ハートネットTV リハビリ・介護を生きる「書くことがリハビリ」(1) 2016.01.27


車椅子で取材しているのはコラムニストの神足裕司さんです。
自ら言葉を発するのが難しいため妻の明子さんの助けを借りながら筆談で取材を進めていきます。
神足さんを有名にした1984に出版された「金魂巻」。
当時の人気職業を取り上げその中でイケてる人とイケてない人をで分類し流行と世相を皮肉った本です。
このは第1回の流行語大賞に輝きました。
その後も神足さんは現場取材を第一にエッセイストコラムニストとして活躍。
東日本大震災の現場にも足を運び現地の状況を発信してきました。
しかし2011年9月重度のくも膜下出血に倒れ左半身まひと高次脳機能障害という後遺症が残ります。
現在は車椅子生活を送り言葉もうまく発する事ができません。
更に生活の中で記憶が途切れ途切れになる事が多いといいます。
「こうでこうで」って写真とか見せると「あ〜あ〜」って言ってだんだん思い出してくるようではあるんですけど。
そんな中神足さんは失われていく記憶と闘いながら懸命に書き続けています。
病後初めて出した著書に書くことについてこう記しています。
「こんな散文を書いていてもベストセラーになるわけない。
けれどボクのいまの一番のリハビリはこの原稿を書くことだと思っている」。
倒れてもなおやまない書くことへの思い。
そこには病気から復活するための決意が込められていました。
こんばんは「ハートネットTVリハビリ・介護を生きる」です。
今日と明日の2日間は「書くことがリハビリ」と題してお伝えしていきます。
タレントの荒木由美子さんとお伝えしていきます。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
この「金魂巻」というのも大体同世代ですのでとてもインパクトありましたしもうユーモアたっぷりのこのイラストと解説が大ヒットしたっていう…覚えてます。
そして流行語大賞も生み出した。
ええ第1回目ですもんね。

そういった時代を映す言葉もね生み出してきた今日はコラムニストの神足裕司さんそして妻の明子さんにお越し頂きました。
どうぞよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
神足さんといえばこの蝶ネクタイトレードマークです。
もうテレビで一回拝見しただけで皆さん絶対覚えてらっしゃると思います。
ダンディーですもんね。
今はどういった状態なんでしょうか?今はですね左半身のまひが残ってしまいまして寝返りとかも打てないですし歩く事もできないですしあと言葉がちょっと出づらいっていう事があります。
あと後遺症で高次機能障害。
高次脳機能障害ですね。
…が残ってしまいました。
具体的にその高次脳機能障害でどういうような生活のしづらさというのは?短期記憶がほとんどできないというか…。
昔の事は覚えているけれども…。
はい。
それと覚えてられる事もあるんですよ。
なのでそれがどういう仕組みで覚えてられる事と覚えてられない事があるのかちょっと分からないんですけれども。
今日はなかなか言葉が神足さんは出にくいという事で紙に今日は書いて頂くという筆談ですね。
神足さん今日はよろしくお願いします。
どうですか?ちょっと今日の意気込みを書いて頂きましょうか。
では明子さんに読んで頂きます。
今日もよろしくお願い致しますという事です。
いろいろお話伺っていきます。
まずは神足さんがくも膜下出血で倒れるまでの経緯と現在の生活をご覧頂きます。
(拍手)すごい男前からすごいかわいらしい感じになっちゃった。
おモテになったでしょう?モテた事に気が付かなかったですねあんまり。
「金魂巻」なんですが神足さんどういうきっかけでお書きになろうと思ったんですか?当時ですねハウツーっていうものに見せかけてうそをつくっていう事がはやってまして。
コラムニストの神足裕司さん。
蝶ネクタイと黒縁眼鏡をトレードマークにコータリンの愛称で親しまれ活字メディアだけでなくテレビの世界でも活躍しました。
数々のヒット作流行語を生み出し世に出した本は20冊以上。
時にはひねくれ時にはとことん細部にこだわった文章は神足節と呼ばれ多くのファンの心をつかみました。
そんな神足さんが2年前ほどに出したのが…くも膜下出血で倒れてからの日常をつづったエッセーです。
「死の淵というのを見たことがあるかと言うがボクはそこに行ったはずだが見なかった。
けれど音楽や人の声は聞こえていたような気がする。
あるときはボクがもうダメかもしれないと話していたし誰かが大声でボクを見て泣いていた。
けれどそれもすべて忘れてしまっていく」。
神足さんをくも膜下出血が襲ったのは…広島での仕事を終え帰りの飛行機での事でした。
突然気分が悪くなり機内で意識を失ってしまいます。
羽田空港に着くとすぐに救急車で近くの病院まで搬送されました。
もうちょっと危ないのでもし…もうどうなってるか分からないんですよ。
脳内の出血を取り除き再出血を防ぐ大手術を2回。
神足さんは生死の境をさまよいました。
そして倒れてからおよそ1か月。
神足さんは徐々に意識を取り戻していきます。
今までの事覚えてらっしゃらないかもしれませんって言われてたのでそういう覚悟で私たちも「パパパパ」って言ったら「うんうん」ってうなずくんです。
だからもしかしたら分かってるかもしれないって。
文字は割と早い時期から2〜3か月たってから書くようになりました。
一番最初に書いたのが息子と娘の名前だったんですよ。
だからそれは何かすごいジ〜ンと来て…。
もう泣きました。
意識を取り戻したあとリハビリのため転院を繰り返しおよそ1年間の入院生活の後自宅に戻りました。
しかし左半身まひという後遺症が残り自力で移動したり用を足したりする事ができません。
介護保険の要介護度は一番重い5。
それでも自宅で生活させてあげたいという家族の思いが神足さんを支えています。
家の中は神足さんが生活しやすいよう設備を整えました。
浴室には家族だけの介助でも湯船につかれるよう電動式の椅子を取り付けました。
トイレにも車椅子で便座に座りやすいよう昇降機を設置。
最初は全然トイレに行くという事も考えられないぐらいだったので。
それがそうですね…。
退院してきて3年目になりますけど本当に徐々に徐々にで。
今でもまだ十分ではないですね。
40%ぐらい治ったかなっていう感じなんですけど。
徐々に執筆活動を再開するようになった神足さん。
倒れる前はパソコンで打ち込んでいた文章も原稿用紙にボールペンでゆっくりと書くようになりました。
しかし神足さんにとって書くことは病気になる前とは比べ物にならないほど大変な仕事でした。
覚えていない事かそれとかうまく書けないのか。
自分が思ったように書けないのか。
自分の文体みたいなのを自分ではある本人は。
でも編集者との折り合いで何か違うふうになっちゃうと…病後の日々の日常をこつこつと1年間で書きためた文章は500枚以上に及びました。
以前は取材や出演など家を留守にする事がほとんどでしたが家族と過ごす時間が増えた神足さん。
言葉を話す事はできませんが何よりも癒やされる時間です。
食べないで。
倒れてから初めて名前を書いた娘の文子さん。
今大学3年生です。
今日こういう事があったよみたいな事を話して父はそんな返してくれる訳じゃないんですけど「うんうん」ってニコニコしながら聞いてくれて何か「どうしよう」とか言ったらすごい大丈夫だよみたいな顔をしてるのかなみたいな。
自分で勝手に考えてるんですけど。
「小さなパーツがジグソーパズルみたいになっていて小さなパーツの記憶の隣のパーツを見つけられればはめ込んでつながっていく。
幼い頃のパーツや子どもの事なんかはパーツ同士がつながるのだが…」「薬をのんだのを忘れてしまうがテーブルの上ののみ終えた薬の袋のパーツが突然よみがえる。
そういえばのんだのかも…。
そんなパーツを見つけられれば…」しかし文字を初めて書いた時が娘さんと息子さんの名前っておっしゃってましたけど文字を書くその神様がちゃんと与えて下さってた。
しかし障害は残りましたけどもよく命が助かりましたね。
本当です。
そうですね。
病院でももう「ご家族でどなたかいらっしゃったら呼んで下さい」とかって本当にドラマで聞いてるセリフをそのまま本当に言われたのでああもう本当に駄目なのかもしれないってその時は思ってました。
でも懸命にご家族皆さんでお声がけをされたり…。
好きな音楽とかあとまあ見れないんですがテレビ番組ですとかどうぞもし目覚めるきっかけになるかもしれませんからどうぞ聞かせてあげて下さいっておっしゃって下さって。
あと好きなものは何です?食べ物は何ですかって聞いて下さって。
そういうのの匂いとかも意外にいいかもしれませんよって。
やっぱり家族が声をかけるとか話しかけるっていうのは有効だっておっしゃってましたね。
今ずっと神足さん何か書いてらっしゃいますけど…。
どんな事を覚えてるかとかあまり覚えていないとかって書いてあります。
やっぱり思い出す時と記憶がちょっと飛んでしまったりっていう事はやっぱり繰り返しある事なんですか?そうですね。
日常でも前の日に誰々が来たとかお友達が来て下さったっていうのを朝起き抜けに「昨日の覚えてる?」とか言っても覚えてない事とかよくあります。
ただそういうのを話したり見せてるうちに「ああ〜!」って言ってよみがえってくる事もあるんです。
全く駄目な時もある。
まさに高次脳機能障害というのはそういうふうに突然出てきたり出てこなくなったりという何て言うかまだらな状態なんですよね。
理解できないっていう事もあったりするんでしょうか?理解できない事もあります。
あとゆっくり話してほしいっていうのと普通の人がボクを思っているよりはよく自分は分かっていると思うよって。
(笑い声)書いてます。
そうなの?
(笑い声)じゃあ自宅でもそのようにしていつも向き合ってというかそういう形でいつもお話をなさってるんですか?結構独り言のように一方通行でず〜っと私が話してるんですけどもうなずいてそれにうんううんいいえで答えてくれる事がほとんどです。
だから私も二択の質問をよくして「こっちとこっちでどっち?」みたいな。
イエスノーで答えられるような事が多くなります。
今の活動というのはどういう状況なんでしょう?執筆活動も定期的にではないんですけれども雑誌とかの執筆をしたりとか本の執筆をしたりしてます。
少しずつ再開されてるという事ですね。
その神足さんですが更に執筆できるようになるために懸命にリハビリを続けています。
神足さんにとって書くこととは一体何でしょうか。
この日は近所にあるデイケアでリハビリをするためおでかけです。
車椅子にベルトを通し固定させていきます。
実は自宅の玄関先には階段があるため車椅子をワイヤーでつり下げるタイプの昇降機を取り付けました。
明子さんが一人の時も外出好きの神足さんを外に連れていけるようになりました。
はいおはようございます。
週に1回自宅から車で20分ほどの所にあるデイケアに通います。
ここには退院した1か月後から通っています。
下半身のストレッチや歩行訓練などのリハビリを行ってきました。
くも膜下出血の後遺症の高次脳機能障害。
その影響でリハビリはより困難なものになります。
外からの指令や情報が多くなると脳がそれを処理しきれず思考が停止してしまう事があります。
その葛藤を著書にこう記しています。
「しかも動かそうとしている途中で違う指令が出るともうパニックになる」。
「だから何かやろうとしている時は話しかけないでね」。
歩行訓練に加え神足さんの希望で行っているのが階段を上る訓練です。
実はこのリハビリには物書きとして完全に復活するという強い意志が込められています。
こちらはかつて神足さんが書斎として使い原稿を書いていた部屋です。
今その部屋は…。
一日の大半を過ごすベッドルームになりそこにあった1,000冊を超える本は今2階にあった寝室に置かれています。
以前と同じように2階で寝起きをして元の書斎を仕事専用の部屋にし取材に出かけバリバリ原稿を書いていきたい。
神足さんはこう記しています。
「3.11のあと東北に取材に行った時はがれきの片づけをしている家族にも話を聞いた。
精神状態がボロボロになる事もしばしばだった」。
「ボクは今一昔前のそんな話を覚えていてこうして原稿に書いているのに今さっき書いた原稿を読み返しても…」「だから今のボクに仕事での取材は難しいだろう」。
しかし神足さんはリハビリのかいもあって少しずつですが再び現場に行きコラムニストとしての活動を再開するようになりました。
大好きなスポーツの事や身の回りの事件や事故など…。
神足さんが興味のある事を中心にインターネット上で記事にしたのです。
毎年恒例の忘年会。
神足さんと親しい人たちが集まりました。
家族や友人のほかに神足さんとのたくさんの共著で漫画を描いた…ラジオ番組で長年コンビを組んでいた小島慶子さんも参加。
1年ぶりの再会に神足さんの顔から笑顔がはじけます。
神足さん事前に用意していたメモを取り出し2人に質問を始めました。
得意料理や最近出した本について質問。
2人の事を記事にするためです。
頭の中では相当そういうえぐい事を考えてますからね。
でもこの1年で本当時々ツイッター頂いたりとかツイッター拝見してたりしても…忘年会から4日後2人の事を書いた記事が掲載されました。
「二人にはそんじょそこらにはないガッツがある。
根性というのか挫けても挫けても前を向ける。
ときにはもうダメだというほど打ちのめされながらも立ち上がる」。
かつての仕事仲間からの刺激を受け改めて書くことへの思いを強くした夜でした。
いや〜いい仲間ですね。
皆さんとお会いになると元気になりますか?あ〜うれしそうですね。
本当にここまで書きたいという気持ちそばにいて明子さんどういうふうに感じていますか?そうですねやっぱり一番したい事なんだろうなというふうに思います。
何が何でも書くんだっていうそういう気持ちが伝わってきますね。
やっぱり書くことで何か力が湧くっていうふうに感じられたんですか?書けば力が湧く事は知っていた。
へえ〜!ですか?そうやって倒れられる前も感じていた事が今にもつながってるんでしょうね。
もう食べる事すらできなかったですから管に通してという感じだったので。
本当に書くことはできるんだっていう感じに思いました。
そのために今一生懸命リハビリを続けていらっしゃると。
こう見るとなかなかうまくいかないもどかしい思いってあると思うんですが弱音を吐いたりもう嫌だって投げ出したりする事ってないですか?う〜ん…あるんですか?
(笑い声)お仕事をしてると以前とはやはり全然違うんでしょうね。
本人が伝えたい事を伝えられないというそのもどかしさをすごく感じる事があって私が伝えるっていうのは本人の間に入ってしまうのでやはり私の考えが入ってしまうのでちょっと違うふうに伝えてしまうじゃないですか。
だから違うんだよっていう顔をする。
あっ違うんだっていう。
だからそういう何回も何回もやり取りをしてでももう途中で諦めちゃう事があるんですよ。
もう伝わらないからいいやみたいな。
そういうのを見るとああしまったなって思いますけど。
改めてなんですけど神足さんにとって書くことの意味って何ですか?書くことの意味。
忘れないようにするためのものっていうのとあと今を表現するという事です。
今を表現する事っていうのはもうまさしくコラムニストとしてのね。
今日は本当にたくさんのお話どうもありがとうございました。
明日もですねじっくりとお話伺っていきますので明日もどうぞよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
今日はありがとうございました。
2016/01/27(水) 13:05〜13:35
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV リハビリ・介護を生きる「書くことがリハビリ」(1)[字][再]

コラムニストの神足裕司さんは5年前くも膜下出血に倒れ、半身麻痺と高次脳機能障害が残った。それでも「書く」意欲は衰えなかった。二夜にわたって彼の懸命なリハビリを。

詳細情報
番組内容
広島から東京に戻る飛行機の中だった。診断はくも膜下出血、1か月半意識は戻らず生死をさまよった。原稿を書くことはもう不可能と思われたが、一年後に自宅へ戻り、家族の介護を受けながら懸命なリハビリを続けた。「昨日のことも覚えていない。自分が自分で怖くなる」神足さんは、忘れないために書き始めた。「ボクには唯一、書くという機能を神さまが残してくれた。脳のほうはおぼつかないが書くことができる。これからも……」
出演者
【出演】荒木由美子,コラムニスト…神足裕司,神足明子,【司会】山田賢治

ジャンル :
福祉 – 障害者
福祉 – 高齢者
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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