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2016-01-29

「境界の彼方」ストップモーション風アクションと機動力

2013年に放送されたアニメ境界の彼方』には独創的なアクションがある。

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多彩なバトルシーンが特徴の本作にあって、異彩を放つストップモーション風の剣捌き。第2話で披露されたこのアクション、タメツメの効いたタイミングが爽快で影付けもスタイリッシュ。スピード感溢れる殺陣に仕上がっている。驚いたことに、原画マンのアドリブだというのだから衝撃的*1。コンテでは暗闇の中で閃光が走る一瞬の斬撃を狙った感じだったらしいが、担当したアニメーターの奔放な想像力とそれを形にする手腕によって見事に昇華されている。原画の枠を越え、演出的な回路で描かれた物のようにも思える濃密な仕事だ。

これを受けてだろう、第4話のアクションシーンにも同様の発想でストップモーションが使われていることに注目。

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当初、2話と4話の演出を担当した武本康弘がこのアクションを気に入り、コンテに描いていたのだろうと思っていた。しかしどうやら石立太一監督のコンテチェック時に付け加えられた可能性が高いようだ*2。4話は監督チェック前の時点で約490カットあり、追加されたアクションとCパートによって500の大台を超え、大変な話数になったという。

コンテから膨らませたアニメーターも凄いが、監督の機動力にはまこと恐れ入る。長期シリーズならともかく、1クールアニメのわずか数話の間にこんなアクション演出を確立させる大胆不敵なコンテワーク。もちろん1,2話が先行して制作されていたということも考えられるが、いずれにせよ、鋭敏な嗅覚を伺わせるには充分。

さらに言うなら、石立太一のアクションはテンポだ。いかにテンポ良く、リズム良く描くかが命。それを強く感じ取れるのは最終話となった第12話。

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三度目は正真正銘の石立アクション。一定のタイミングで統一されていた以前とは異なり、途中でテンポアップする可変式のタイミング。演出として一段階進化させているわけだ。一原画マンのアドリブがシリーズの中でこれだけ進化する。そう思ってみると違った印象を受けるかもしれない。

また、件のアニメーターは明かされていないが、2話でクレジットされている原画マンは以下の通り。

高橋博行、唐田洋、岩崎菜美、角田有希、町田奈緒子、中西直樹、多田文雄

「後輩を潰しに来る」(cf.アニメスタイル007)三好一郎を思い出さないでもない。とはいえ確証が取れるまで保留の案件になりそうだ。

ちなみに、第6話のBパート(小川太一コンテ)にも一部ストップモーションが見られるのだけど、監督のチェックで加えられたものかどうかの言及はなし。様々な技法を試す小川太一演出らしくもあり、チェックで追加されたと言われても納得するところであり。

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ポニーキャニオン 2016-02-17

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*1:DVD/BD第1巻スタッフコメンタリー内の発言から

*2:DVD/BD第2巻スタッフコメンタリーによる。聞き取りづらい単語もあるため、可能性とした

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