尖ったコンテンツをつくるには? 突破クリエイティブアワードの裏舞台
前回の イベントレポートに続き、今回は主催2社から、株式会社バーグハンバーグバーグ代表のシモダテツヤ氏と面白法人カヤックでこの企画を担当したみよしこういち氏を直撃。アワードの裏話や目的、頭一つ抜ける方法、パートナーの選び方など、縦横無尽にお話ししていただいた。
「尖る」のはあくまでも手段であり、同時にクリエイターの憧れ
――バーグさんも、カヤックさんも、創りだすコンテンツはいつも尖っている印象ですが、クライアントや周囲から「なんで尖ってなきゃいけないの」って言われることはありませんか。
シモダ:言われたことはないですが、「なんで尖ってなきゃいけないの」って言う人は、別に無理して尖んなくてもいいんじゃないでしょうか。ただ、そう言うのなら、中途半端に尖りたがらないほうがいいかなと思います。
(一同笑い)
――失礼しました(笑)。
シモダ:尖らなくていいことの方がもともと多いですから。例えば、林業の人に「なんで尖ってなきゃいけないの?」って言われたら、「それは必要ないです、木を切りましょう」「いつもどおり、安全な方法で木を切りましょう」ってなるけど。
みよし:いい広告とかいいプロダクトを作るためのひとつの方法として、尖るっていう方法があるだけなんで、別に斜め上じゃなく真っ直ぐ作っても、同じ効果はあると思うんですよね。
僕としては、『ONE PIECE』みたいに王道のマンガを描くのか、『DEATH NOTE』のような邪道というか尖った作品を描くのか、その人たちのスタイルだと思うので、どれでも別におもしろいからいいんじゃないかと思います。逆に、クライアントとか相手の課題がわかったときに、「別に尖ってない方がいいかもな」って思うこともあるし。
――「尖る」のはあくまで手段だ、と。
みよし:はい、例えばすごいちっちゃい会社が、知名度も予算もない中で、ふつうのことをやっても世の中には広がらないじゃないですか。
シモダ:尖るっていうのは、パイが少ないことをやるってことだと思うので、ハマれば勝ちやすいのかなと。目立てるし、カロリー少なく勝てるんですよ。だから手段かなって。あとは、短絡的かもしれませんが「尖ってるほうがカッコイイ」っていう、子どもみたいな理由はあるかもですね(笑)。
――クリエイターの憧れですよね。尖ったことをするとどんな効果あり、どういうシーンで「尖ってる」ことが課題解決になるのでしょうか?
シモダ:「尖ってる」イメージって、「若さ」を感じさせる手法の一つだと思うんですよ。「あそこ若いね」って思ってもらいたい企業さんって、いっぱいいると思います。特に昔から存在している大企業なんかは、何をするにも真面目にしてなきゃいけないだろうし。尖ることでやっぱりこう、「まだ死んでないな」っていう、変化しているイメージを世の中に見せていくことはできるんじゃないか、と。
みよし:今回受賞した中では、シャープさんのような大企業や、大分県や小林市のような自治体は、固定化されたイメージを変化させるためにも、尖ってる方がチャレンジに見えるのだと思います。「これからはこんな感じに変わろうとしているんだな」と見てもらえる転機になるので、そこは大きく打ち出すのではなく、先端を尖らせるのが効果的なのではないでしょうか。
シモダ:大きく打ち出そうとすると壮大なメッセージになりすぎて、「商品ぜんぜん関係ない!」と感じてしまうようなクリエイティブになりがちです。だからって普通過ぎても記憶に残らないし、尖ることで人に心に刺さりやすくするってのはありますよね。
みよし:今回のノミネート作品で言えば、バーガーキングがわかりやすいですね。
――『ビッグ□割』ですね。競合他社の商品も上手くPRに取り入れていて、驚きでした。
みよし:ハンバーガーの会社の中で、「あそこだけ何か違う」って思うじゃないですか。各社横並びの業界であれば、印象に強く残ることで、じゃあ次はあそこで食べてみるか、ってなるので。
シモダ:自分たちが尖ることで、相手を貶めることなく、自分たちが頭一つ抜け出すことができるのかもしれないですね。
たとえクビになっても「絶対に当たる」と言い切る覚悟
――そもそも、「突破」にはどんなメッセージを込めたのでしょうか。
シモダ:「突破」の概念については何度も話し合ったんですよ。「なんだろう? 突破って」みたいな。
みよし:上司も突破するし、クライアントも突破するし。
シモダ:みよしさんは、好きな女の子ができたときはどう突破するんですか?
みよし:それ一番突破できないやつですね。
シモダ:すいません。話戻りますが、僕が思う突破というのは、一つが「覚悟が決まってる」ってことですかね。たとえばクビになるとか。
――クビになる覚悟!
シモダ:覚悟って一種のテクニックだなと思っています。僕も昔あったのが、前職時代に企画を出したときに、同時にもう一人も出してきた。で、「どっちか採用」ってなるじゃないですか。そのとき僕は自分の企画の方が絶対に面白いと確信していたのですが、上司は「もう一人のことも立てなきゃダメだから」とか言って「うーん」って迷っている。
でも、僕は僕の企画は当たるって本気で思ってたんで、「じゃあ、もし僕の企画を選んで当たらなかったら、責任とって会社辞めますよ」「だから選んでください」って言ったんです。もう一人にその覚悟があれば別ですけど、こっちはその覚悟がありますし、当たりますからって。そしたら上司もこっちを選ぶじゃないですか。
――「そこまで言うなら」って思いますよね。
シモダ:これって一種のテクニックだと思います。あとはまあ、もしミスっても労働基準法っていうのがあるから、そんな簡単に会社って辞めさせられないじゃないですか(笑)。
みよし:覚悟しているようでしてない(笑)。
シモダ:そうそう(笑)。でも、これは責任の取り方というか。「クレームが来るかもしれない」ってビビってしまうのを乗り越えるのも覚悟だし、お客さんに対して「これは当たります」って言っていくのも覚悟だと思います。
みよし:結局、出してみないと、当たるか外れるかなんてわかんないんですよね。
シモダ:はい。特に新しいものには前例がないから。初めから信用されるモノ、大丈夫そうなモノっていうのはおそらくあるんですけど、そうやって安心できるモノって、似たようなモノがすでに「突破」していて、その実績をもとに安心しちゃってるわけです。
だから、安心できたモノよりは、「これはどうなるんだろう」って不安になっちゃうようなモノで、それを「突破」するって覚悟を決めて乗り越えるのは、「突破」のひとつの基準というか、大事なことだと思っています。
――受賞作ではどの作品にその「覚悟」を感じましたか?
シモダ:特に『シンフロ』なんかはいい例でしたよね。風呂でやっちゃダメなマナーだけど、でも「おもしろいじゃん」って。子供が真似したらどうするんだってクレームが入ったとして、僕は「お前が『真似するな』って自分の子どもに言え」って思ってしまうんです。クレームって、乱暴な言い方をすると、だいたい誰かのせいにしたい無責任な内容も多いじゃないですか。「なんでそんなことまでこっちのせいになるの?」って思うし、そこはもう「子供じゃないんだから自己責任でお願いします」って突っぱねてもいいんじゃないかと思ってます。
あとは、アイデアが複数あったとしますよね。例えば、シャープさんだったら「プの○を売ります」か、それとも「自社ビル売却しました。でも、がんばっていきます」ってツイートを思いつくわけじゃないですか。そのときに「Aの方が絶対おもしろいと思うけど、社長にあとで怒られるかもしれないからBの方を選んだ」だと、全然突破していない。
突破には2つあると思っているんです。1つは今までないモノ。もう1つは、タブーなモノについて「やめておこう」っていう意見に、「それよりこっちの方がいいじゃないですか」と提案して、それを実現させること。僕の中では、この2つが本当の意味での突破なのかな、と。
――言われてみれば、自分が責任を負わない前提の意見が世の中にすごく増えているなと思います。
シモダ:そういうことへのカウンターとして、この賞が盾みたいになってほしいですよね。
突破クリエイティブを作る上で知っておくべき「炎上」と「反応」の違い
――炎上リスクを怖がるあまり、企業はより控えめなことをする傾向にあると思うのですが、尖ることで問題提起になる場合もありそうですね。
みよし:というよりも、「炎上」と「反応」の違いがわかっていないことがよくある気がします。
シモダ:そうそう。全然違うことなのに、その感覚がはっきりしてない人がジャッジする場合も多いんですよね。そういう場合は、データとか実績を持ちだして、炎上じゃない反応っていうのを上司やクライアントに提示する必要があると思います。案外、「これは炎上じゃなくてただの反応ですよ」って言っただけで突破できる場面って多そうですもん。
みよし:ラーメンが嫌いな人たちが、新商品のラーメンが登場したときに「ラーメンなんて嫌いだ」って言ってきたとして、それはその人の好き嫌いを言っているだけだから炎上ではないし、本質でもないよねっていう。
――そこを明確にしておかないと、コンテンツ作りはどんどん難しくなってしまうような気がします。
みよし:僕がカヤックで担当した『エゴサーチ採用』という企画が話題になったときも、「エゴサーチは犯罪者が同じ名前だったらどうするんだ」なんて声もありました。『全員人事』では、「全員で労務をするとしたら個人情報の管理はどうするんだ」とか言われて。そういうことやるとは書いてないし、よく読んでくれ! みたいに思うことはありましたね。
シモダ:ソーシャルネットワークは人の性格を悪くしましたね。
――ただ、もちろんバーグさんもカヤックさんも炎上のリスクはできるだけ回避していると思うんです。どんな対策をしているのでしょうか?
シモダ:テクニックももちろんあるんですが、単純に人の気持ちがわかれば炎上はしないと思うんですよ。どういう反応があるかを逆算しながら作るっていうのが、有効な炎上対策かな。想定されるクレームに対して、「ウチが悪かった」って思えるものがあれば止めるし、「ただの言い掛かりじゃない?」って思うものに関しては論破できる準備をしておく。そうやって、コンセプトはできるだけそのままに、リスクを小さくしていくようにしています。
みよし:僕、基本的に人の気持ちがわからないタイプなんですよ。でも最近、自分が上から目線になっているときはわかるようになってきました。
――上から目線はネットで嫌われますよね。
みよし:自分でランディングページを作るようなときに、一カ月くらいずっと文章を読み返して、何回も何回も別のパターンで書き直すようにしているんです。「この言葉は共感なのか承認なのか」みたいに分類してみると、そのバランスで偉そうに思われたりそうならなかったりする感覚が掴めてきたので、上から目線は絶対に潰すようにしています。それでも何か言われることはあるんですが。
――そういうときって、どうすればいいのでしょうか。
みよし:僕の場合は、正論に正論で返してもダメなときがあると思っていて。例えば、『エゴサーチ採用』で「私たちはGoogle検索で自分の情報が一番上にくる人を求めています」って言うと、一番上の人とそうじゃない人っていう優劣ができてしまって、そうじゃない人に「自分は要らないの?」って思わせてしまいますよね。
「エゴサーチの方が、履歴書を出すよりも自分のことを上手く伝えられる人もいますよね」だと、優劣の構図ではなく、いろんな応募方法から一つを選ぶという構図になる。しかも意図としては、そっちの方が伝わるので、突っ込まれそうなときには構図を変えるように心掛けていますね。
「おもしろくない人」は「おもしろいモノ」を作れるのか
――上司なりクライアントなりから、途中で妥協する方向の指示がある場合も経験されていると思うんですが、いつもどうしていますか?
シモダ:ここまで説明したような対策をした上で、それでも挑戦するって大事だと思っています。
――それができる場合とできない場合とで、ぜんぜん違うクリエイティブが出来上がりそうですよね。
シモダ:最近よく思うのが、妥協ばかりする仕事だと、そこに発生するギャラって我慢代じゃないですか。「仕事が好き」って心から言うためには、我慢代にしたらダメなんですよね。やっぱりそこは戦って、「それじゃおもしろくないですよ」「じゃあこうしましょうか」っていうやりとりを経験したコンテンツだったら、その仕事は愛しながらできるじゃないですか。仕事が好きでいるために、多少は突っぱねるというか、言うことは言うようにしています。
みよし:僕の場合、採用に関してはクライアントワークもお手伝いしていて、先日かなり入念に準備をした企画があったんです。クライアントからも「このロジックはもう完璧だ」「正しいと思う」と言ってもらえたけど、コピーライティングの部分で、「この言葉じゃない方が僕らのイメージを伝えられると思うけど、他のはないですか?」って言われたんです。
「これはちょっとザワつくから止めよう」じゃなくて、「もっと伝えられる方法がほしい」と言われたら、我々は一番これがいいと思うけど、一旦ブレストしてみようかと。そういうことはありますね。
シモダ:変更の理由が前向きなのはいいですよね。
――ここまでお聞きしていて、クリエイティブだけじゃなくてエピソードもおもしろくて、ふと思ったんですが。
みよし:何でしょう?
――「おもしろくない人」は「おもしろいモノ」を作れるんでしょうか。
(一同困惑)
シモダ:どうしたんですか、急に。
――いや、自分たちも突破したいって気持ちはみんなにあるんじゃないかなって思うんですけど、結果としてクオリティが上がらなかったり、中途半端なままお仕事を受けてしまうことで炎上したり効果が出せなかったりして、突破コンテンツ自体にマイナスのイメージがついちゃうような構図は悲しいな、と思いまして。
これってどうすれば解決できるのでしょうか? 「自分がおもしろいから」みたいな話になっちゃうのですごく答えにくいと思うんですけど、やっぱり両社ともトップランナーなので、あえて言うとしたら、どうですか。
みよし:作れるようになると思ってますけどね。僕のおもしろさなんて本当に全然で……僕は25歳まで大学で数学をやってたんです。それまで企画もイベントも経験したことなくて、ここ4年くらいでやっと『エゴサーチ採用』みたいな企画を作れるようになりました。
ある日「突破したい」と思って、次の日から突破できるようになるのは絶対無理じゃないですか。おもしろいモノを作り続けようと思わない限りは、おもしろくはならないですよね。基本的に無意識っていうのは日常でしか作れないと思っているので。斜め上のことをやりたいのであれば、まず斜め上のことを日常でもずっと考えるみたいなところから入っていって、勉強していくしかないんじゃないかな。
シモダ:「かわいいはつくれる」みたいな。
みよし:そうかも(笑)。
シモダ:僕はおもしろい人って、ちゃんと俯瞰のカメラがついてる人だと思うんですよね。「面白い=自分が楽しくて興奮している」だと考えてしまうのは、俯瞰の視点が足りていないんじゃないかと。ある意味ではハロウィンも興奮ですけど、そこでウケを狙ってフリーザの仮装をしたとして、それ、ドンキで買えるじゃないですか。自分と同じボケをする人が周りにたくさんいることが想像できるか、楽しいと思ってやっちゃうか。これは大きな違いだと思います。
――クライアントが「おもしろいことやりたい」ってなったときには、そういう観点でパートナーを選ぶのはアリですね。
シモダ:もちろん、内製でもいいし、一緒にやりたいと思ってくれたら、頼んでいただけても嬉しいですし。
10年後の『突破クリエイティブアワード』は「青空の下で」
――第1回の突破クリエイティブアワードを終えて、いかがですか。
シモダ:最初は50作品くらいしか来ていなくて、なぜかラスト2日間で一気に100作品くらい来て。
みよし:みんな駆け込み(笑)。予想以上に応募が集まって、うれしい悲鳴でした。
――そもそもの話になってしまいますが、『突破クリエイティブアワード』はどんな経緯で立ち上げたのでしょうか。
シモダ:もともとはウチが「賞を作りたい」とカヤックさんにお声掛けしたのがスタートです。僕としては、賞を獲ったことがないからっていうのが理由ですね。賞って応募しないと獲れないじゃないですか。
――獲れませんよね。
シモダ:それでも応募したことがあるんですよ、スマホサイトのアワードにPCのサイトを作って応募したりしてたんですけど……。
――獲れません。
シモダ:はい、なかなか獲れないんですよね。だから、自分らが獲りたいような賞を作る側に回ろうと。でも、そうすると、主催だしバーグの作品はノミネートできないんですけど(笑)。
あとは、アワード当日も言いましたが、企画を提案するときに、『アレなら獲れますよ! だから、もうちょっとだけふざけてみませんか』ってアクセルを踏めるような、言い訳というか、勇気を出してもらえるような賞にしたいというのはあります。
――今回は初開催ということで、さまざまな手応えや反省があったかと思います。来年以降はどのようなアワードになっていくのでしょうか。
シモダ:賞としては、突破クリエイティブをこれからも支援していくために、ひとつの権威みたいなものになればいいとは思っています。ただ、豪華にしていくっていうのはちょっと違うのかなと思うし、参加者投票みたいにインタラクティブにすると敷居が下がり過ぎちゃう。そのあたりは、いいバランスを見つけていきたいです。
みよし:イベントとしては、記事系ってどうしても地味になっちゃうので、紹介の仕方は課題だと思っています。静的なコンテンツよりは動的なコンテンツの方がどうしても反応はいいですから。逆に、突破エピソードはどれもおもしろかったので、どうやって見せるかは工夫してみたいですね。
シモダ:再現ドラマとかできたら最高ですね。
――それ、すごくおもしろい!
シモダ:クソ大変だけど。 誰が金を出すんだっていう問題もあるし(笑)。
みよし:ノミネート作品の突破エピソードは僕たちで再現ドラマを撮っておいて、代わりに会場がどんどん粗末になっていくみたいな(笑)。
シモダ:そう、会場は青空の下。生中継の放送だけにして、現場にはノミネートの人たちだけ来るとか。
みよし:10年後はそうなっていてほしい……かな。ちょっとわかんないです(笑)。
突破クリエイティブアワード裏舞台まとめ
「おもしろい」コンテンツで、常に高い評価を受けるバーグハンバーグバーグとカヤック。今回のインタビューで、より多くのネットユーザーに届くコンテンツのヒントが得られたのではないだろうか。トップランナー2社が見つめるクリエイティブの未来から、今後も目が離せそうにない。
(取材・文)朽木誠一郎/ノオト