(怜子)キスして。
私の事…嫌なの?2人そろってどこにいらしてたの?それも仲よく。
(紙音)どこ?あっ…ちょっとごめん!
(小夏)そいつね人間じゃないの。
氷より冷たい。
何よ?あんたのお父さんはね優しい人やよ。
私はね小夏の事が知りたいだけなの。
あの子がかつてどんな子だったのかあの子のためにもそれを知っておきたいだけなの。
(佐橋)小夏…とは…まだ准教授のころ…。
(佐橋)名古屋の夜の街で…。
すいません。
藤沢小夏です。
(光太郎)ジローが見つかったぞ。
えっ?脱走したあの犬だ。
もしもし。
聞こえるか?もしもし。
(犬の鳴き声)回想君なんかにこの犬が飼えるもんか。
この犬がどんな犬か知ってるのか?私も…捨てられた犬です。
ああ…!ちょっと…ちょっと!
(鳴き声)回想家族として自分の子供として本気で向き合い愛してやる事だ。
こいつらはな…愛されたいんだ。
小春…。
小春。
そのころのあなたは小夏を本気で愛してたって事?ええ。
結婚しようってちゃんと言いました。
結婚?そう。
おなかにはもう赤ん坊がいましたし。
赤ちゃんまでできた女をポイっと捨てたって事?小夏の方が僕の前から消えたんです。
当然よ。
結婚の約束までしておきながら学長のお嬢さんに乗り換えたんですものね。
僕は…。
子供の面倒を見るつもりでした。
もちろん小夏の事もです。
2人が暮らす家もちゃんと買ってありました。
へぇ〜それはすごい。
いえせめてもの誠意です。
誠意?はい。
あなたってよくよくのボンボンねぇ。
おうちは確か呉服屋さんだったかしら?いえ…和菓子屋です。
それも老舗の。
老舗です。
お母様に大事に大事に育てられたのね。
最後に小夏に会ったのはいつ?クリスマスの日です。
おととしの。
その時…小夏のおなかの中には赤ちゃんが?いました。
一人で始末したのね。
小春!小春!気を付けろ。
かみつかれるぞ。
小春!ごめんね…。
ごめんね小春。
(俊吾)かみつかへんやねえか。
ああ…。
小春!ごめんね小春。
どうぞ。
ありがとうございます。
頂きます。
君…小春って呼んでたな。
名前変えちゃダメですか?何で小春なんだ?せめてあの子に小さな春が来るように。
そうか…小春か。
それにあの子は女の子です。
(俊吾)こいつねそういうヤツなんやわ。
ええかげんやもんで。
ええかげんやないわ。
俺は小さい時から弟が欲しくてさやでジローにしたんや。
(俊吾)ほうやからってかわいそうやろう女の子にジローやなんて。
すまん。
それで小春はどこにいたんでしょう?神社におったんですよ。
神社?洲原神社です。
美濃市の。
(俊吾)こっから車で40分ぐらい走った。
長良川沿いにあるあの古い神社ですか?知ってるのか?結婚式を見たんです。
新郎新婦が舟に乗ってあの神社で。
そう。
そこだよ。
縁の下に潜り込んで腹減らして震えてた。
どうしてそんな所に行ったんでしょう?帰巣本能。
帰巣本能?こいつがねそうやって言うんですよ。
あの子が生まれたのがあの神社の縁の下だったんだ。
じゃあ小春は…自分の家に帰ろうとして。
ああ。
もしかしたらお母さんに会いたくて…。
そうだと思う。
小春はお母さんに会えたんですか?小夏に会いたい?教授のお嬢さんと結婚はしてみたもののうまくいってないんじゃないのかしら?いじめないで下さい。
小夏に会わせてあげましょうか。
私はあなたの味方よ。
信じて。
は〜いミルクだよ。
小春。
小さな小さな幸せでいい…。
そんな春が来るといいね。
だから今日からはもうオリになんか入らなくていい。
自由に…この部屋で一緒に暮らそう。
よし!これももう外しちゃおう。
脱走はダメよ。
ごはんだよ。
(銀次)初めて見る絞り方や。
嵐絞りです。
有松で習いました。
お〜あやかちゃん。
お疲れ。
(あやか)お先で〜す。
出来たんですって?はい。
どうでしょう?美しい。
美しいわ。
小夏。
すばらしいのひと言よ。
ありがとうございます。
(雷鳴)
(雷鳴)発表会?おう名古屋のホテルでな。
怜子先生朝早くから出かけたわ。
小夏さんもしかして知らんかったん?
(拍手)
(新海)「有松絞りと光のカノン」。
名古屋で生まれた有松絞りがいよいよこれから世界に飛び立っていきそうな美しいタイトルですね。
満を持してこの日を待っておりました。
伝統を守るだけでは有松絞りに未来はありません。
伝統を打ち壊してでも新しい何かが生まれる時がやってきたんです。
新しいしなやかな感性とともに。
(拍手)
(新海)本日発表されましたこれらの作品は全て深浦怜子先生のオリジナル作品でしょうか?はい。
私がここ数年もがき苦しんで世界を意識して生み出したものです。
よく言うよ。
あの…。
作品の前でお写真お願いします。
(ノック)民。
悪いけど。
(民)あっはい。
お疲れさん。
どうだった?私。
緊張してなかった?緊張してるどころか女王様みたいだった。
それ皮肉?お客だよ。
お客?どうぞ。
失礼します。
あなた何しに来たの?あれは全て…私の作品です。
何の事?お分かりのはずです。
先生ともあろうお方がこんな事…。
あんまりです。
これじゃまるで盗作じゃありませんか。
盗作?あきれた…。
私を泥棒呼ばわりするの?そのとおりじゃありませんか。
それじゃお先に。
光太郎待って。
俺は邪魔だから。
行かないで。
だけど…。
あなたにも聞いておいてほしい事があるの。
聞いてほしい事?だからいて。
小夏。
はい。
あなたの言いたい事聞きましょうか。
撤回して頂きたいんです。
つまりあなたの作品だって公言してほしいっていう事?そうして下さい。
無理。
できないわ。
するつもりもない。
じゃあそれなら…。
いいわよ。
裁判所でもどこでも訴えても。
ただし…。
ただし何でしょう?私言ったわよね。
あなたを弟子としてではなくパートナーとして雇うって。
パートナーとして相応の給料も出すって。
おっしゃいました。
(笑い声)まだ分からない?あれは2人の作品よ。
パートナーなんだからあなたの作品は私の作品なの。
仮にあなたの名前を表に出したとしてこれだけの場所であれだけの注目が集められたかしら?世の中甘くないわね。
(ノック)はい。
(山崎)おめでとう。
あ〜!大成功だったね。
会長来て下さったのね。
うれしいわ。
さあどうぞ。
世界に飛び立って下さいよ。
応援してますからね。
まあきれい!会長いつもお優しいのね。
光太郎くん久しぶりじゃないか。
ご無沙汰してます。
いやいや。
ああ…ご案内して下さった?あっそうや。
どうぞお入り下さい。
(ドアが開く音)本日はおめでとうございます。
すばらしかったですねぇ。
佐橋教授こそ大学でお忙しいのによく来て下さいました。
ありがとうございます。
いえいえ。
紹介するわ。
私の友達で動物たちの優しいお医者さん中原光太郎先生。
はじめまして。
佐橋京平です。
名北大学の建築学部の教授。
この若さで。
どうも。
小夏。
あなたはよく知ってるわよね。
どうしたの?小夏。
親しい間柄なんでしょう?中原先生。
小夏はね名古屋にいたころ佐橋教授と結婚をしようと…。
やめて下さい!山崎会長。
佐橋教授は小夏に用があるらしいの。
気を利かせてあげましょう。
(山崎)そうだね席をかえて。
中原先生。
レストランを取ってありますの。
ご一緒に。
(山崎)さあ光太郎くん。
はい。
教授。
はい。
ごゆっくり。
どいてよ!どいてってば!どいてよ!話聞いてくれ!嫌!あっ!どうしたのよ?ぎ…ぎっくり腰。
ああ…あぁ〜!今日は2人でごゆっくり。
何がご不満?
(車が走り去る音)ちょっと待って。
先ほどはどうも。
ああ…。
私帰ります。
コーヒーでもどう?嫌だなぁ…。
秋が来たと思ったらあっという間に寒くなるやないか。
そうですね。
寒いの苦手なんだ。
夏は我慢できるのになぁ。
私逆です。
へぇ〜変わった人おるなぁ。
冬の方が好きなんだ。
好きっていうか暑いのよりかは…。
なんか変だな。
えっ?名前小夏だろ。
夏の方がいいんじゃないの?小夏より小冬の方がよかったかもしれません。
(笑い声)君さ東京行った事ある?ありますけど。
変だと思わん?えっ?東京はコーヒーに落花生つかんやん。
ああ…。
名古屋は必ずつくよね。
落花生やなくてもクッキーとか必ず何か。
そうですね。
この殻つきがうまいんだ。
あのさ…。
生きてるとさ…誰だっていろいろあるよねぇ。
いちいちゴチャゴチャゴチャゴチャ言うなってんだ…。
部屋に上がってもいいかい?私たちの恋は昔々終わったの。
ねっ今はすてきな友達。
男と女は友達にはなれない。
私たちならなれる。
(原木)まいど〜お待たせしました。
(花江)あっおいしそうやね。
それ何?海鮮チャーハン。
私もお願いしてええ?合点ですよ。
(寺ちゃん)わしも腹減ったなぁ。
焼きそば。
まいどあり〜。
(はじめ)おいおいおいおいちょっと待って。
いくら何でもそりゃないわ。
うちで食べなぁで出前かて。
はじめちゃん細かい事言いだしたらあかんわ。
辰ちゃん。
大体あんたがあかんのやわ。
出前なんて言いだすもんで。
(アマンダ)そうそう。
(辰造)すまなんだ。
妙なんやけどさ…。
何が妙なのよ?上海で食べるとうまいと思わへんのやけどここで食べると実にうまいんだ。
分かる分かる。
そういう事ってあるんやて。
あるある。
あるある。
ほんじゃなにかの?うちのカレーやサンドイッチも上海で食べるとうまいって事かの?はじめちゃんうまい事言わっせる。
うちだってのはじめちゃん出前なんてしとる暇ないんやわ。
上海。
能書きはええではよしてちょう。
まいど〜。
(辰造)上海いくら?あ〜あとで。
あっ会長!いらっしゃいませ。
いらっしゃいませ。
お一人ですか?
(山崎)辰ちゃん。
吉夫。
水くさいなぁ…こんな所に隠れとったんや。
元気か?ただいま〜。
(健)お帰りなさい。
あれ?お客さんは?今日は朝から…。
3人?やでチャーハンなんやね。
海鮮チャーハンです。
上海の?うん。
うまいんですわ。
いけるんですよこれ。
私も何か出前頼もうかなぁ。
電話しましょうか。
いい自分でやるから。
カコちゃんは?
(健)仮眠とってます。
ゆうべ彼氏とな〜んかあったみたいで。
なんかとはなんか?謎やねぇ。
(ドアが開く音)いらっしゃいませ。
あら…。
今ね出かけとっておらんのよ。
あっいえそうじゃないんです。
じゃあ…。
カット…してもらいたくて。
私に?はい。
私でええの?はい。
(源)へいお待ちどお。
辰ちゃん。
何だ?なかなかええ人やないか。
美人やし。
シオンさんってどんな字書くんや?吉夫。
うん?お前そんな事聞きたくてわざわざ会いに来たんか?辰ちゃん…舟作る気もうないんか?本物の舟作れる人間辰ちゃんしかおらへんのやから。
吉夫。
うん?お前それ紙音に頼まれて来たんか?いや…。
(笑い声)なんや?相変わらずウソが下手やな。
いや…。
源さん。
もう一杯。
(源)はいよ。
(戸が開く音)お待たせ〜。
私すぐに。
ええやんビールくらい。
私ね…うれしいんやわあんた来てくれて。
それともなにこれから仕事?いえ。
そう。
なら座って座って。
ねっ。
これ飲んで忘れなさい。
忘れなさいって?「今日は嫌な事がありました」って顔に書いたる。
そのまま家に帰るのが嫌で気付いたら紙音の店に来てました。
でしょ?そのとおりです。
(紙音)乾杯。
頂きます。
あぁ〜。
ゆっくりしてってね。
あの人どうせ遅いで。
帰ってこん時もあるし。
帰らない時はどこにいるんですか?知らん。
そんな事言う人やないもん。
聞かないんですか?聞かん。
そんなもんですか…。
そういうもん。
男なんてねすぐ図に乗るんやで。
気ぃ付けや〜よ。
はい。
今日はやけに素直やねぇ。
私…この間の夜以来尊敬してますあなたを。
まいったなぁ…尊敬されてまうのもねぇ。
あの人何か仕事してるんですか?しとらん。
周りがいっくら言っても無駄や。
そんな男と…一緒にいるんですか?分からんやろうねあんたには。
ごめん。
怒ってるの?昼間の事。
怒ってなんかいないよ。
いつもの事だからね。
だってやっとレストランの予約取ったのに帰るなんて言いだすから。
お風呂入れるわね。
今日は帰るよ。
小夏の事好きになったの?バカな事聞くなよ。
だったら証拠見せて。
証拠?私あなたに言ったわよね結婚してって。
何でもあげるわ。
お金も返さなくていい。
このうちもお店も私が持ってる会社も全部あなたのものよ。
やめてくれ!たまらないんだ…。
虚しくてたまらないんだ。
ひと言だけ言って。
愛してるって言って。
ひと言だけ言って。
言って…!愛してる…。
愛してる…。
愛してる…。
(チャイム)は〜い。
・すまんこんな時間に。
あの…。
無理だったら…いいんだ。
じゃあ。
こんな遅くにすまん。
いえ…。
いいかな?はい。
あっどうぞ。
ジロー。
(鳴き声)あっ…違った。
小春だったな。
あの〜。
頭で考えるより先に君に会いたくなった。
(辰造)少し話さんか?小夏ねある事でショックを受けてるの。
誰かに支えてほしい時じゃないかしら?
(花江)商店街壊してどうする気なんやろ?有松絞りの先生が黒幕やっていうのは本当かね?私たち結婚するわ。
・「また今日も繰り返す」・「悲しみが溢れないよに」・「いつの日か何もかも」・「心から許せるのかな?」・「泣きながら見上げた夜空に流れ星」・「願い事はひとつ」・「祈るよ叶う時まで」・「愛し方さえ忘れてた私達だけど」・「惹かれ合うこの気持ちは」・「もう誰にも止められなくて」・「不器用な恋なんだと」・「笑われてもかまわないから」・「信じてみよう」・「心のままに」2016/01/26(火) 22:00〜22:50
NHK総合1・神戸
ドラマ10 愛(いと)おしくて(3)「抱きしめて」[解][字]
師匠の怜子(秋吉久美子)が小夏(田中麗奈)の作った有松絞りの照明スタンドを自分の作品として発表する。さらに怜子は光太郎(吉田栄作)に結婚の申し込みの返事を迫る。
詳細情報
番組内容
脱走した保護犬がようやく発見される。小夏(田中麗奈)はその犬を小春と名付け、大事に世話をしようと誓う。その後、怜子(秋吉久美子)は小夏が作った有松絞りの照明スタンドを自分の作品としてメディアに発表する。問い詰める小夏に対して、怜子は女王然とした振る舞いで全く取り合わない。そして、怜子は光太郎(吉田栄作)に結婚の申し込みの返事を執ように迫る。しかし、その夜、光太郎が向かった先は小夏のアパートだった。
出演者
【出演】田中麗奈,吉田栄作,秋吉久美子,水橋研二,石倉三郎,緒形幹太,平田満,南果歩,小林稔侍,丘みつ子
原作・脚本
【作】黒土三男
音楽
【音楽】羽岡佳
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz
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