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765人の原告訴え棄却 大阪地裁

大阪地裁に向かう安倍晋三首相の靖国神社参拝を巡る訴訟の原告団=大阪市北区で2016年1月28日、大西岳彦撮影

政教分離の原則などの憲法判断示さず

 安倍晋三首相が2013年12月に靖国神社を参拝したことを巡り、戦没者の遺族ら765人が憲法の定める政教分離の原則に反し、近隣諸国との関係悪化で平和に暮らす権利(平和的生存権)を侵害されたなどとして、安倍首相や国、靖国神社に損害賠償などを求めた訴訟の判決が28日、大阪地裁であった。佐藤哲治裁判長は請求を退け、憲法に違反するかどうかや、参拝は公的か私的かの判断を示さなかった。原告側は控訴する方針。

     安倍首相の靖国参拝訴訟は東京地裁にも起こされているが、判決は初めて。

     佐藤裁判長は靖国神社について「歴史的経緯から一般の神社とは異なる地位にあり、安倍首相の参拝は社会的関心を喚起したり国際的にも報道されるなど影響力は強い」と言及。「一般人の神社参拝に比べて内心の自由、信教の自由などに大きな影響を及ぼすことは認められる」と指摘した。

     しかし「参拝にとどまれば、個人の信仰生活に圧迫干渉を加えるものではない」などと述べ、「原告らが心情や宗教上の感情が害されたとして不快の念を抱いたとしても、ただちに損害賠償を求めることはできない」と結論付けた。平和的生存権の侵害の主張については「現時点で具体的権利性があるか疑問」と判断し、原告1人1万円の賠償請求を棄却。将来にわたる参拝の差し止めの請求も「理由がない」として退けた。

     また、佐藤裁判長は、過去に小泉純一郎元首相の靖国参拝を巡り、福岡地裁(04年4月)と大阪高裁(05年9月)で違憲判断が示されたことを踏まえた原告の主張にも言及。「その後の社会、経済の情勢の変動や、国民の権利意識の変化で裁判所の判断が変わることもあり得る」とした。

     参拝について原告側は「公用車を使い内閣総理大臣と記帳した」と職務行為だと主張。国や安倍首相側は「公用車は警備の都合で使用し、記帳も地位にある個人を表す」などとして私的だと反論したが、判決は判断を示さなかった。

     歴代首相の靖国参拝訴訟では、最高裁が06年6月、小泉元首相の参拝に対する上告審判決で、憲法に違反するかどうかの判断をせず、請求を棄却している。【堀江拓哉】

    靖国神社「妥当な判決であると考えている」

     靖国神社は「妥当な判決であると考えている。この機会に靖国神社に対する適正なる歴史認識がより広く醸成されることを念願する」とコメントした。

     平野武・龍谷大名誉教授の話 信教の自由など原告の権利の侵害の審理には、参拝などが適法かどうかの実質的な検討が欠かせないのに形式的に結論を出している。平和的生存権について、具体的な権利性を認めない極めて消極的な判断が示されたのも残念だ。少数者の声に耳を傾けた上で判断するという司法の役割を果たしていない。

     大原康男・国学院大名誉教授の話 最高裁判決に沿い、「参拝で原告の法律上の権利や利益が侵害されたとは認められない」と判断したのは妥当だ。原告が主張したのは、参拝による不快感に過ぎない。「参拝は合憲」と踏み込めば明快だったが、訴えが根拠を欠くとして退ければ事足りるとの結論で、司法の立場として理解できる。

    平和的生存権

     平和に暮らす権利。日本国憲法の前文、戦争放棄を掲げる9条、幸福追求権を定める13条を根拠とする見解などがあり、訴訟では具体的な権利か否かが争われることが多い。名古屋高裁は2008年、自衛隊のイラク派遣差し止め請求訴訟の判決で、「憲法9条に違反する国の行為により個人の生命、自由が侵害されるような場合などには、裁判所に対して行為の差し止めを請求するなど具体的権利性がある」と認定した。

    靖国神社

     1869年、戊辰(ぼしん)戦争の戦没者の慰霊のため「東京招魂社(しょうこんしゃ)」として創設され、1879年に靖国神社と改称した。第二次世界大戦の戦没者ら約246万6000柱を祭神として祭る。1978年には極東国際軍事裁判(東京裁判)で裁かれたA級戦犯14人が合祀(ごうし)された。戦前の国家神道の中心で、戦後は連合国軍総司令部(GHQ)によって独立の宗教法人に改組された。所在地は東京都千代田区。

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