ドイツ特派員生活が長かった三好氏が、ドイツの報道に不満を感じていることも明らかで、だからこそ、それが第1章に取り上げられているのだろうが、同書によれば、ドイツメディアを牛耳っている勢力は、かなり左翼のようだ。
「世論調査機関アレンスバッハが2009年に行った、ドイツの政治記者の政党支持に関する調査によると、保守系のCDU・CSUの支持が14%に対し、緑の党が42%」、またヴェルト紙(2011年4月11日)に掲載されたマインツ大学情報学研究所教授(コミュニケーション学)マティアス・ケプリンガー氏の調査結果では、「今日、ドイツのジャーナリストの35%が緑の党、25%が社民党、14%がCDU・CSUか、リベラル系のFDP支持」とのこと。
メディアの間でここまで緑の党が強ければ、テーマによっては報道のバランスが著しく崩れるはずだと、これを読んで初めて納得した。
ここに書かれていることは、日本の多くの読者にとってはドイツのイメージが変わる内容だと想像するが、私にとっては、日頃から怪訝に思っていた多くの謎がようやく解けた啓蒙の書だった。ドイツの現状について、こういう読みの深い本が出てくることは、大変嬉しい。
難民問題にしても、同書を紐解くと、さもありなんと思えてくる。そういう意味で、「難民問題を予見した本」といえるかもしれない。
著者: 川口マーン惠美
『ヨーロッパから民主主義が消える』
(PHP新書、税込み864円)
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