とりわけ、イギリス人の気に障ったのは、イギリスがIS撲滅のために軍事行動に出ようというのに、ドイツはそれを非難がましく眺めているだけでなく、なんとその横で、シリアやイラクの可哀想な人々に向かって「うちへいらっしゃい」と呼びかけ、自分たちのほうが人道的だと誇っているように映ったことだろう。
そうするうちに2015年10月、ドイツでは、1月からの難民申請者がとうとう100万人を超えた。困った政府はその対策として、EUに入ってしまった難民をEU全体に振り分けようとしたが、多くの国は難色を示した。皆、難民問題を大きくしたのはドイツだと思っていたからだ。
それに腹を立てたドイツが、非協力的な国には、EUの補助金の削減など制裁措置を考えるべきだと言い出したとき、ドイツは完璧に鼻つまみものとなった。
1月4日を境にドイツの世論が急変した
イギリスはドイツと距離を置くため、すでに独自の難民救済策に着手し始めている。ポーランド、ハンガリー、スロベニアといった東欧諸国はもちろん、今まで寛大に難民を受け入れてきたオーストリアやスカンジナビア諸国までが、現在、「難民お断り」の方向に舵を切っている。
メルケル首相は、今も一貫して「庇護を求めている人はすべて受け入れる」という方針を貫いているが、もちろん、このままの状態を続けていくわけにもいかない。それならばと、入って来る人数自体を減らすことに知恵を絞り始めた。
解決策の一つは、EUの国境防衛の強化。具体的にいうと、トルコとの駆け引きだ。
トルコは、シリア、イラク、アフガニスタンなどからの難民のハブ地になっており、すでにその数は250万人にのぼる。エーゲ海を渡ってEUを目指す難民のほとんどが、ここから出る。そこで、EUが30億ユーロをトルコに供与し、その代わり、トルコは自国にいる難民がEUに出ないように見張るという計画。現在、その駆け引きにメルケル首相が尽力している。
ただ、私が解せないのは、ついこの間まで「難民ようこそ」熱を撒き散らしていた人たちが、今、当たり前のように、EU国境の防衛を唱えていることだ。EUに入ってこなければ難民問題はクリアできる? トルコに溜まってしまった難民はトルコの問題? ドイツ人は何か変だとは感じないのだろうか。このあいだまでの「人道」はどこへいってしまったのか?
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