国連が今月に新設する核軍縮の作業部会に、日本が加わる。日本政府が方針を固めた。

 核兵器の危険性と非人道性の認識が近年、非核保有国の間で深まっている。国際法によって核兵器を禁じようという流れが加速している。

 そうした新潮流を受けて設けられる部会だ。唯一の戦争被爆国である日本が参加するのは、当然すぎるほど当然のことだ。問われるのは、その場でどんな役割を果たすかである。

 「核兵器のない世界をめざすために国際社会をリードする」という岸田外相の言葉に恥じない振るまいを期待したい。

 東西冷戦が終わり四半世紀を超えたが、米ロ英仏中の5核大国は依然多くの核兵器を持つ。

 核不拡散条約(NPT)はこの5カ国に限って核保有を認める代わり、核軍縮を義務づけている。だが近年、削減は滞り、攻撃精度を上げるなどの高度化が進んでいる。

 さらに原子力技術の普及で、北朝鮮のようにNPTに反して核兵器を開発しようとする国もあとを絶たない。

 核ミサイルの誤発射やテロリストによる入手などの悪夢を恐れて核軍縮・廃絶を求める非核国と、核兵器の力を手放したくない核保有国との溝は、かつてないほど広がっている。

 全会一致方式のNPT再検討会議やジュネーブ軍縮会議だけでは、核保有国の抵抗で議論が進まない状況だ。

 そこで、まず非人道的・非倫理的な兵器として核兵器を条約などで禁止し、その国際規範を土台に廃絶をめざそうという動きが急速に広がったのだ。

 そのための新部会である。

 昨秋の国連総会では、5核大国など12カ国が設置決議に反対し、米国の「核の傘」に入る日本や北大西洋条約機構(NATO)加盟国など34カ国が棄権した。それでも国連加盟国の約3分の2にあたる138カ国の圧倒的賛成多数で可決された。

 日本政府は先週の非公式運営会議では参加表明を見送るとともに全会一致方式を主張した。

 核保有国を含め、広範な賛同を得る努力は必要だ。しかし、硬直的に全会一致にこだわれば、核軍縮をめぐる今の膠着(こうちゃく)状況は打ち破れないだろう。

 日本は核兵器禁止をめぐり建設的な貢献をすべきだ。例えば何をどんな順に禁止すれば核保有国を議論に引き込めるかや、「核の傘」からの安全な離脱策などを具体的に研究したい。

 米国など核保有国にも、核廃絶を求める市民は多い。内外で意見交換を深めるべきである。