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アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と- 作者:一星

第三章 里での生活

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十九話 別れ

 息を切らしたイーノスが、ナディーネの姿を見ると顔を引きつらせ、声を荒げながら村長さんに問い詰める様に話し始めた。

「爺ちゃんが買い取ってきたのか!? 何て事をしてくれたんだ……。ベイル様に何て言えば良いんだよ!」

 誰だよベイルって、何だこいつ下っ端なのか?

「お前が絡んでおったとはのイーノス。今迄散々甘くしておったのがこうもなるとは……。貴様、この村に居られなくなったぞ?」
「ぐっ! そんな事もうどうでもいいんだよ! 従者になれるはずだったのに! 如何すればいいんだよ……」

 うわぁ、村長のじいちゃん超怖ぇ……目がマジだよ。
 しかし、こいつペラペラと喋ってくれるな。
 大体の話は分かったな、ナディーネを嵌めてベイル様って奴に売るって魂胆だったのか。
 あぁ、奴隷商が言っていたやんごとなきお方ってのがそいつって事か?

 俺はイーノスが村長と会話をして自滅している様を眺めていると、奴は俺の存在に気付いた。

「お前は、あの時のガキッ! まさか、お前がナディーネを買ってきたのか!?」

 ワナワナと震えだしたイーノスは、俺の方を指を刺し叫ぶようにそう言うと、こちらに向かって歩いてきた。

 それを見たアルンが俺とイーノスの間に立ち、それを阻もうとする。イーノスは、うっとおしそうにアルンを手を伸ばそうとしたのだが、アニアの腕に抱かれていたポッポちゃんがいきなり飛び上がり、イーノスに頭突きを食らわして威嚇をしだした。

 倒れたイーノスは直ぐに身を起こすと、体中の羽を立たせ威嚇のクルッポーと言う声を上げる、ポッポちゃんと対峙した。

「何だこの鳥! 邪魔すんじゃねえ!」

 完全に頭に血が上っているイーノスは、顔を真っ赤にさせて床にいるポッポちゃんを蹴り上げようと足を振りぬいた。
 しかし、ポッポちゃんはそんな蹴り等は大したことないと言わんばかりに華麗に避ける。

「てめぇ! 何してんだ!」

 俺はポッポちゃんに蹴りを食らわそうとしたイーノスに、思わずドロップキックを食らわした。
 俺の蹴りを体の中心でまともに食らったイーノスは、体をくの字に曲げて家の外に吹き飛んで行った。

 ったく、俺のポッポちゃんに何してくれてんだあのガキは、危うく手に持ってたナイフ投げそうになっちまったよ。

 外に出て確認すると、イーノスは完全にのびていた。その周りには複数の男女が覗き込むようにイーノスを眺めている。
 ナディーネが戻ってきた話を聞いて、集まってきた村の人たちだろう。
 その中にはイーノスの両親も居た様で、突然自分の子供が吹っ飛んで気絶した事に慌てていたが、村長が簡単に事情を説明すると、顔色を変えて自分の息子を拘束する事になった。

 ショックを受けているナディーネは、双子とポッポちゃんを護衛に一度家に帰して俺はマーシャさんと共に、尋問に立ち会った。

 内容は先程までイーノスが自分で喋っていた事が殆どで、このウィロー領の領主である伯爵の三男で、ベイルと言う奴に村一番の美少女を売り渡して、自分を取り立てて貰おうとしていたとの事だ。

 ベイルは既に奴隷商でナディーネの姿を見ており、相当の気に入り様だったとイーノスは明かす。それを聞いたその場にいた皆が、落胆の声を上げた。

 俺は村長にどうしたのかと尋ねると、どうやらこのベイルと言う奴は、素行が悪いと有名で過去にも似たような事をしたと噂されていたのだった。
 村長の見解としてはプライドが高いベイルは、ナディーネを諦めないだろうとの事で、それを聞いたマーシャさんの表情も硬い。
 奴隷商がどんな算段で、変わりを用意するつもりだったのか判らないが、余りそれには期待できない気がしてきた。

 場が凍りつく中、村人の一人がこの村を出た方が良いと提案してきた。マーシャさんもその意見には賛成らしく、段々と目に力が籠ってきている。
 俺は基本的にはマーシャさんの考えを尊重するつもりだし、話の流れも悪くない気がしてきた。
 行先もマーシャさんに宛てがあるらしく、隣国との国境の街に親戚が住んでいるので、そこに行く事を決めたみたいだ。

 事が決まればと村の人たちは、マーシャさん達の旅に役立つ物を用意する為に、村長の家から次々と出て行った。主に保存が効く食べ物を用意するとか言っていたが、俺が保存出来る事は場の空気的に言い出しにくかったので黙って置いた。

 イーノスの処分は結局、村の法として村からの追放と、騎士団に犯罪者として突き渡すとの事だった。
 正直、この場で首を刎ねてくれと思ったのだが、そこまで無法を村でやる訳にはいかないので仕方が無いか。
 犯罪者になれば大抵は奴隷落ちするらしいので、まっているのは強制労働って所だろう。

 村長は詫びとして大金貨二枚と、移動手段を用意すると言ってくれた。
 正直大金貨二枚とか安すぎる気がするが、それを出すと言った時の村人の表情を見る限り、相当の金額だったのだろう。こんな田舎じゃ村長も大して金持ってないって事かな。

「マーシャさん、ミラベルちゃんを連れて家に戻って旅の用意して。俺は村長さんから馬貰って来るから」

 マーシャさんは俺が同行する事に一言ありがとうと言い、優しく俺を抱擁すると、まだ寝ているミラベルちゃんを回収しに家の奥に向かった。

 俺は村長の息子さんに付いて行き、馬小屋に向かう。
 今用意出来ると言われと渡された馬は、やや小柄な体躯をしていた。

「何か、小さく無いですか?」
「渡せるのはこれだけなんだ。他の馬は村の財産でな、去年産まれたこの馬しかウチからは出せんのだ」

 正直大丈夫かと思ったが、子馬よりかは大きいので、無いよりましと判断して受け取る事にした。常時ブレスを掛けてれば何とかなるだろ。
 息子が悪さをしたのであって、この人をああだこうだと言った所で仕方が無いのだから。

 俺が馬を連れて帰って来ると、四輪の台車用意されていた。馬に合わせたかの様に小さいのだが、全員が乗る訳でも無いので、役は果たしてくれるだろう。

 少しボロが来ているので、軽く補強をしたら幾分マシになった。 持ってて良かった大工スキル。

 台車の補強が終わる頃には、ナディーネ達も家を立つ用意が出来ていて、感慨深そうに家の中を見ていた。俺は何気無く家に入ると、残る家財全てをマジックバッグに収納して行った。

 うむ、鳩のマークの引越しセンターでも作るか?

「家具、全部持ったからね」

 家具を収納し終えた俺が、外で待っていたナディーネ達に告げると空になった家の中を見て、笑っているのだが、戸惑っているのだが良く判らない顔をしていたが、「もう対して驚かないわ」とだけ言われてしまった。

 全ての用意が出来る頃には、村の人たちも集まって別れの挨拶と餞別を貰っていた。一時間ほどたっぷりと最後のお別れを済まして俺達はコーソック村から立つ事にした。

 目的の場所だが、このコーソック村から西にかなり進んだ場所にある、隣国エゼル王国との国境領エルターラングのラングネルと言う町に向かう。
 予想される日数は一カ月近くとかなりの距離があるみたいだ。

 俺はもう、良い観光になるな程度にしか、思ってないので最後までちゃんと付き合う事にした。ここまで来て見捨てるとかありえないしね。

 ミラベルちゃんは家を出た事に最初は不満を唱えていたが、三人一緒に暮らせると聞いてからは、双子とポッポちゃん相手に思う存分遊んでいた。

 ミラベルちゃんと遊んでいる双子を見て、俺は思い悩んでしまう。

「なあ、アニア、アルン。お前達帰りたいか?」

 俺が何気なく言った一言に、二人は顔を見合わせると揃って首を振る。

「戻っても、また売られてしまいます」
「僕らはご主人様が良いです」

 うーむ、毎日ちゃんと食わせてやってるからか懐かれてる。
 いや、パンのお蔭か!?
 有りうる……。

 俺が二人の返事を聞き悩んでいると、ナディーネが隣から話しかけて来る。

「ゼン君、二人が言う通りだと思うわ。可哀そうに思った人が解放しても、また売られるなんて良くある話なのよ。それならゼン君が所有していた方が絶対に良いわ。ゼン君甲斐性あるし、成人してたらなぁ……」

 最初は置いて行こうとか思ってたけど、考えたら犬猫じゃねえんだよな。二人を引き取ったとしても、子供の体じゃ労働力としてはまだ低いし、衣食住は与えないといけないんだ。
 そう考えると、多分簡単に貰うような奴は、まともな人間じゃない気がしてきた。

 あぁ、覚悟を決めるか。

 甲斐甲斐しく俺の世話をしようとする二人に、既に俺は情を感じているし、イーノスが俺に向かって来た時に、体を張って守ろうとした姿は俺の心を揺さぶったのは確かだ。

 それ以上に二人を保護しようと思う心が強くなっている。

「分かった……。二人とも成人するまで俺が世話をするよ。それで良いよな?」
「……? お世話をするのは、私たちのお仕事ですよね?」
「アニア! そう言う意味じゃないよ! ごめんなさい主人様、アニアが馬鹿で、僕たちはご主人様について行きます」

「じゃあ今日からは俺の事はゼンって呼んでな。ご主人様はちょっと恥ずかしいから」
「分かりました、ゼン様」
「ゼン様!」

 まあ、これでいいや。
 少し気軽過ぎる感じはあるけど、俺が養う対価としてお世話をしてもらおう。まあ、大してやる事ないんだけど。
 それに俺が教えて行けばたぶんスキルの上昇も早いだろう。この若さから仕込んでいけば相当……。

 あれ? この子達何歳だっけ?

 二人に年を聞いた所、俺の一つ下だと分かった。
 ジニーと一緒の割にはちょっと体が小さいな。食生活悪そうな環境で育ったからかな。パンなら好きなだけ食べさせてやろう、幾らでもあるからね!

 そんな事がありながら、俺達は目的地である西を目指しているのだが、その前に一度ブロベック村へと寄る事にした。
 今回の旅は長い物なので、所々に有る村や町を訪れる予定で、その通り道にあるブロベック村はちょうどいい位置にあるのと、俺も一度位帰って挨拶はしておきたかったのだ。

 村に着き宿をナディーネ達に取らせて俺は、ポッポちゃんを連れてキャスの家に行く事にした。昼だと言うのに家にいたキャスの、変わらぬ様子に俺は安心をした。

「おひさ、キャス姉。元気だった?」
「あらあら、ゼン君帰ってきたの? ん……? それポッポちゃん? 別人ならぬ、別鳥になってるじゃない!」

 流石だキャス、まずはポッポちゃんの美しい姿に気付くとは。

 色々話す事は有るのだが、カーラさんは仕事でまだ家に帰っていないとの事なので、俺は先にこの村の裁縫店であるコリーンちゃんの家に行き、すっかり放置していた服などを取りに行く事にした。
 裁縫店のドアを開けると中には、コリーンちゃんと遊んでいる母親のフラニーの姿があった。

 俺は二人に挨拶をして久しぶりの会話を楽しんだ後、予約しておいた物を受け取り店を出た。一時間位話し込んでしまったが、家族共に幸せそうな様子で、改めて助けられてよかったと思わされた。

 キャスの家に帰ると、カーラさんも帰っていて久々の再会に喜びをあらわにして抱擁を食らってしまった。

 うーん、お母さんって感じだなあ。

 二人が揃った所で、ナディーネ達の一件を簡単に説明して俺は西の方へ移動する事を伝えた。

「はぁ……、ゼン君また正義の味方してるんだね」
「善行は良いけど、悪い奴は居るんだから、騙されるんじゃないよ?」

 二人の反応に俺は苦笑するしかなかった。

 話も一段落付き、以前に注文してあったキャスとカーラさんの服をプレゼントすると、新品の服なんて本当に久しぶりらしく、大変な喜び様だった。

「キャス姉、それ着てランドルさんとデートしなよ」
「はぁっ!? そんなんじゃ無いし! 違うし!」

 ランドル君はまだこの村に滞在しているらしく、先程話をしてきたフラニーともずっとこの話題が尽きなかった。
 俺がこの村を出ていた数か月間にあった進展と言えば、一緒に森の中へ入って狩などをすると言う、お子様かと言いたくなる程度の事しか起こっていなかった。
 狭い村でカーラさんの公認を受けているランドル君は、村の人たちのバックアップを受けながらも少しずつ前進しているのだが、こじらせた童貞力は全てを薙ぎ払うかの如く、イベントの進行を妨げていたと言う。

 キャスもキャスで、村全体の雰囲気を感じ取っている様で、恥ずかしさからか意地になってしまい、こんな反応を返す様になってしまっている。

 まあ、幾ら村が優秀な魔法使いを確保したいとしても、村全体でそんな事をしていれば意固地になっても仕方ないか……。

「ランドルさんは駄目なの? 嫌なら早めに言った方が良いよ」
「い、嫌じゃないわよ。ただ、周りが嫌なの! 二人で歩いてれば、ガキ達にからかわれるし、大人だって早く子供作れとかいうのよ!? 安心できるのが森の中だけとか、どうなってるのよこの村は……」

 申し訳ないが笑ってしまったが、キャスも満更じゃないみたいだし、時間を掛ければ何とかなりそうな感じだな。

 今日は家に泊まれと言われたのだが、宿にナディーネ達が居るので悩んでいると、ポッポちゃんが「私が知らせて来るわ!」と、元気いっぱいに飛び跳ねていた。
 俺は木の板に明日の朝に合流すると書き、ポッポちゃんに手渡すと、それを咥えて物凄い勢いで走り去っていった。

 お使いまで出来ちゃうとかポッポちゃん凄い!

 その日は夜まで話をして、俺もキャスをからかう為に、生まれてきた子供のお守りにでもしてねと、地竜の鱗を一枚プレゼントしてみた。
 キャスは最初は怒っていたが、次の再会が何時になるか分からない事が分かっているので、一枚で小型の盾位にはなりそうな大きさの鱗を、俺から受け取り大事そうに胸に抱えてくれた。

 次の日は朝早くに俺は宿に戻り、ナディーネ達と合流すると早朝から村を出発する事にした。
 見送りに来てくれたキャスとカーラさんと共に、宿屋に泊っていたランドルも加わり別れの挨拶をした。

「ランドルさん、キャス姉脈有だから、森の中で押せば行けると思うよ」
「なるほど……、最後までありがとうゼン君。君は俺の愛の天使だったみたいだね」

 最後にちょろっとランドルに発破を掛けてみようと思ったら、何だか気持ちが悪い事を言われた。その甘い言葉をキャスに向けてみれば意外と簡単に落ちそうなもんなんだけどね。

 見送りの三人が手を振ってくれる中、俺達は次の目的地へと向かう事にした。

 そう言えば、あまり考えずに言ってみたけど、森の中で押すの意味分かってるよな……?

 何だが嫌な予感がして来るのだが、振り返ってもブロベック村は既に豆程度の大きさになってしまっている。

 まあ、それはそれで有りか。

 俺は余り気にしない様前を向いて、一面草原の光景を見ながら進んでいったのだった。
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