(雁助)よしよし…。
よしよしよし。
(鳴き声)
(あさ)はれ?雁助さん?
(小声で)おいで。
よしよし…。
(うめ)また猫に餌やってましたんか?
(鳴き声)じき女子衆が起きてしまいます。
外出さんと。
そない言うてもなぁ…。
回想わてと一緒にこの家出ぇへんか?へ…?・「朝の空を見上げて」・「今日という一日が」・「笑顔でいられるように」・「そっとお願いした」・「時には雨も降って」・「涙も溢れるけど」・「思い通りにならない日は」・「明日頑張ろう」・「ずっと見てる夢は」・「私がもう一人いて」・「やりたいこと好きなように」・「自由にできる夢」・「人生は紙飛行機」・「願い乗せて飛んで行くよ」・「風の中を力の限り」・「さあ心のままに」
(新次郎)へぇ。
(平十郎)へぇ!
加野屋の事業は躍進を遂げました。
あさは銀行に先駆けまず新次郎を社長とした加野屋の商業部門を担当する加野商店を設立し炭坑に通い詰めてその規模を更に拡大し出炭量は今までの5倍となりました
回想
(友厚)加野屋にはあなたというファースト・ペンギンがいてた。
恐れを見せず前を歩む者が!よろしゅうお願い致します。
(榮三郎)へぇかしこまりました。
亡くなった五代の言葉を胸に加野屋は大阪港の海防工事に3,500円という大金を寄付しました
港の発展が大阪ひいては日本の発展につながればうれしい思てます。
大阪という町に支えられてここまでやってこれたせめてもの恩返しのつもりでさしてもらいました。
わてもそない思てます。
そしていよいよ
来年開業の予定だすのや。
どうぞよろしゅう。
定款。
株主名簿。
(平十郎)へぇ。
設立時銀行役員名簿。
へぇ。
はぁ…。
とりあえず提出するのはこれでよろしおますやろか?ここのはんこが抜けております。
ほんまや。
さあお願いします。
へぇ。
これで大蔵省と大阪府に正式に設立願の届けを出して無事に認可が下りましたら準備完了です。
はぁ〜。
ようやっとここまで来ましたなぁ!いいえ。
大変なのはこれからです。
ん?預金集めや貸付先の開拓そのための諸会社や資産家への挨拶回り公債投資先株式などについての知識集め銀行業者の同業組織である大阪同盟銀行集会所への加盟に為替など他銀行への取り引き開始の挨拶回り新聞などの開業広告などなど…フフフ。
心躍る業務がたくさん待ってます!へぇさんて話す時はえらい楽しそうに話しはりますのやなぁ。
へぇ。
へえ〜。
へぇさんいうたらこないな時はまるで「竹屋の火事」だすわ。
ん?「竹屋の火事」?「ポンポン言うてる」言うてな。
そない言うんでしたら私の言葉なんか「やもめの行水」ですわ。
ん?「勝手に湯とれ」言いましてね。
はぁ〜!こら一本取られましたなぁ。
ハハハハハ!何の話だす?さっぱりぽんや。
あさ。
ほなぼちぼち行きまひょか。
あ…そうだした。
ほなへぇ!へぇ。
ほなほな。
はぁほなな。
ほな行ってまいります。
・行っといでやす。
(千代)行ってまいります。
あさと新次郎は千代を連れて東京に向かいました。
東京であさの父今井忠興の祝賀会に招待されたのです
(よの)はぁ…千代がいてへんとさみしいなぁ。
(さち)へぇ。
今井銀行さんのお祝いの会いうたらさぞ豪華なんだすやろなぁ。
そうだすやろなぁ。
政府とかのお偉いさんたちがぎょうさん集まりはるみたいだすしなぁ。
御一新からもう20年か。
ハハッ…。
結局商いの世界で言うたら今井の独り勝ちみたいなもんだしたさかいな。
お姉さんは…。
回想頭はええし小さい頃からお商売には熱心やしほんまに榮三郎さんはうちの弟の久太郎とはまるで違て立派やて。
…なんて言うてはったけど弟の忠嗣さんいうたら今井家の跡取りやいうだけやのうて今や鉱山最大手の社長さんだす。
かなうはずあらしまへん。
まあ。
何を弱気な事言うてますのや!榮三郎。
あんたかてもうじき頭取さんだすがな!そらそうだすけど…。
(かの)大奥様。
そないいうたらちょっと弥七さんがお話ししてたの耳に挟みましたんやけどな。
ん?何だす?大番頭さんの事なんだすけどなぁ。
大番頭さん今日風邪で休んではりますなぁ。
へぇその大番頭さんに近頃度々手紙が届いてるみたいで。
雁助に手紙が?へぇ。
それで大番頭さんここ辞めて違う所に移る支度してはるんやないかて噂になってるそうだす。
あれまあ!ごちそうさん…!旦那様…。
(弥七)大番頭さんもなぁ。
弥七!雁助の噂いうのはほんまの事だすのか?へ?あっかのさんだすなぁ…。
あのおしゃべりめ!弥七も大概だすがな!…でその手紙いうのは?あ…へぇ。
それが差出人も聞いた事あらへん名前やし中身もよう分からしまへんのやけどなぁ。
何や中途半端な噂やな。
(平十郎)しかしそれはあきません。
大番頭さんはこの加野屋にとっての財産です!失うとそろばんでははじききれんほどの損失になります。
はぁ〜さすが極め付きの始末屋や。
考える事が違てますなぁ。
それに自分の右腕となる有能な働き手を連れて一緒に出てしまうというおそれもありますから。
(クマ)有能な働き手?
(佑作)もしかして弥七さんの事やあらしまへんのか?は?いやいやいやそんなわ…わてはこの加野屋に恩義がありますしやなぁ。
フフフフフ。
それから数日後
はぁ?外務大臣の井上馨様と話しはったて?へぇそうだす。
大蔵大臣の松方正義様やほんまようけのお方とご挨拶さしてもろて…。
ありがたやありがたや。
何が「ありがたや」や。
自分から人見つけてはどんどん挨拶しに行ってしもてわてヒャ〜ッとしたがな。
(笑い声)目に浮かぶようだすなぁ。
振り回されてもうクタクタだすわ。
…で今井のお父様にはきちんとご挨拶できましたのか?へぇ。
ほんま忙しみたいで聞いてみたい銀行の話なんか一つもでけしまへんだしたけどようやっと千代の顔だけは見せる事がでけました。
うん。
そらよかったこと。
あの時のお父はんの顔いうたら…!回想
(千代)おじいちゃん。
あさ…!わぁ…。
お初にお目にかかります。
千代でございます。
なんと!びっくりしはんのも当然だす。
小さい頃のあさとは似ても似つかへんお利口さんな挨拶やったさかいな。
はぁ?そうだすやろなぁ。
あ…ああ!あささんが初めてうちに来た時の挨拶ゆうたら…!ハハハハ!回想加野屋さんのためにその…ええお嫁さんになれるように…な…なれるやろか?その…。
懐かしおますなぁ。
(くしゃみ)雁助さん大丈夫だすか?へぇへぇただの風邪の治りかけでおますさかい。
お兄ちゃん。
ちょっとよろしおますか?ほう。
(小声で)ちょっと…。
何だすやろ?奥さんお帰りやす。
ただいま戻りました。
あ…せや。
それでその席で伊藤様に本気で銀行やるならまずは渋沢栄一様に教え請うた方がええて言われたんだす。
はぁ!?その渋沢さんってどんな人なんだす?へぇ渋沢栄一様は「西の五代東の渋沢」といわれまして銀行の神様と呼ばれたお方です。
私の昔々の上司です。
へぇ。
五代様とおんなじで政府のお仕事辞めて日本の経済のために尽くしたはるお方だす。
あ…そやさかいその伊藤様の紹介で早速会いに行きましたんやけどお忙しいお方やさかいさすがにお会いできまへなんだ。
へぇ。
そりゃ新次郎も千代もクタクタになるはずだすわ。
ハハハハ。
いやいやいや…いやあの…その前に伊藤様て…内閣総理大臣の伊藤博文閣下だすか?へぇその伊藤博文閣下だす。
えらい親切で朗らかなお方で!ほうその伊藤さんいう人もお偉い人なんだすか?い…いや偉いいいますか…。
はぁ〜さすがおあさ様や。
せやさかい渋沢様に会えるようにお手紙書いてみよて思てます。
千〜代!あんたのおじいちゃんにお会いでけたてなぁ。
へぇ。
そやけどあんまり立派な雰囲気のお方やったさかい何や緊張してしもたんだす。
けったいな子やて思いはったんと違うやろか?ハハッ。
今井のおじいちゃんやで!あんたのお母ちゃんを育てたお方だす。
もうちょっとやそっとでそないな事…。
けったいな子やなんて思わはるはずがありません。
こないなかわいらしいのに!ほんまに?うん!ほんまほんま。
お父ちゃんもな「お利口さんなご挨拶やったで〜」言うて言うてはりましたで。
そやったらええのやけど。
せや。
おばあちゃんにお土産買うてきましたのや。
見てこれ。
あ〜れ〜あらあらかわいらしいこと。
まあ!なあ!おばあちゃん気に入りはるて思いましてん。
雁助…まだ迷てるみたいだすなぁ。
榮三郎が改めて話したけどはっきりした返事せぇへんかったらしい。
そうだすか。
榮三郎さんも心配したはりますやろなぁ。
うん。
誰か一緒に連れ出す事もあんのやないかてそないな心配してましたわ。
…とか言うてもわては雁助はもう出ていくて心決めてるて思いますのやけどなぁ。
ん?何で泣きそうな顔してますのや?いいや。
何も…。
しゃあないなぁ。
あさはこの時つらい決断をしたのでした
2016/01/27(水) 12:45〜13:00
NHK総合1・神戸
連続テレビ小説 あさが来た(99)「最後のご奉公」[解][字][デ][再]
あさ(波瑠)は夫の新次郎(玉木宏)、娘の千代(鈴木梨央)と東京の父、忠興(升毅)の祝賀会へ行く。孫の千代をはじめて見た忠興は…。
詳細情報
番組内容
あさ(波瑠)の努力で、加野屋の炭坑事業は、順調に伸びていた。あさは平十郎(辻本茂雄)の協力を得て銀行設立の準備を進めていた。そして、あさは新次郎(玉木宏)と娘の千代(鈴木梨央)と東京の父、忠興(升毅)の祝賀会に行く。千代を見た忠興は…。あさは銀行の神様、渋沢栄一に会いたいと思い…。そんな時、大番頭の雁助(山内圭哉)が辞めるといううわさが流れる。心配するあさ、新次郎、榮三郎(桐山照史)は…。
出演者
【出演】波瑠,玉木宏,升毅,山内圭哉,友近,桐山照史,鈴木梨央,楠見薫,柳生みゆ,竹下健人,辻本茂雄,風吹ジュン,【語り】杉浦圭子
原作・脚本
【作】大森美香
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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日本語(解説)
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