(2016年1月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
イラン・バンダルアバス港に停泊中の中国海軍の駆逐艦〔AFPBB News〕
今年に入って中国から流れてきたニュースと言えば、株式市場の下落と不安定な為替相場の話ばかりだ。だが、あまり報じられていないが、上海総合指数の急落や人民元の値下がりと同程度のインパクトを世界に及ぼしかねない北京発のニュースがもう1つある。中国は指針としている軍事ドクトリンを静かに修正していたのだ。
国有メディアの環球時報は今月、この新しいスタンスの要約をきびきびとした調子で伝えていた。
これによると、「我が国の軍事力の強さは世界に示されなければならない」という。
また、「軍隊が強ければ、中国はこれまで以上に政治的に魅力のある、そして影響力も説得力もある国になれる。ネットワーク作りも容易になるだろう」と論じている。
「韜光養晦」の終わり
このようなタカ派的姿勢は、1970年代後半以降の中国の外交政策を規定してきた「韜光養晦(とうこう・ようかい)」、すなわち「己の能力を隠し、時機が来るのを待つ」という方針が事実上終わりを迎えたことを示している。
この方針転換は実は数年前から始まっていたが、人民解放軍が年初から発表している一連の声明で、新しいドクトリンが「積極防御」という概念に集約されていることが明確になってきた。
中国国防省のウェブサイトで今月、ある発表がなされた。ほとんど注目されなかったが、海軍所属のあるトップクラスの計画立案者はこの中で、「21世紀の海のシルクロードに沿った航路」を守る中国初の国産空母建造計画を明らかにしていた。
中国政府の公式定義によれば、この海のシルクロードには、中国の東の海岸線とイタリアのベニスの間にあるものすべてと、その途中にある戦略の要衝が含まれる。どう見ても、これは中国の海洋防衛ドクトリンの途方もない拡張である。自国の領海を守ることに的を絞っていた以前のドクトリンとは大違いだ。