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高浜原発3号機 再稼働
1月29日 18時36分

高浜原発3号機 再稼働
福井県にある高浜原子力発電所3号機は、29日午後5時に原子炉を起動する操作が行われ、再稼働しました。新しい規制基準のもとで再稼働したのは、鹿児島県にある川内原発に次いで2か所目です。
高浜原発3号機と4号機は、去年2月、原発事故を受けて作られた新しい規制基準の審査に合格し、このうち3号機は、これまでに再稼働の前に必要な検査を終えました。
そして午後5時、中央制御室で運転員が核分裂反応を抑える制御棒を核燃料の間から引き抜くレバーを操作して原子炉を起動し、再稼働させました。
作業が順調に進めば、高浜原発3号機は、起動からおよそ13時間後の30日午前6時ごろ、核分裂反応が連続する「臨界」の状態になり、来月1日には発電と送電を始め、その後、徐々に原子炉の出力を高めて来月下旬に営業運転に入る計画です。
新しい規制基準のもとで再稼働したのは、去年2基が再稼働した川内原発に次いで2か所目で、合わせて3基になりました。また高浜原発3号機では使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を使うプルサーマルが行われる予定で、プルサーマルが行われるのは、新しい基準のもとでは初めてで、およそ3年11か月ぶりになります。
3号機が4年近く運転を停止していることから、関西電力は設備に異常がないか慎重に確認しながら今後の操作を行うとしています。

住民の反応

高浜原発3号機の再稼働について福井市内で聞きました。70代の男性は、「燃料を入れたままの原発を停止していても安全というわけではないし、再稼働してよかったと思う」と話していました。また、男子高校生は、「工業高校で電気について学んでいるが、発電コストがあまりかからないという意味で原発は必要だと思う。再稼働には賛成だ」と話していました。
一方で、60代の主婦は、「福島の事故で原発を完全に管理することはできないと証明されたはずなのに、再稼働するなんて許せない。子どもたちに負の遺産を残すわけにはいかない」と話していました。別の60代の主婦は、「いざ事故が起きたときにすべての住民が本当に避難できるのか疑問だ。再稼働には反対だが、再稼働するならば、県を越えた大規模な避難訓練などを実施してほしい」と話していました。
また、20代の女子大学生は、「安全対策に関して不安は残るが、再稼働しないと原発で働いている人たちが職を失うと考えると、賛成とも反対とも言えない」と話していました。

滋賀県知事「不安と疑問禁じえない」

高浜原発の再稼働について、一部の地域が原発から30キロ圏に入る滋賀県の三日月大造知事は、「今の世代、将来の世代に責任を持たなければならない1人として、大いなる不安と強い疑問を禁じえない。実効性のある多重防護体制の確立が道半ばの状況では、再稼働を容認できる環境にないという立場だが、それは受け入れられなかった」と述べました。
そのうえで、「今後は、国と電力会社に対し、より強く原発の管理と安全対策を求めていくと同時に、再稼働を容認できる環境にないという主張についても、あらゆる機会を通じて訴えていきたい」と述べました。

京都府知事「遺憾」

高浜原発の再稼働について、京都府の山田啓二知事は29日の記者会見で、「一部の地区が原発から5キロ圏に入る京都府が再稼働のプロセスの中から除かれているのは遺憾であり、おかしい。再稼働に当たり同意を求められる自治体の範囲を法的にきちんと位置づけるべきだ」と述べました。
そのうえで、「事態は進んでいるので、京都府民の安心・安全を守るために作った避難計画の実効性を上げていくため、不断の努力をしなければならない」と述べました。

関電社長 安全対策を継続

高浜原発の再稼働について関西電力の八木誠社長は記者会見で「再稼働の実現に向けて、ご理解やご支援をたまわり、立地地域の方々などに心から感謝を申し上げます。福島第一原子力発電所の事故以降、2度とあのような事故を起こさないという強い決意のもと、自主的に安全対策を積み上げてきた。大事なことは、安全への取り組みはこれでいいと思った時から崩れるので、安全に対するハード・ソフト面の取り組みを継続していく」と述べました。
そのうえで、「高浜原発の3号機と4号機の本格運転が実現できれば、来年度のできるだけ早い段階で、料金値下げを実現する」と述べ、ことし4月以降の早い時期に電気料金の値下げに踏み切る方針を改めて示しました。

抗議活動

高浜原発の再稼働を受けて、京都市下京区にある関西電力京都支社の前には、再稼働に反対する人たちが集まり、抗議活動を行いました。参加した人たちは、「ストップ再稼働」などと書かれたプラカードを持ち、「安全な暮らしを脅かす原発の再稼働は絶対認められない」などと声を上げました。
参加した京都市の井坂洋子さんは、「福島の事故も収束していないし、高浜原発が安全だという保証もなく、再稼働は絶対許せません。原発を動かさなくても電気は足りていると思うし、再生可能エネルギーを活用することが大切で、再稼働は今すぐやめてほしい」と話していました。

県境越えた避難が課題

関西電力・高浜原子力発電所は、福井県高浜町と京都府舞鶴市が隣り合い、原発から半径5キロの範囲で都道府県がまたがる全国唯一の原発です。事故に備え防災対策が求められる30キロ圏内には、福井県ではおおい町、小浜市、若狭町、京都府では、綾部市福知山市、南丹市、宮津市、京丹波町、それに伊根町、そして、滋賀県では高島市の3つの府と県、合わせて12の市と町が含まれ、およそ18万人が住んでいます。そのため、県境を越えて住民をどう安全に避難させるかが大きな課題となっています。
そこで内閣府と3つの府と県などで作る協議会は去年12月、広域的な住民の避難計画を取りまとめ、政府が了承しました。計画で、原発から5キロ以上離れている京都府舞鶴市の大浦半島を、事故が起きた際孤立するおそれがあるとして、原発から5キロ圏内と同様にすぐに避難する地域とすることや、原発周辺は、夏は海水浴客、冬は大雪で交通渋滞が起こるおそれがあるとして、観光客用のバスを配備したり、除雪態勢を強化したりすることなどが盛り込まれています。
しかし、県境をまたぐ住民の避難訓練は一度も行われておらず、避難計画の実効性の検証が大きな課題となっています。

避難経路の課題

高浜原発で事故が起きた場合、住民の多くが海沿いの国道27号線を敦賀市のある東方向に車で避難することになっています。しかし、高浜町が作成した津波のハザードマップでは、一部が浸水域に入っていて、津波と原発事故が同時に起きる「複合災害」の場合、27号線は通行できなくなります。
その場合、住民は反対の西方向に避難します。舞鶴若狭自動車道に入り、京都府をへて兵庫県に向かいますが、福井県の試算では、高浜町の最大8500人がこのルートを通った場合、舞鶴東インターチェンジを通過するのに6時間かかるという渋滞が予想されています。このインターチェンジからは、さらに舞鶴市の4万2000人が自動車道に入ってくる可能性があり、渋滞がより激しくなるおそれがあります。また、このインターチェンジが原発から10キロの距離にあり、被ばくのおそれがあるため、京都府は、原発から5キロ圏外の住民は原則、府が用意するバスで避難させることになりました。
しかし、そうした事前の計画が守られるのかや必要なバスの台数や運転手が、確実に手配ができるのかは不透明です。

要支援者対策も課題

原発で放射性物質が外部に漏れるような事故があった際、お年寄りや介護が必要な人などの「要支援者」をどのように安全に避難させるかは大きな課題です。避難計画では、介護が必要なお年寄りなど無理に避難するとかえって命の危険が高まる人たちは、放射線を遮ることのできる施設に一時的に退避することが定められました。高浜町では、病院や福祉施設のほか関西電力の原子力研修センターなど6か所が放射線から身を守ることができる施設になり、空気中の放射性物質を取り除く特殊な設備や放射性物質を洗い流すシャワーが備え付けられます。
なかには、使われなくなった小学校の校舎を放射線を遮ることができるよう改修した施設もあります。施設までの移動手段の整備も進めています。バスだけでなく、車いすに乗ったまま移動できる福祉車両を高浜町と周辺の自治体で22台、関西電力も15台配備しました。
これにより、高浜町内で利用が想定されているおよそ200人の要支援者を迅速に避難させることが可能になったとしています。

全国の原発の審査状況

再稼働の前提となる審査は、これまで建設中の大間原発を含めて全国の原発の半数以上に当たる16原発26基で申請されています。
審査はいち早く申請された「PWR」=加圧水型と呼ばれるタイプの原発が先行しています。申請のあったPWRの8原発16基のうち、これまでに川内原発1号機と2号機、高浜原発3号機と4号機、それに伊方原発3号機の3原発5基が審査に合格し、最も早く合格した川内原発の2基は去年8月から順次、再稼働しています。
高浜原発3号機と4号機は川内原発に次いで去年2月に審査に合格し、関西電力は、29日の3号機に続いて、4号機を来月下旬にも再稼働させる計画です。伊方原発は、去年7月に審査に合格し、現在、耐震性など設備の詳しい設計の確認が行われていますが、四国電力の佐伯勇人社長は27日の記者会見で、今年度中の再稼働は困難で、ことし4月以降になるという見通しを示しました。このほかのPWRでは、北海道の泊原発3号機、佐賀県の玄海原発3号機と4号機、福井県の大飯原発3号機と4号機の審査がおおむね終盤に入っています。
また原則40年に制限された運転期間の延長を目指す高浜原発1号機と2号機はことし7月、福井県にある美浜原発3号機はことし11月中に審査の期限を迎えるため、それまでに合格の判断が示されるかが注目されます。福井県にある敦賀原発2号機は、焦点となっている敷地内の断層の活動性から議論を始めていて、審査は始まったばかりです。
一方、事故を起こした福島第一原発と同じ「BWR=沸騰水型」と呼ばれるタイプの原発はこれまでに8原発10基が申請されています。新潟県にある東京電力の柏崎刈羽原発6号機と7号機の審査が比較的先行していますが、そのほかの原発の審査は、まだ中盤から序盤の段階です。

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