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 ●帰還困難・双葉の中心部

 原発事故で町のほとんどが帰還困難区域とされた双葉町の中心部で今月、5年近く手つかずだった道路上の倒壊建物の撤去工事が始まった。町内では今後、一部でまとまった範囲の除染も始まる。政府は帰還困難区域の除染や復興について明確な方針を示してこなかったが、その議論は今年、ようやく本格化しそうだ。

 27日、双葉町の中心部。重機が「バリバリッ」と乾いた音を立て、道路にはみ出した建物がれきをつかんだ。土ぼこりが舞う。建物は地震で原形をとどめないほど壊れ、がれきのすき間の土から雑草が生えている。手づかみできる大きさの木片などを作業員が保管用の黒い袋に入れていく。

 町道「新山・鴻草線」を除染する準備の作業だ。14カ所で除染の邪魔になる建物のがれきや倒れた塀を撤去する。震災前は新年恒例の伝統行事「ダルマ市」が催されていた道路だが、通り沿いの建物はあちこちで朽ちている。

 撤去対象の別の建物も屋根が路上に滑り落ち、大量の瓦が散乱している。この建物を管理していた元かっぽう店主の岩川孝子さん(60)はこの日、避難先の千葉県から訪れた。撤去を請け負う建設会社の担当者から危険物や貴重品の有無を尋ねられた。岩川さんは「見るだけで悲しくなる。すっぱりと片付けてほしい」。30年以上営んだ隣のかっぽう店の中には、カウンターの奥に多くの常連客のボトルが残されている。

 帰還困難区域は手つかずの状態が続いたが、少しずつ復旧作業が進み始めた。今回の倒壊建物の撤去に加え、限られた範囲ではあるが、JR双葉駅西側の除染も始まることになった。復興拠点の開発のため、政府に除染を求め続けてきた伊沢史朗町長は「ハードルがようやく乗り越えられた。少しずつ除染される地域を広げて住民に前向きな状況を発信したい」と語る。

 とはいえ、政府は帰還困難区域をどう扱うか、明確な方針を決めていないままだ。2014年8月の復興庁による復興構想では「復興拠点は同区域でも優先的に除染する」と提示。昨年6月の政府の指針では「放射線量の見通しや帰還意向、復興の絵姿を踏まえて地元と検討を深める」とした。しかし、いったいどこまで除染するか、しないのかという問題は未解決だ。

 避難が長引くなか、帰還を諦めて避難先に定着し新たな生活を始めようとする人も増えている。双葉町民への14年秋の意向調査では「戻りたい」と答えた回答者は1割ほど。逆に、「戻らないと決めている」が5割を超えた。

 環境省の井上信治副大臣は今月の記者会見で「そもそも帰還困難区域をどうするのか、全体を決めないと除染も決められない。予算もからむので今年の夏や秋までに方針を固めていかないと」と述べた。

 伊沢町長は「避難先で新たな生活を送っていても、町に戻りたい人もおり、我々は町を復興しなくてはならない。政府は継続的に町と協議をして柔軟な対応をしてほしい」と話す。