文部科学省は29日、大学入試改革の具体策を話し合う「高大接続システム改革会議」(座長・安西祐一郎日本学術振興会理事長)を開き、大学入試センター試験に代えて2020年度から導入予定の新テストについて、当面は複数回実施を見送る案を示した。新たに記述式問題を採用することで、知識量を問うマークシート式のみによる「一発勝負」の弊害は一定程度解消されるとした。
複数回実施は「脱知識偏重」を掲げて導入する記述式問題と並ぶ、大学入試改革の大きな柱だ。同省は当面、記述式を導入する枠組みの検討を優先。複数回実施はパソコンを使い解答するCBT方式の導入や、毎回同じレベルの問題を出す手法などと合わせて引き続き検討するとしている。
有識者でつくる同会議のこれまでの議論では、20年度導入予定の「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」について、現行センター試験と同じマーク式に加え国語、数学の2教科で先行して記述式を実施。採点期間を確保するため記述式は別日程で行う方針が示されていた。
29日の会議で、文科省は記述式問題などの導入により「複数回実施の狙いが相当程度実現すると考えられる」と説明。担当者は「一発勝負型の評価ではなく、生徒本来の能力を多面的に評価できるという意味で(記述式の導入は)理念の実現に沿う」と話した。
記述式の採点期間については「数式などを記す数学の問題なら1日程度」「80字で解答に6つの条件を設ける国語の問題なら4日程度」といった試算を示した。これらを組み合わせた4パターンの総採点期間を10~30日程度とし、採点前後の研修や成績提供の準備のため別に10~30日程度が必要とした。
マーク式を現行試験と同じ1月中旬に行う場合、記述式は前年12月以前に実施する日程が想定される。記述式とマーク式は一体で受験するとされており、これを複数回行う場合、12月より大幅に早い時期に試験日を設ける必要がある。3年生の授業や部活動のほか、試験会場を提供する大学にも大きな影響が出る。
同省は今後、同会議を月2回程度開いて新テストの具体像を詰め、3月末をメドに「最終まとめ」を発表する予定だ。
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