『そうだ難民しよう!』を支える世界観
以上から見えてくる、はすみの世界観はきわめてシンプルである。
ブラックプロパガンダを行う「サヨク達」=「敵」が、圧倒的な影響力で「味方」を攻撃している。それゆえ、「味方」はホワイトプロパガンダでこれに反撃しなければならない。いわば「正義」と「悪」の対立図式である。
はすみは、「敵」と「味方」が誰なのかはっきりと定義していない。
ただ、そのイラストやSNS上の書き込みなどを見る限り、韓国、中国、在日コリアン、朝日新聞、日本共産党、SEALDs、シー・シェパード、レイシストしばき隊、福島みずほ、河野洋平、有田芳生などが「敵」であり、「日本の愛国者」、テキサス親父、安倍政権などが「味方」であるらしい。今後、メディアの報道などにもとづき、ここに新しい「敵」や「味方」が付け加わっていくのだろう。
こうした<はすみ的世界観>を稚拙と笑うのは簡単だ。以上にあげられた組織や個人の間にも意見の対立があり、ひとつの組織の内部でも様々な対立があるからである。
だが、見逃してはならないのは、この世界観こそが、弱者に対する暴力的な表現をも正当化しているということだ。「サヨク達」対「味方」の図式のもとでは、弱者はしばしば弱者ではなくなる。
なぜなら、その後ろには「サヨク達」という巨大な「敵」が控えているとされるからだ。むしろ「本当の弱者」は、「サヨク達」に攻撃されている「味方」である。
したがって、「偽の弱者」に対する暴力的な表現は「巨悪に対する果敢な反撃」として正当化される。はすみがシリア難民のイラストに関して、「偽装難民」や「在日特権」に言及していたことを思い出されたい。
「サヨク達」(敵)は加害者であり、強者である。一方、「愛国者」(味方)は被害者であり、弱者である。この世界観をいちど受け入れると、ものごとの見え方が180度変化する。どう考えても「ブラック」以外のなにものでもないはすみのイラストが、そのときを境に「ホワイト」になってしまうのだ。そして、「味方」に対する批判は、すべて「サヨク達」の攻撃として処理されてしまう。
おそらくはすみは、「正義」のためにあのようなイラストを描いているつもりでいる。彼女にとって「ホワイトプロパガンダ漫画家」は、「サヨク達」のブラックプロパガンダに立ち向かう「白馬の騎士」のような輝かしい肩書きなのではないだろうか。
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