楽しんで使ってもらったらいいと思います。
講演録「後世への最大遺物」には「代表的日本人」と共通する内村の思想が込められています。
近代化し即物的な世の中になりつつあった明治時代。
内村が伝えたのは未来を思って生きる事。
わ〜俺ここにいた若者だったら感動すると思うよ。
私も。
「代表的日本人」第4回。
内村の言葉から「受け継がれゆくもの」としての「人生」を考えます。
(テーマ音楽)「100分de名著」司会の…今日は「代表的日本人」を書いた内村鑑三その人をもっともっと掘り下げてみたいと思います。
指南役は批評家の若松英輔さんです。
さて今日は「代表的日本人」を読み解く上で若松さんがもうとても大事だと思われる1897年に出版された「後世への最大遺物」ご紹介したいと思います。
こちらの年表をご覧下さい。
実はこの「後世への最大遺物」という本は講演録でして「日本及び日本人」出版の4か月ほど前にあたる1894年7月にキリスト教徒の夏季学校で行われた講演を本にしたものなんですね。
「後世への最大遺物」というのは人間がどう生きていくべきかという事を語った本なんですけども。
この本の中では具体的な人の名前はそうたくさん出てこないんですけども人に置き換えてみるとこうなりますというのが「代表的日本人」なんだと思うんです。
ほ〜ちょうど対になってるというかセットになっておかしくない本なんですね。
対というか内村の中ではこういうふうに前後で書いてるって事もあるわけですけどもほとんどもう本でいえば上下巻に近い関係だと思います。
上巻下巻。
そうです。
内村鑑三という人は書いた文章もとてもすばらしい人なんですけども話した言葉はそれとまた違った意味でもすばらしさがあって正宗白鳥という小説家がいるんですけど…え〜すごいな。
すごい評価ですね。
聞いている人によって出てくる言葉は違ってくるんだと思うんですよね。
それすごいよく分かります。
お笑いのしゃべりなんていうのは聞いてる人が下手すりゃ7割つくってるようなところあります。
彼がとても自由にものを考えそして我々にとってみればとても強い力強い言葉を発するという事だと思うんですね。
さあそれではその題名である「後世への最大遺物」とは何を意味するのかこちらをご覧下さい。
「後世への最大遺物」とは一人一人が後の世に遺せるものの事。
内村はまず金銭を挙げます。
世の中のために使う人へ受け継がれうるからです。
人の役に立つ事業を行う事も遺物になりうると言います。
それらができなくても自分の内なる真実つまり「思想」を言葉にして遺す事を勧めます。
後世の人を励ます事ができるからです。
更に何も持たぬ人でも遺せるものがあるといいます。
朗読は俳優の筧利夫さんでございます。
「その生涯を世の中への贈物としてこの世を去るという事であります」。
とても勇気の湧く言葉だと思うんですよね。
というのは人は生きているわけですから誰でもが後世に何かを遺せるんだという事を内村はここではっきり言ってるんだと思うんです。
またいいなと思うのはお金遺してもしょうがないって言わないですよね。
あの後半の美しい文章とかは並大抵の言い方じゃきれい事になっちゃうんだけどお金でもいいっていうのがあったりするから絵空事に聞こえないというか打ちますね。
内村という人はとても事業人としても優れてたんですね。
彼はその無教会というのを実際にこう学校みたいのを運営していくわけですね。
あと「聖書之研究」という雑誌を出していくわけですけども彼自身が広い意味でも事業家だったと言っていいと思うんですね。
ですのでお金とか事業がどうでもいいなんていう事を彼はおくびに思った事はないと思います。
本当にそれはとっても大事な事なんだと。
その上でただし人間が遺しうる最も優れたものはそれは生涯なのだという考え方なんだと思うんですね。
そもそもキリスト教学校の夏季学校でのお話という事なんですけどそのお話した対象というのはどういう人たちに向けてこれは。
内村はここで自分で考えるという事をしてみてほしいというのがこの講演を貫いてる一つのメッセージなんですね。
というのは内村鑑三という偉い人が何か君たちに教えるというのではないんだ。
君たち自身が考えていくんだというのがこの講演を貫いている一つのトーンだと思いますね。
「後世への最大遺物」の中で内村は世の中に足りないものについて語っています。
日本語で「生命」と訳される「Life」。
しかし内村がここで語ったのは単に肉体が動いているという事ではありません。
人間が築き上げるさまざまな「関係」こそがLifeなのです。
内村の思想を読み解くのに重要なキーワードだというLife。
これはただ肉体的なそのLife命生命という事ではないんですね。
そうですね。
まあ内村が考えるその3つの関係3つの交わり。
一つは「他者」というのは目の前にいる人もっと言えば同時代に生きてる人と言ってもいいと思います。
「超越」というのは今までお話してきましたけど「天」ですね。
天と私との関係。
あともう一つ「歴史」ですね。
「歴史」というのは亡くなった人という事だと思います。
あとは我々の今目の前ではなくなってしまった時間ですね。
こういうものとの関わりを持つという事がLifeなんだという事なんです。
僕これすごいトーク力だなって思うのがちょっと脱線するけどミスター長嶋茂雄さんってすごく英語を入れるじゃないですか。
犠牲バントをわざわざサクリファイスバントと言うのは多分犠牲という負の方向の言葉と違うハイカラさを多分入れるんだと思うんだよね戦術として。
訳しきれないものが。
訳しきれないものを入れていこうとするとこういう使い方になるような僕は気がして。
そう考えるとこのLifeも生命って言えますよね。
当然言えますよね。
日本をあんだけ大事にしてる人だから。
そこにLifeにする似てて非なる何かその周りにあるものみたいのを多分若者に向かって訴えかけるのにベストのチョイスなんだろうなこれ。
この明治時代というのは今と比べると…。
今と比べるとというか今と似てと言った方がいいかもしれませんけど…目に見える心臓が動いてるこの肉体としての命では終わらない何かも我々は見つめていかなくてはならないと。
強いものが勝ち残っていく時代になりつつあったわけですけどもそういう時に一つのこう太い線ですね。
一つの太い線からはみ出てしまう人がいると。
その人たちと共に生きていくという事はとっても大事な事なんだという事ですね。
内村にとって勝ち負けって考え方がまずないって事ですよね。
ただ歩くだけなんだという事ですね。
自分の歩いてる道の途中に倒れてる人がいる。
お前はその人に手を差し伸べないのかという問いかけなんだと思うんですね。
内村は人間の成長を樹木に例えて語ります。
わ〜俺ここにいた若者だったら感動すると思うよ。
私も。
あの先生の木に自分が接ぎ木して先生のLifeと一体化したいって思うだろうなと。
ここでは樹木の例えが使われているんですね。
あの樹木的成長という事を言ったのはゲーテという人なんですね。
この樹木的成長というのは今までお話してきた事とつながるんだと思うんですけどやっぱり種としてあるんだけどもそれがどんどんどんどん芽が出葉がつき枝がつき木になり花が咲きみたいなそういう成長をしてくわけですね。
ですので人間というのは自分が種であるという事を思ってそれで終わりだと思いがちだけども…この2つの事が同時に語られてるんだと思うんです。
しかもいいのが俺とつながれるんだぜって話じゃないんだよね。
つなげてもらえる俺のこの幸せという私の幸せだっていう話じゃないですか。
こんなうれしい事あります?聴きに来たオーディエンスにとって。
あと自分がこう例えば仮に木で木の実をならせたりする事があるじゃないですか。
でもそれが何であるかという事を知るのもそれを食べた人なわけですよね。
そう考えるとやっぱりつながりますね。
その樹木の感じだと西郷隆盛は多分中江藤樹がすごい大木である事を分かってるけど本人が大木かどうかは多分分かってなくて。
分かってない。
バラの香りは分からなかったんですものね。
内村鑑三は西郷はとんでもない大木だって分かっててみんなこうやって今も全員が大木の一部でもあるわけですもんね。
それを内村鑑三は海外の人に。
そうなんですね。
日本にこういうまあ5本の木じゃない日本ってこういう太い木ですという話をしながら世界は人間はそういう木であるみたいな所まで行きたいわけですよね。
なんて大きな。
でもおっしゃるとおりなんです。
壮大な話ですね。
そうなんです。
講演は内村が重んじた「生き方の態度」を説いて終わります。
(拍手)こちらが今朗読した最後の部分なんですけれども内村が重んじた態度というのはこの赤字で書いてある「真面目」。
面目が新たになるというような表現しますね。
面目というのはその人の中にある本当の姿って事ですけど真面目というのは学校の風紀委員になるようなそういう事ではないんですよね。
日頃の自分の事を考えさせられるのは…この周りの文章なんですね。
要するに我々は分かってはいて困ってる人は助けなきゃならないよねとか分かってはいるけどまあなかなかそうはいかないよねというのでまあ打ち消して助けず歩いていくじゃないですか。
でもそこ真面目に考えろよという事だと僕は受け取ったんですけど。
やった方がいい事もうもともと知ってるじゃんみたいな。
これは耳が痛い。
内村がここで語ってるのはやっぱり小さな勇気を持てという事だと思うんです。
あなたの中にそういう思いが浮かぶという事はあなたがそれができるからだという事だと思うんですよね。
だから彼が言う真面目というのはあなたの中にある本当のものを呼び起こす小さな勇気を持てという事だと思うんですね。
最後に「代表的日本人」を書くに至った内村の心を知るために紹介したいという著書があると。
内村鑑三という人を理解する時にとても大事な本は…この本を読まずして内村鑑三を語るなかれというところがちょっとあるようなそういう優れた本だと思いますけど。
不敬事件というのがあって大変つらい試練に遭うわけなんです。
その時に彼は病も背負いましてね生死をさまようんです。
そこを看病して内村を回復するまで導いたのが奥様の加寿子さんという人だったんですね。
当時の自分の周りの人は全て自分を捨てたけども最後にまで自分を守ってくれた人があたかも自分の身代わりになるかのように死んでいくわけなんです。
その時に書いた本なんですよね。
ちょっとその一節をご紹介したいと思います。
「彼」というのは奥様の事彼女の事ですね。
自分の愛する者は生涯の目的を達成した。
その彼女の宇宙はとても小さいと言うんですよ。
この「宇宙」というのは今まで語ってきた「天」ですね。
内村がここで語ってるのは自分の奥さんというのはとても小さな存在ですね。
なんですけどもこの人物こそ自分の「代表的日本人」なんだという事なんです。
…という事を彼は教えてくれてると思うんですね。
奥様のそのバラの香りですよねこの本一冊一冊が。
そうですね。
…でいてこの本を今僕はこう聞かされて感動するわけでまあ奥様の生涯は長いですね。
そうなんですねそういう事なんだと思うんです。
もう何か泣きそうになっちゃってなかなか次にいけないんですけどちょっとほんとに。
第一章「愛する者の失せし時」の最後に内村はこう書いています。
肉体がなくなって初めてその自分の心と妻の心奥さんの心が一緒になったという。
僕自身なんかもそうでしたけども自分の父親というのは生きてる時には少しわだかまりがあるような感じでしたけど亡くなってみるとほんとに彼の言ってた事がよく分かってくるという感じがありますね。
亡くなってからその人と本当の出会いがあるんだという事は我々の日常の中でもあるんだと思うんですね。
ですからだからこそこの世でどう生きるかというのは本当に大事なんだという事なんだと思うんです。
そうなると受け継がれて恥じないような人生を送る事とそういう人を受け継ぐ努力をする事とみたいな事になるのかしら。
そうですね。
例えば日の事を書いてる時にこの書かれてる言葉があたかも日に読まれてるかのように書いてるんだと思うんですよ。
ですんで今伊集院さんおっしゃったように…そういう臨場感というのが今回我々が読んできた言葉をとっても強くしてるんだと思うんです。
内村のこの「代表的日本人」そして「後世への最大遺物」この2つの本を考えていく時にとても大事な考え方は「準備的」という考え方なんですよね。
彼はその人間の生涯というのは準備的なんだって事を言ってるんです。
やっぱり内村鑑三の信念だったと思いますね。
もう一つは…だからこそちゃんとやんなくちゃいけない。
これは「100分de名著」という番組で本を読んでいくという事なんですけど…どういう事かというとこの本を読んで皆さんがお考えになられてその中で叡智がふっと花開きますよね。
それが全く違う形で他の人に伝わっていく事があるわけですよね。
すごくこの番組をやって思うのは今日これで知った事で僕はこのあと何かで「ああこれあの時の内村鑑三の言ってる事にちょっと近いな」みたいなのあるのでまさに読書は準備ですよね。
4回にわたって「代表的日本人」を読み解いてまいりました。
そして内村鑑三に迫りましたけど伊集院さん相当何か。
今回1回追うごとにあっこの本ってこういう本なんだ。
面白いな。
えっ?この本ってこういう本だな。
もっと面白いなみたいになって。
呼び覚まされてましたもんね。
最終的に僕の中に浮かんだ何だか滞留してる光みたいなものが僕は何となく浮かんできてああそれをみんな何かいろんな形で分かりやすく神様って言うんだみたいなところまでちょっと来て。
最初はほんとにいっぺんに5人の偉人伝が読めてお得なパックだなと思ったんだけど何だか全く違うものになりました。
すばらしいですね。
おっしゃってたじゃないですか好きな人を選ぶみたいな。
そうですね好きな人を選ぶというのを僕もちろんお勧めしたいんです。
それも一つなんですけど僕はね皆さんにお勧めしたいなと思うのは…「書いてみる」までですか?考えるじゃなくて書いてみる。
なにも偉人じゃなくてもいいと思うんですね。
自分の人生に現れてきたとっても大事な人を例えば5人選んでその人の事を書いたらそれは自分が何であるかという事を知るという事なんだと思うんです。
誰に見せなくてもいいと思うんですよね。
先生誰書きます?う〜ん僕はそうですね…。
まあそういうご質問になっちゃうとあれですけど僕は実は妻を失ってるんですよね2010年に。
僕にとってはやっぱり妻というのは「代表的日本人」のうちの一人ですねやっぱり。
それは死んでから分かりました僕は。
生きてる間はあんまり分かんなかったですけどね。
うわ〜…まあ何かとても大きな木の中のお一人だと思います。
ですのでそういう気持ちでこの本を読んでみるとあるメッセージというのがあって「代表的日本人」というのはなにもその歴史年表に残るような人ではないんですよね。
内村が我々に伝えてるメッセージというのはそこなんだと思うんです。
伊集院さんも愛妻の事をお書きになったら自分が何者であるか。
愛妻の事を書くと爆笑になっちゃう。
笑いが多すぎて。
いや〜本当にどうもありがとうございました。
2016/01/27(水) 22:00〜22:25
NHKEテレ1大阪
100分de名著 内村鑑三 代表的日本人[終] 第4回「後世に何を遺すべきか」[解][字]
「代表的日本人」は講演「後世への最大遺物」と通じており一緒に読み解くとその本質がわかる。「人がどう生きたか」こそが魂のリレーとして後世に伝わっていくというのだ。
詳細情報
番組内容
「人がどう生きたか」こそが人から人へと伝えられるものであり、それが魂のリレーとなっていく…「代表的日本人」は、講演「後世への最大遺物」と通じあっており、一緒に読み解いていくとその本質がわかっていく。内村にとって生きるとは「後世」に生まれる未知の他者が歩く道を準備することだった。逆に私たちは、何を受け継ごうかと考えて世界を見るとき、はじめて自身に準備されている「遺物」の豊かさに気づくことができる。
出演者
【講師】批評家…若松英輔,【司会】伊集院光,武内陶子,【朗読】筧利夫,【語り】小口貴子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
趣味/教育 – 生涯教育・資格
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