現場の問題は現場が自らITツールを使って解決する――。企業が意志決定を早めていこうとする中、そんなクラウド活用の動きが出てきている。ともすれば、情報システム部門が関わる場面がないケースも考えられるが、実際のところはどうなのか。業務アプリ開発基盤「kintone」のプロダクトマネジャーを務める伊佐政隆氏に聞いた。
――現場の問題解決は現場主導で――という動きが出てきています。実際のところはどうなのでしょうか?
伊佐氏: まさにそうした状況を象徴するようなデータがあります。kintoneを契約する窓口となる部門を調べてみたところ、情報システム部門はたった2割で、8割はそれ以外の事業部門。いわゆる業務現場ですね。
業務現場の方々に聞くと、やはり今は変化が多い時代ですから、現場にはこれまでにはなかったような問題が次々と出てきているというんです。その対応策を情報システム部門に相談しても、時間がかかったり、話が壮大になりすぎたりしてなかなか進まず、「それなら自分たちで解決策を探そう」という話になる。
今は、問題解決につながるアプリ開発基盤がいろいろとありますから、ある程度のことは自分たちで手を動かせば解決できる。それが冒頭の結果につながっているように思います。
――業務部門主体で問題解決の方法を探すケースが増えると、情報システム部門が関わりにくくなりそうです。
伊佐氏: しかし、情シスの新たな関わり方も出てきているんです。例えば事業部門が主体となって動く場合でも、システム部門が必ず打ち合わせに同席して、説明の橋渡しをするような形です。問題解決にkintoneが向いているかどうか、開発にかけるリソースを社内でまかなえるのか、外注を探す必要があるか、といったことを一緒に考えて決めていく――個人的には、これからのシステム部門の立ち位置を示唆しているように思いますね。
――情シス主体で導入が進むのはどんなケースなのでしょうか?
伊佐氏: 印象に残っているのは、6000人規模の営業マンが使うSFAツールをkintoneベースで開発したある通信会社の例です。ここは一度、SFAの導入に失敗した過去があります。苦労して作ったシステムを、現場が誰も使ってくれなかったんですね。原因ははっきりしていて、プロジェクトが「システムを作ること自体が目的」になってしまっていたからなんです。
現場に使ってもらえるシステムを開発するには、どういうプロセスで進めたらいいのか――ということを検討する中で出てきたのが、スパイラルアップ方式。開発途中で現場のニーズが変わっても、それに柔軟に対応しながら完成を目指すというスタイルです。それができるシステムとしてkintoneにたどり着いたと聞きます。
日本では、95%以上の開発プロジェクトがウォータフォール型といわれているのですが、最初に決めた要件定義をゴールに置くと、どうしても現場のニーズとのギャップが出てしまうのが今の時代だと思うんです。現場の意見を最初の要件定義の段階で吸い上げたとしても、開発途中で状況が変わることがしばしばあります。
それにいちいち対応していたら、どんどんリリースが伸びてしまう。しっかり設計し、工期通りに仕上げるための管理をしやすいのがウォータフォール型ですが、それだと柔軟性が失われてしまうんです。
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