「きょうの健康」今週は「子どもの発達障害徹底解説」です。
3日目になりますけれども今日はですね「学習障害」についてお伝えします。
お話は…小児科医として発達障害を持つ子どもの医療に長年携わっていらっしゃいます。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
今日のですね学習障害発達障害の中ではどういうものと考えたらいいんでしょう?学習障害は全般的な知的発達に遅れはないんですけども特に読む・書く・計算するなどの脳の働きなんですがそれが十分にできない状態を指しています。
知能検査などをしますとねこういう方というのは全般的な知能は普通の範囲なんですけどもその知能の中でも特に読み書きあるいは計算するとこに関わるところの得点が非常に低いというそういう特徴がありますね。
障害となってますがほかの発達障害と同じようにやはりそういう独特の生まれつきの脳の個性というかねそういう捉え方の方がよろしいと思います。
何歳ぐらいから…いつごろから分かってくるものなんですか?ほかの発達障害はね生まれつきなんで3歳ぐらいまでにね気が付かれる事が多いんですが学習障害はやっぱり読み書き計算するという事が苦手だという事ですので多くは小学校に入ってから気が付く。
最初の頃は皆さんスタートは一緒なんですけどなかなか読み書き計算に関するところは伸びていかないと。
そういう事で気が付かれる事が多いと思います。
こういうお子さんというのは特に学校家庭両方でねさまざまな困難があるのでさまざまな立場の人がサポートしていく事が必要だと思います。
そういう事で前にもご紹介致しましたけどもこういう学習障害についてもこういうサポートブックというのを文部科学省のお金を頂いて400人の実際の学校の先生方のご経験を基に学習上の困難に対してはどうしていいかという事をまとめた本です。
こちらは市販にもなっております。
数多くの例が入ってるんですね。
3,000例の対応のしかたが入っておりましてこれも3,000例あるという事は学習障害も一とおりの方法ではなくてたくさんの対応の方法があるという事と考えていいと思います。
心強いですよね。
一人一人やっぱり違う訳ですからね。
一人一人違いますのでね一とおりというんじゃなくてたくさんの方法で対応してく事が大事だと思います。
それにしても学習障害の子どもさんですねどれぐらいいらっしゃると考えていいんですか。
これは文部科学省が2012年に調査したんですが学校の中でお子さん全体の6.5%に発達障害というのがあってその中で学習障害は4.5%注意欠陥・多動性障害は3.1%自閉症スペクトラムは1.1%と出ております。
この4.5%というのは学習障害ではなくて学習困難と。
お勉強が下手な人が全部入っていますので大体2〜3%のお子さんがあたるんではないかと考えられています。
ここにありますようにいくつかのこの障害というね発達障害という名前が付いておりますが一人のお子さんの中に複数ある事が分かっていまして数は多いんですけど学習障害一番…この中で十分に社会的な理解が進んでない状態と言っていいと思います。
そういう原因ですね原因はどうなんでしょうか。
分かっているんでしょうかしら?これはやはり脳の機能障害と付いておりますが脳の中で私たちは見たり聞いたりいろんな形で言葉を聞く訳ですね。
それを理解する脳の回路の働きが十分に働かないという事が分かってきております。
例えばですねカラスという文字を見ますと私たちも「あっカラスだな」といってこの鳥を思い浮かべる訳ですが実際にこの学習障害のお子さんが見るとカラスが一個一個バラバラに見えて…。
この文字が「カ」「ラ」「ス」と。
「カ」と「ラ」と「ス」だけどこれ全部何ってまとめてその概念が頭の中で出てこなかったりあるいはこの中の字がですね鏡文字のように見えてしまったり。
あるいは似てる字に見えると。
「カラス」じゃなくて「カラヌ」みたいに見えてあれっ何の事か分からないという事で十分に理解ができないという事が分かっています。
記号のようにある種その見えるという事…。
そうですね。
記号のように見えてしまってあれっ何て読むんだろうって事で長い時間かかってしまうと。
実際に読解に時間がかかる事もはっきり分かってきてます。
子どもさんもカラスというものは知ってる訳ですね。
聞いてですねカラスという事は知っているんだけども文字を見るとそれと結び付かないという事ですね。
そうしますとなかなかやっぱりその授業を受けていてもつらいと思うんですね。
具体的にはどんな事に困ってるんでしょうか。
学習障害というのは一番多いのがね読み書きあるいは文字数字の理解ができない人が大部分ですのでまず読みの困難というのをここに出しましたけどもこれはカラスではなくてさくらと書いてありますけどやはり同じようにこのさくらというのを一つ一つ区切って読めるんですがまとまって意味をとるとなるとさくらという事は聞けば分かるんですけど見るとあっこれだって結び付かないとか。
あるいはここに出てますけど形の似た字を間違える。
鏡文字になってますけどちくらですね。
よく鏡文字という…。
小さいお子さんもね…。
よくやりますよね。
それが残っていて「ちくら」ってこれ何の事かなって分からない。
それからこれは一つの単語ですけど少し長い文になりますと…その区切りの場所が分からないんですね。
例えば「さくらがまんかい」というのはですね「桜が満開だよ」という意味にもとれるし「さくらがまんかい」とも…。
どこで切るかが分からないので「さくらがまんかい」あれっ何だろうなという事で分かんなくなってしまうという事ですね。
そして書きも…。
読み書きと今度書きの方の困難ですけどこれを例えばさかなという言葉を聞いて書きなさいと言われてもその字が正しく出てこないんでここはですね「か」という字は多分鏡文字になってます。
「な」は合ってますがこういう具合に書けなかったりめがねですね。
めがねの「め」がやはり鏡文字になっていたり「が」という字もこれ鏡文字ですね。
「ね」というのはこれ全部鏡文字になっていますね。
こういう具合にこれが出てこないと。
それから漢字ですね。
「語」「鳥」健康の「健」ですがこれが例えば実際にこれは報告書に出ているんですがこういうように「語」という字を書こうと思ってもこうなってしまったり。
似ていますけどこれも「鳥」。
これが健康の「健」ですね。
こういう具合に部分的には合ってるけど漢字を全体として書く事ができないという困難があります。
なるほど。
そうしますと全体の理解もなかなか難しい…。
これは単語ではそうですけど長文読解になったりするとますます困難は増してくると。
学年が上になるとそういうの増えてきますのでそこでそれがなかなかできてこないという事が分かります。
読み書き以外の困難はありそうですよね。
さまざまな機能が十分できないんですけどその中でも読み書き以外で計算が困難という事で計算というよりもっと…数字の概念が分からないという場合も出てきます。
私たちは3番目というのと3本というのは違う訳ですね。
その差が分からないとか桁上がりとかそういう事になるとそれが十分理解できないタイプの学習障害というのもございます。
読み書き計算というのは私たちの…昔だと読み書きそろばんといいましたけど私たちの学習の中の一番基本なんですがそれが十分できないためにお話をしてるとちゃんと分かってるのにできないんで勉強する気がないんじゃないかとかあるいは努力してないんじゃないかというように誤解されてそのために本人は一生懸命やってるのにほめてもらえない叱られるという事で自尊心の低下などの二次障害も出てくる事が知られています。
努力とは関係なしに読み書きあるいは計算ができにくいと…。
こういう事についてやはり学校とかおうちでもおうちで見ててこれだけ一生懸命やってるのにお話してると本当できるはずなのにできないという場合にはおうちであっそうなのかもしれないと気が付いてあげる必要があると思います。
でも多かれ少なかれなかなかね苦手なものってあると思うんですよね。
どうやって本当に気付くのか…。
一番は例えばお話してる時に結構できてるのに読み書きが下手だという時に怠けてんだと考えずにやはり専門の方にご相談頂ければいいと思うんですけど学習障害については私がそうなんですけど子どもの神経のね小児神経科とかあるいは言語聴覚士というね言葉の専門家がいらっしゃいます。
こういう方にご相談するのが一番いいかなと思います。
こういう方は保健センターとか子育て支援センターこのようなとこにいらっしゃいます。
先ほど申しましたように知能検査などで特に言葉に関するあるいは数字に関する点だけがどうもうまくできないという事から気が付かれたり診断する事があります。
知能の検査はもちろん普通なんだけどその言語についてだけ…。
そういう事ですね。
明らかにそうすると違ってくるんですね。
それでは具体的にどんなサポートをしていったらいいのか…。
これ先ほど言ったこういう報告書がございますがこの中にですね例えばそういう学習上の困難についての対応のしかたもたくさん書いてあります。
例えば実際の例で申し上げますと読んでいるものを理解する事ができないという困難に関しては42通りこの本の中に書かれております。
例えばその時には…これは学校でもおうちでもできますね。
苦手意識をとってってあげる事が大切であると思います。
それから書く事ですね。
今読んだものですが書く事に対して先ほどのような逆さに書いてしまったりうまく書けないという事がありますので最初はなぞり書きをして練習を繰り返してあげると。
何度も何度も繰り返す事で徐々にですけど慣れてくると。
それから大事な事は一生懸命本人はやってますので間違うと叱ってしまいますけどね叱らずにできるだけ正しいものを見せてあげるというような事。
叱っちゃいけないね。
そうです叱らないんですね。
これは特に二次障害を防ぐのに重要です。
文字の始点ですね。
どこから文字が始まるのかを示してどこで曲がってどこで読むんだよという事を声をかけて間違わないように練習を繰り返すなどこれ12通り書かれてますのでそういういろんな方法さまざまな方法で対応する事が分かってきてますのでそれで対応してあげる。
これちょっと言い忘れたんですけど発達障害っていいますと注意欠陥・多動性障害とか自閉症で例えば薬による治療が行われますけど学習障害についてはそれがないんですね。
こういう対応がほとんど全てという事になりますので家庭とか学校での対応がそれだけ重要になってくる訳です。
協力して連携してという事が大切なんですね。
ほかにも例が載ってますね。
文章問題を解く事が…特に学年が上がってきますと文章問題が多くなってきます。
先ほど言ったような単語でさえやっぱり困難ですので文章問題になると本当に大変です。
これは別に学習障害じゃないお子さんでもねつまずくとこですね。
そういう時にはまず学習障害の場合有効なのは声に出して問題を読んであげる。
どうしてかといいますと聞いた事の理解は十分できる。
読んだ事ができないので声に出して読んであげると解く事ができるようになる。
最近はそういう事でいろんな学習上のツールで例えば教科書を入れるとそこを声を出して本人だけ聞こえるようなそういう対応をしてあげるという事も行われています。
あるいは…これは今42通り出ておりますのでさまざまな対応のしかたがあると思います。
42という…それぞれによってサポートのしかた違うという事ですね。
一人一人違いますのでそのお子さんにどれが合うかという事を試しながら対応してってあげる事が大事なんですね。
やはり発達障害3つの中で一番分かりにくいのでどうしても誤解して本人の努力のせいとかあるいは…怠けてるというように考えられてしまうという事がございます。
非常に根気のいる事だと思うんですけども乗り越える事もできる訳ですか?そうですね。
日本では学習障害は3つの発達障害の中でも割合早い時期から名前が出てきてますけども一番理解が遅れてる。
一番分かりにくいんですね。
ただそれに対してむしろ薬というよりは対応のしかた学校とかあるいは家庭での対応のしかたでだんだんそれを乗り越えていく事ができます。
実際にこういう学習障害というね診断をもらいながら努力する事によって作家になった方とかね学校の先生をされてる方も実際いますのでそういう努力によって乗り越える事は十分に可能だというように考えて頂ければと思います。
今日学習障害でしたけど3回にわたって発達障害について教えて頂きました。
改めてその発達障害についてのメッセージお願い致します。
ほかの発達障害の時にもお話ししましたけども障害という名前が付いているんでつい何かこう…すぐ治そうという感じになってしまいますがむしろ生まれつきの個性癖というとちょっとよくないかもしれない…。
そういうものである事をやっぱり認識して頂く事。
社会全体で理解をしてサポートする。
家庭学校社会全体でサポートしていく事が極めて重要だという事だと思います。
その子に合わせてという事ですね。
そうですね。
榊原洋一さんにお話を伺いました。
どうもありがとうございました。
どうもありがとうございました。
2016/01/27(水) 13:35〜13:50
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 子どもの発達障害 徹底解説「学習障害」[解][字]
子どもの発達障害を正しく知る3回シリーズ。3回目では「読む」「書く」「計算する」といったことがうまくできない「学習障害」のサポート方法について詳しく解説する。
詳細情報
番組内容
「学習障害」の子どもは知的な発達に遅れはないが「読む」「書く」「計算する」といった特定のことがうまくできない。話は普通に理解できるため、「勉強する気がない」「努力しないだけ」と誤解されて発見が遅れることが少なくない。周囲がなるべく早く気づき、子どもが抱えている困難に応じて家庭と学校で適切なサポートを行えば、学習障害を抱えていても、さまざまな困難を乗り越えて活躍している人がたくさんいる。
出演者
【講師】お茶の水女子大学副学長…榊原洋一,【キャスター】桜井洋子
ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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