴を脱いで渡る。

P1090449巨大堰堤
↑巨大堰堤
P1090450
↑左側の階段をあがる

取水堰堤のある塩沢出合までは
1間くらい。
林道を離れ、ここから塩沢に入っていく。
やはり雪は全然ないのだが、標高を上げていくにつれて周囲の枝沢に氷ったところがでてくる。
これは目当ての左俣と右俣も氷ってくれていそうだ。
また、石灰岩の岩場も何ヶ所か通り過ぎる。
右岸にあった大きな岩壁は登られていなさそうだから、本チャンのルートが開拓できるかも。

P1090452塩沢出合の取水堰堤
↑取水堰堤
P1090453
↑塩沢
P1090459

二俣の少し手前から谷は開けてきて、先行パーティのテントが一張りあった。
そのパーティはちょうどテント場から歩き出して右俣に向かうようだ。
車を停めたところからここまで340分ほど。

我々もその辺りにテントを張ることにした。
あまり平坦な場所が見当たらないのだが、場所を見つけてテントを張る。
H坂さんが右俣へ水汲みに出かけている間にNK井さんと私で焚き火のための焚き木集めをする。
何しろ雪が全くないせいで、からからに乾いた木をたくさん拾うことができた。
乾いて軽いうえに簡単に折れる。

P1090461
↑テント設営
P1090462
↑焚き火
P1090466

落ち葉の上で焚き木をすると燃え広がる恐れがあったので、伏流になった沢床で焚き木を熾す。
焚き火ができるのではないかと考えて、着火剤も持ってきておいたのは正解だった。
乾燥しているので簡単に火を熾せた。
みるみる火が強くなる。

H坂さんが水汲みから戻ってきた。
右俣を少し入ったところで水を汲めたが、チョロチョロ流れている程度で、あまりきれいではないから必ず沸かして使おうとのこと。
暗くなるまでの数時間、焚き火に当たりながらお酒を飲んで過ごす。

暗くなってからテントに入り、夕食を作って食べ、まだ早いけれど寝ることにする。


■01/10(Sun)  左俣(敗退)〜下山

中日のこの日は左俣をF10まで登り同ルート下降する予定だ。
暗いうちに起き出して、明るくなった7時頃にテント場を出発。
二俣に水汲み用の水筒をデポしておく。
左俣に入りしばらく進んで行くと、F112m滝が現れる。
ここでアイゼンを装着することにする。

P1100471左俣F1
↑塩沢左俣F1

アイゼン損傷

ここでトラブル発生。
なんと私の左足のアイゼンの前爪が無いことに気づいた。
私のアイゼンは、カンプのブレードランナーだ。
よく見ると、前爪そのものが折れたのでもなく、前爪を止めているボルトが緩んで外れたのでもなく、前爪を止めている根元のプレート部分からポッキリ折れていた。

今ここに至って気づいたのは私の不注意だが、今回折れたものではない。
前回最後に使用したのは年末年始に行ったカナダのバンフだ。
クライミング最終日はレイクルイーズのルイーズフォールを登ったのだが、登攀前に折れていれば、およそ登れないから気づかないワケがない。
とすると、登攀途中に折れてしまた可能性が高い。
もちろん折れたことに気づいてはいないのだが、心当たりがあるとすれば、ルイーズフォール最終3ピッチ目を登り終える頃に、不意に足元が外れて一瞬足ブラ状態になったことがある。
もしかしたら、あの時に左足の前爪が折れてしまったのかもしれない。

P1100472前爪が折れていた…
↑左の前爪が折れていた

ご存知の人もいると思うが、このアイゼンはリコールされていて、メーカーにより交換が行われ始めている製品だ。
リコールの内容は前爪が折れる恐れがあるというもの。
海外でそういう事例があったそうだ。
私も購入した店舗からリコールの連絡は受けていたのだが、まだ交換せずに使用していた。
そして、今回まさしくリコールの原因となった前爪の損傷に見舞われたワケだ。

後日談となるが、購入した店舗に連絡すると、私の交換分は用意してあるとのことで、壊れたアイゼンを持って店を訪ねた。
このアイゼンの損傷は日本国内では初事例とのことだが、実際に壊れた場所はカナダのはずだ。

新しいアイゼンを見ると、折れた箇所は見たところ補強されているようには見えない。
ペツルのリンクスなどのように長いボルトを左右から止めているのではなく、プレートの金属を下向きに曲げて1点止めで前爪を固定してあるだけだ。
軽量なのだろうが、この曲げたプレートへの1点止めが、曲げモーメントなど損傷の原因となっているのではないだろうか。
何かしら改良されてはいるのだろうが、同じモデルをまた使うのはちょっと気になる。
まあ、新しくなって擦り減った爪が元通りになったのは良かったけれど。

話しが脱線してしまったので元に戻す。
片足の前爪がないアイゼンで登るのはものすごくイヤだが、とりあえず目の前のF1は登ることにする。
ここはロープを出すほどではないので、各自登るが、前爪が1つ無いだけで緊張感が増す。

P1100477左俣F1を登る仲井くん
↑F1を登るNK井さんとH坂さん

再び進んでいくとF245m滝が現れる。
それなりに氷結していて、先行パーティが左側から登っているところだった。
我々もここでロープを出す。
カナダで体験したグレードからすると、見たところ34級といったところだろうか。
私はアイゼンが壊れているし、2人は登る気満々といった感じなので、彼らにリードを任せる。
ジャンケンでNK井さんがリードすることになった。

P1100478左俣F2
↑F2。先行パーティがいる

墜落事故

H坂さんのビレイでNK井さんが登り始める。
2m強登ったところで、不意にNK井さんが落ちてしまった。
まだ1本目のスクリューを取る前だったので、取り付きの氷の上に両足から着地する感じでグラウンドフォールし、そのまま背中から倒れこんだ。
一瞬の出来事だった。
少し落ち着くのを待って様子を伺うと、右足首を痛めたらしい。

P1100481
↑F2を登り始めるNK井さん

NK
井さんのロープやギアを解く。
意識はいたってしっかりしているのだが、やはり足が痛むようだ。
靴を脱ぐと少し腫れている。
捻挫をしたようだ。
骨までいっているかは分からない。

テーピングテープで足首を固定する。
そばにいた先行パーティの人が痛み止めの薬をくれた。感謝。
登攀はもちろん中止。
ケガをしたNK井さんとともにどのように下山するかを考えるが、しばらく休んだあと、足を引きずりながらも何とか歩けそうだとの判断で、3人で自力下山することにした。

H坂さんと私で荷物を背負い、ツラそうなNK井さんをサポートしながらテントを張ってある二俣を目指す。
いつもなら何でもないところでも、ケガをしたNK井さんは大変そうだ。

なんとかテント場に戻り、テントを撤収。
NK井さんの荷物をH坂さんと私に振り分ける。
塩沢出合までの長い下りもNK井さんは苦労して歩いて行く。
明瞭な踏み跡があるワケではなく、岩や倒木を越えるのがツラそうだ。

時間をかけて、塩沢出合に帰着。
ここからは林道歩きだ。
巨大な堰堤を越える際は、下りの階段の踏み面が凍結しているため、アイゼンを装着して上からロープでNK井さんを確保しながらクライムダウンしてもらう。
残りの2人も荷物が重いのでアイゼンを付けて降りる。
すっかり暗くなった頃に車に戻る。
患部を冷やすためにコンビニで氷を買う。
中央道を走り、都内で解散。

後日、病院で診察を受けたNK井さんのケガの程度については具体的なことには触れないが、早くしっかり治ってほしいものだ。
3連休の最終日が余ったので、翌日はH坂さんとフリークライミングに出かけることにした。



climbing2 at 19:00│Comments(0)

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