花粉症というのは、海外にはないという話を聞いたことがある。実際、花粉症持ちの筆者も3月にタイを旅行した際、くしゃみや鼻水に悩まされることはなかった。そこで、花粉症日本固有説を検証してみた。
結論から言えば、花粉症は世界各地に存在する。欧米でも枯草熱(hay fever)という用語があるほどだ。ただし、日本で2~3月に起こる劇症的なスギ花粉症はまず存在しないといえる。
スギ花粉症が発見されたのは1964年
スギの学術名はクリプトメリアヤポニカである。ヤポニカは日本を意味するラテン語である。スギは日本固有の植物なのだ。分布域は、青森から屋久島まで日本列島に広く分布する。そのため、北海道と沖縄にはスギ林が少なく花粉症のひどい症状が出ることはない。
スギは古来より、建築資材として重用された。スギの植林は江戸時代から行われていた。戦後になると、焼け野原となった都市を再建するために多くの木材が必要となった。そこで国策として拡大造林計画が推進され、各地にスギが植えられた。現在、日本の森林のうち40%ほどが人工林であるが、そのうち43%がスギ林となっている。それほど需要のある木材であったのだ。だが、大量にスギが植えられているのに花粉症が存在しなかったのはなぜか。
実は、スギ花粉というのは、樹齢30年ごろから飛散を始める。スギは20~30年間隔で伐採されていたため、花粉が飛散する前に切り取られていたのだ。だが、戦後に植えられたスギが切り取られる時期は、日本は高度経済成長期となっていた。建築技法の変化や、安い海外産の木材の流入により、国産スギの価格が下落。そのため、需要がないとして放置されるスギ林が増え、樹齢30年を超えたスギが花粉を飛散させるようになったのだ。
スギ花粉が初めて確認されたのは1964(昭和39)年。…