No UIという考え方とUIデザイナーのこれから

[eureka designer blog – Vol. 04]

昨年末あたりに以下の書籍やメディア記事により注目された「No UI」という考え方。
テクノロジーの進化などを活用し、スクリーン上のUI設計に頼らずにユーザの目的を達成させる、といったような考え方です。例としては、キーボードを使わなくて済むように考えられた音声入力機能や自分で検索する手間を省くレコメンド機能などが挙げられます。
 
参考記事)No UIはデザインを進化させる新しい概念 by. Takumi Kai

参考書籍)さよなら、インタフェース -脱「画面」の思考法
 
 
今回は、その「No UI」という考え方の背景を深堀し、そこに潜むデザイナーの課題にフォーカスを当ててみました。
 
[目次]

  1. そもそもUIってなんだっけ?
  2. No UIってこういうことじゃない?
  3. まとめ:UIデザイナーのこれから

 
 
 


 
 
 

1. そもそもUIってなんだっけ?

UIはそもそも下記の図で表されるような情報階層における一階層です。

img_1

 
つまりUIがアウトプットされるに至るには、根本に「ユーザニーズ」があり、それを解決する「機能」が考えられ、それをどう構築するかという「情報整理」を行い、そしてそれをどうユーザと接触させるかということでの「UI(インターフェース)」。というロジックがあります。
 
いわゆるカッコイイUIでも、その前の段階の「情報整理」「機能」「ユーザニーズ」の分析が適切でなければ、そのUIは真にユーザニーズを解決するインターフェースとはなっていないでしょう。
それはただの「カッコイイデザイン」止まりになってしまうのだと思います。
 
つまりUIをデザインするということは、「ユーザ・ステークホルダの抱える問題を解決するための機能を、正しい情報整理に基づきユーザに届けること」と言い換えられるかと思います。

 
 
 

2. No UIってこういうことじゃない?

引き続いて、「No UIの考え方」について。
前章で挙げた階層図でいうUIの階層のみを見るのではなく、それ以前となる根本の要素(情報整理・機能・ユーザニーズ)から見て、デザインのアウトプットを行うことが「No UI」を考える上で最も重要なのではないかと私は考えています。
 
 
例えばあなたがメディアサイトをデザインしているとして、
「UIの変更でもっと記事を読まれるようにしてよ(タップされるように)」と言われた場合まず何を考えますか?

img_2

上の答えでありそうなのは、「記事タイトルを目立たせて押しやすくする」「記事が魅力的に見えるように画像を大きくする」などなどあるかなと思います。
 
 
ですが、こちらも先ほどの階層に当てはめてみると、

  1. UI  :記事の見せ方が魅力的ではないかも?
         → 文字サイズ / 画像サイズ / 記事の並べ方を再考する
  2. IA  :表示する記事情報の順番 / 掲載している記事の情報は十分か?
         → 記事の表示優先順位を付ける / 記事詳細を少し見せるようにする
  3. 機能 :暇なタイミングで記事を送るのがベストじゃない?
         → メルマガ、プッシュ通知
  4. ニーズ:そもそも記事の内容がニーズに合っていないんじゃない?
         → 内容の再検討

というように問題の仮説を分解して考えることができます。
 
 
つまり、もしかしたらUIにはさほど問題はなく、それ以下の階層にこそ問題があるかもしれないわけで、そこに気付けるかどうかが重要だということです。

 
 
 
 

また、先日話題になった「LINE NEWS」の記事からも同様の流れが感じられると考えてまして、
 
参考記事)ニュースアカウントを開放したLINE、狙うはポータルとソーシャルで断片・量産化したコンテンツの再編(TechCrunch)
 
LINE NEWSはアプリ自体のユーザ数は「300万人」であるのに対し、LINE本体のプラットフォームを活用した、公式アカウント配信でのLINE NEWS DIGESTの登録者数は「1,000万人」。さらに同プラットフォームでのLINE NEWS マガジンに至っては登録者数「1,500万人」を突破しているのですが、

img_3

おそらく、アプリという限られた場所の中でさらに限られたUIという要素だけを見ていては、LINE NEWSのこの結果は成し得なかったのではないでしょうか。
 
 
300万というアプリユーザ数からさらに成長させるために、

  1. UI  :記事の見せ方が魅力的ではないかも?
         → ダイジェスト:引きのある画像と見出し / マガジン:画像メインで雑誌感
  2. IA  :表示する記事情報の順番 / 掲載している記事の情報は十分か?
         → ダイジェスト・マガジンという括りで絞り込み
  3. 機能 :いろんな記事を配信するのがベストなのだろうか?
         → ダイジェストで抜粋した記事だけなら読む / マガジンで好きなジャンルだけなら読む
  4. ニーズ:そもそも、わざわざLINE NEWSに来てニュースを読みたいと思っているのか?
         → LINEを起動したついでなら開く / LINEの通知であれば開く

というような課題洗い出し・改善プロセスだったのではと想像しています。
 
 
上記プロセスの推測が正しいかどうかは別として、LINE NEWSの例のようにUI以前の部分も含めて課題を解決すること、これこそがNo UIという考え方であり、ここにUIデザイナーの伸び代があると私は考えています。
 
 
 

3. まとめ:UIデザイナーのこれから

スマートフォンが登場し、ユーザが画面を触るということからUIというものが注目をされ、斬新なUI・使い勝手の良いUIというものにスポットが当たることもしばしばありましたが、最近ではそれも飽和状態を迎えたように感じます。また今後、人工知能をはじめとするテクノロジーがより発展し、新しい技術を活かしたサービスづくりが求められます。
今回挙げた例のように、デザイナーとして、自分の携わるサービスをしっかり成長させていく立場になっていくためには、「UI」という要素もサービス成長の手段の一つとして捉えるよう、マクロ目線を持ってサービス成長に関わっていかなければならないと考えています。

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