我々の世代は…新たな地質年代「人新世」に突入か
国立科学博物館で国際シンポジウムが29日から
核開発など人間活動の影響で地球は新たな地質年代「人新世」に突入したのか−−。そんなテーマの国際シンポジウムが29日から、東京都台東区の国立科学博物館で初めて開かれる。大量のプラスチックや核実験による放射性降下物など、地球に半永久的な痕跡を残す現代文明を問い直す試みだ。
地質年代は、化石など地層や氷床に刻まれた痕跡によって定められ、三葉虫が登場した古生代カンブリア紀、恐竜が繁栄した中生代ジュラ紀や白亜紀などに区分される。現在は258万年前に始まった新生代第四紀の「完新世」と定義される。
ノーベル化学賞を受賞したドイツの大気化学者、パウル・クルッツェン博士は2000年、生態系や気候への人類の影響が拡大しているとの危機感から、「人新世」という新しい年代を提唱した。日本学術会議によると、「じんしんせい」と読むのが一般的という。
近年、人新世の始まりを、産業革命が始まった18世紀や、人口が急増し核兵器が開発された20世紀半ば、農耕の開始時期や大航海時代などと主張する学術論文が科学誌で続々と発表されている。
国際シンポには、国内外の地質学者や文化人類学者、科学史家らが参加し、人新世の定義などを議論する。企画した同博物館の有賀暢迪(のぶみち)研究員は「100万年単位で地球に痕跡が残る人類活動の影響を考え直し、未来につなげる方策を考える出発点にしたい」と語る。【千葉紀和】