昨年の訪日外国人は、過去最高の1973万7000人に達し、中国人だけでこちらも過去最高で499万3800人(いずれも日本政府観光局より)が日本を訪れている。昨年は春節(旧正月)の爆買いも話題になった。
⇒【画像】実際に中国で売られているユニクロ製品
中国人の爆買いでは、家電や化粧品、雑貨、紙おむつなどのベビー用品を買っていく人が多いが、中には「ユニクロ」や「ZARA」、「GAP」、「H&M」などのファストファッション店で買い物していく人も少なくない。中国にないものを買い求めるなら分かるが、ユニクロもZARAも中国で多数出店しており、わざわざ日本で買う意味があるのかと思ってしまう。この話を、中国人や中国を知る人たちに質問してみると「日本のほうが安いから」という回答が多い。確かにそれも正しい。しかし、安い以外の理由は知られていない。
◆「わけあり品」しか中国本国では買えない!?
ではなぜか? 中国の卸関係者によれば、「中国のファストファッション店にはB品やC品ばかりが店頭に並びA品がほとんど売られていない(※B品、C品とはメーカーの出荷基準を満たしていない、いわゆる『わけあり品』のこと)」というのだ。確かに、店頭に行って商品タグを見て驚いた。「B類」と記載されているではないか。見た限りでは7割近くがB品で、残りはC品、たまに未記載のものがあるが、それは珍しく残っている「A品」だそうだ。この現象については、ユニクロなどのファストファッション店だけではなく、「無印良品」や「イケア」、自称日本ブランド「メイソウ」でもB品が多く並んでいるという。中国国内の全店舗でこうなのかは不明だが、少なくとも実際に見に行った「ユニクロ」や「ZARA」などでは普通に「B類」と書かれた製品が置かれていた。
商品レベルは、値札に書かれている。タグにはないので、値札を切るとレベルは分からなくなる。中国語だとB品はB類と表示されている。しかし、値段は日本より高い。つまり、中国では、BやC品なのに日本より高いのである。
そのことを知っている一部の中国人がわざわざ日本でユニクロなど比較的に世界のどこでも買えるようなファストファッションブランドを買っているのだという。
◆B、C品には関税優遇などの措置も
そもそもB品やC品の定義とは何なのだろうか。大阪市内の老舗百貨店へも卸しているアパレルメーカーへ長年勤めていた男性によれば、「正確にはB級品、C級品と呼ばれます。B級品は、微細な傷や色むらなど製造上の欠陥が原因で品質検査で不合格になってしまった製品で、新品としては出荷できない品質ではありますが、機能的には問題なく、使用上は影響がない品質の製品です。C級品とは、B級品よりさらに見た目などの状態は悪いのですが、不良品ではなく、こちらも使用上は問題ない製品と定義されています」
これらの定義は、各メーカーが独自に定めているものだが、業界内でほぼ統一されているものだそうだ。
「日本では、店頭にB級品、ましてやC級品が並ぶことはまずありません。B、C級品は、タグを切り別ブランドにしてアウトレット店で販売したり、メーカーの関係者、家族向けのファミリーセール等で処分されています。中国は、A級品以外は輸出できない一方で、B、C級品を中国で販売する分には問題なく、さらには関税などの優遇があると聞いています」(同)
確かによく見るとベトナム製なのにB品という商品も売られているので、関税優遇の話も関係しているのかもしれない。
世界中にある同じブランド店で販売されている「メイドインチャイナ」製品でも品質に差があるのに驚くが、先進国では日本同様にA品しか並ばない。昨年、ドイツのミュンヘンの「H&M」で気に入ったベルトがメイドインチャイナだったので、ドイツまで来て中国製かと思うも価格は中国の3分の2ほどだったので満足して買ったが、安くて品質もA品だったのだ。
中国で製造しているのに中国人はB品を、しかも高く買っているという現実……。なんとも気の毒に思えてしまう。せめて爆買いで訪れた日本で、いい製品に出会って欲しいものだ。
<取材・文・撮影/我妻伊都(Twitter ID:@ito_wagatsuma>
ハーバー・ビジネス・オンライン
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