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アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と- 作者:一星

第三章 里での生活

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十七話 奴隷商

 俺はコーソック村から出て、その日の日暮れまでには何とか、息も絶え絶えになりながら、イヴリンの街までたどり着く事が出来た。
 イヴリンの街に初めて来た時の様な、長蛇の列は見られなく、門の前には少数の人達の姿が見えるだけだった。

 街に入る為に通行税と簡単なチェックを受ける為に、ポッポちゃんを抱えて、門番に近づくと声を掛けられた。

「この時間に馬車は来ないはずだが、坊主どうやってきたんだ? って汗びっしょりじゃねえか、風邪ひくぞ」

 壮年の門番が俺の姿を見て驚いている。

「ずっと走ってきましたよ。お蔭で汗だくですよ」
「お、おう、そうか。それは大変だったな。でも危ないからやめとけな? うむ、税は確かに頂いたぞ。ん~、危ない事はしないよな? 良いぞ通って」

 門番は俺の容姿を見て簡単に通してくれた。物凄く甘い気がするのだが、子供相手に厳しくするのもおかしい話なんだろうか?

 俺にとっては都合が良いので、素直に通してもらいまず俺はこの街の冒険者ギルドに行く事にした。
 冒険者ギルドへは既に一度登録時に来ているので、迷わず向かう事が出来た。

 ポッポちゃんは初めて来た街に興味津々のご様子なのだが、今回は色々と見て回る気は無いので、我慢してねとポッポちゃんに言うと「いーのよ。主人の用を済ましましょ?」と、答えてくれた。

 何て聞き分けのいい子。うちの子凄い。

 冒険者ギルドの扉を開け中に入ると、以前朝に来た時よりかは幾分人の数が多い気がする。俺は空いている受付のカウンターまで行き、職員に声を掛けた。

「すみません。素材の買い取りして欲しいのですが、大きい場合ってどうすればいいのですか?」
「あー、この建物の隣りに倉庫があるからそこに運んでくれ。んっ? あぁ、パーティーのお手伝いか。偉いな」

 話の途中で顔を上げ、俺の事を見た職員が勘違いをしているが、それは放置して俺は一度ギルドから出て、隣にあると言う倉庫に向かった。
 隣りには、大きな扉を開けたままの倉庫が有り、馬車などがそのまま入れる様になっている様だ。
 俺は中に入って行き、人を探して声を掛けてみた。

「すみませーん。誰か居ませんか?」

 倉庫の中は真ん中に広い空間を持ち、壁際の棚には解体する為に使うであろう道具が並んでいる。
 死体を扱う場所だけに少し匂うが、それは当然の事だし俺もいい加減慣れているので、気にはならなかった。

 俺が声を掛けると、倉庫の中の区切られた場所から、一人の男性がこちらに向かってきた。

「何だ坊主。ここは遊び場じゃねえぞ」

 一目見ただけで肉屋と呼ばれそうな恰好をした、恰幅の良い男が俺に声を掛けてきた。

「魔獣の死体を売りたいんですが、ここに運べばいいんですよね?」
「おぉ、済まねえな坊主、お使いだったか。そうだぞここに持ってこさせてくれ」

 男はそう言うと、用は済んだと思ったのか倉庫の奥へと帰って行こうとしたので、俺はマジックバッグの中から、キマイラの死体を倉庫の真ん中へと取り出した。

「すみません。これお願いします」
「ひぃっ!」

 俺がキマイラを出した瞬間は見ていなかったが、俺に声を掛けられ振り返った事で目に入ったキマイラの死体に、男は吃驚して面白い声を上げた。
 まあ、振り向いたら頭部ぐちゃぐちゃのグロを見せられたら、当然そうなるか。そこまで驚かす気は無かったのだが、少し悪い事をしてしまった。

「ぼ、坊主どこから出しやがった!」
「買い取ってもらえるんですよね?」
「あ、あぁ。買い取るがこれは何だ?」

 男は未だ死体の正体に気付いてないのか、俺が出したキマイラを検分すると、死体の正体に気付いたのか、驚愕の声を上げている。

「キマイラじゃねえか! こんな化け物をまさか坊主が……」
「幾らになりますかね? ちょっと急いでるので早めにお願いします」
「あぁ、分かった。ちょっと待ってろ」

 余裕があるのならば、このリアクションを楽しむのも良いのだが、今はそんな気持ちにはなれない、兎に角早く終わらしてしまいたい気持ちが一杯なので、少し強い口調になってしまった。

 男は一度冒険者ギルドに行くと言い、数分で戻ってくると一人の男性を連れて来ていた。

「本当なのか……」

 連れてこられた精悍な顔付きの男は、キマイラの死体を見てそう呟いた。

「あの、早くして欲しいんですが、買い取らないなら帰るんで決めて貰えますか?」

 俺が苛立ちからそう言うと、男は俺の姿を見て目を見開くが、直ぐに気を取り戻したのか、俺に向き合い話し始めた。

「すまんな少年、この状況は中々珍しいのでな。この死体は当然買い取らせてもらうぞ」

 男がそう言うと、倉庫に最初から居た男が、キマイラの死体を調べ始めた。

「すみません。急いでいるので助かります」
「うん、良いんだよ。して、この死体は如何したのかな? 査定するにはまだ時間が掛かる。それまでは話を聞いても良いのだろ?」

 男はそう言い、俺に倉庫の端に置いてあった椅子を用意すると、座る様に促してきた。

「北の森で拾いました。周りには亜人の死体も有ったので、争って死んだのだと思います」
「なるほどな、依頼に有ったキマイラの死体かも知れん。亜人と争ったならば人の被害は無くて良かったか。で、どうやってこれ程の大きさの死体を持ってこれたんだ?」

 男は納得をしながらも俺に探りを入れてくる。
 俺は犯人でも無いのだ、別に言う必要は無いと判断してこう返した。

「秘密でいいですか? 別に言わなくても良いんですよね?」
「ははは、確かにそうだな。冒険者は秘密がいっぱいだからな」

 俺の返しに男は豪快に笑いながら答えた。
 答えながらも俺の腰に付いたマジックバッグに一瞬視線を向けた所を見ると、予想は付いているのだろう。

「少年。マジックバッグより、腕輪にした方が盗まれ難くて良いぞ。常に体に瞳石を付けとけば、何時でも出し入れが出来るし便利だ。だが、最初は酔うから気を付けるんだぞ?」

 うむ、やっぱりバレている。だが良い事を聞いた。査定が終わるにはまだかかりそうなので、俺も質問をしてみる事にした。

「腕輪って簡単に作れるんですか?」
「ん? ミスリルさえあれば簡単だな。ほら俺も付けてるだろ。だが指輪サイズで大金貨一枚もするんだぞ。あっ、あの死体売れば手に入るか。ははは」

 うーむ、今持ってるインゴットで十分すぎるな。最低三つは作れちゃうぞ?

「そうそう、少年。ギルドカードの提示を求めてもいいかな? まあ、買い取るなら絶対見るんだ、今出してくれれば手間が省けるぞ」

 ギルドカードは村でも亜人討伐の報酬をもらう時に、何時も出していた。基本的にギルド員からしか買い取りはしないので、当たり前の事なのだ。
 俺は隠す必要が無い事が分かったので、直接手にギルドカードを取り出して、男に渡した。

「ゼン君か、宜しくな。俺はギルドマスターのホーマーだ」
「よろしくお願いします」

 何となく偉い人だとは分かってはいたが、この街の冒険者ギルドのトップだったか。
 最初に舐めた口を聞いてしまったが、気にして無さそうでよかった。

 ホーマーさんはもう俺に質問をする気が無いみたいで、キマイラの死体を見ながらニヤニヤとしていた。

「なんでそんなに嬉しそうなんですか?」
「だって目の前に素材が転がっているんだよ? どう活かしてやろうか楽しみじゃないか」
「食べるんですか……?」
「こんな損傷が激しい物食ったら腹壊しそうだわ。そうじゃなくて、武器や防具になるだろ。キマイラは普通、森の奥深くに居るから、中々お目に掛れなくてね」

 そんな話をしていると、査定が終わったのか男がこちらに戻ってきた。

「大金貨二枚って所だな。頭二つが無いのが痛い。あれば後二枚は乗せられたんだがな」

 一つは俺が金属の杭で押しつぶしたし、もう一つはオーガ達が引っこ抜いたので、これは仕方が無い。
 相場が判らなかったので、取りあえずキマイラだけを出したのだが、これでは全く足りない気がする。

 俺はマジックバッグから更に死体を取り出していく。

「おいおい、本当かよ」
「坊主、一体なんなんだ……」

 二人が驚く中俺は谷で殺して回収していた死体を積んでいく。
 オルトロス、クァール、アシッドサーペント、ロックリザード。
 全て森の奥に生息する魔獣だ。

「すいませんが、これもお願いします」

 二人が顔を見合したが、ややあってホーマーが頷くと、また査定が始まった。

「全部で大金貨七枚だな。キマイラと合わせると九枚だ。殆どが一突き二突きで死んでるみたいだが、どうやったんだ?」
「企業秘密です」

 俺は頭を掻きながら俺とホーマーの元へ戻ってきた男の査定額を聞き、答えをはぐらかして適当に答えた。
 相手も俺が答える気が無い事は分かっているみたいなので、それ以上は聞いては来なかった。
 金はこれ位あれば十分だろう。
 俺はそう思い、査定金額を受け入れる事にした。

「じゃあゼン君、付いて来てくれ。支払いをする」

 ホーマーはそう言いながら、倉庫から出て俺に付いて来るよう促す。
 結構な金額になったので、おいそれとは渡せないのは分かっているので、素直に従う事にした。

 外に出ると辺りは暗くなり始めていた。時間が心配になるが、ホーマーに付いていくと、そのままギルドの二階に案内され、奥まった場所にある部屋へとホーマーが入って行くので、俺もそれに倣い付いて行った。

「座ってくれ」

 ホーマーは部屋にあるソファーに手を向けそう言った。
 部屋に入って程なくすると、一人の女性が部屋に入ってきて、ホーマーが査定をしていた男から受け取った木の板を受け取ると、驚きながらも部屋から出て行った。

「さて、普通はそれ相応の実力者が狩ってくる魔獣達だが、それに関しては聞く事はしない。どうせ答える気は無いのだろ? 君は国家に所属もしていないし、強制力は無いからな」

 俺が面倒な事にはなら無そうで、心の中では一安心をしていると、ホーマーは続けてこう言った。

「だが、君ほどの逸材を、この国に所属するギルドのマスターとしては見逃す訳にはいかない。どうだろうゼン君、君が望む条件を出す。この国でやっていかないか?」

 前言撤回だ。とてもめんどく臭い事になりそうな予感がする。俺は丁重に断るべく考えてから答えた。

「まだ僕は子供ですから国とか判りません。大人になったら誘ってください」
「うーん、そう言われると困るな。君ならやれると思うんだが、少しだけだから、ね? ちょっとだけ体験でやって見ないかい?」

 僕子供だから作戦に、先っぽだけだから作戦で返してきたか。正直面倒くさい。

「勧誘はまた今度でお願いします。今はそれほど余裕が無いので、余りしつこくされると、二度とこの街に来たくなくなります」
「分かった、分かった、もう止めとくよ」

 俺の完璧な拒否にホーマーは少し驚いたが、笑いながら返してくれた。

「俺としては十分に良い素材が手に入ったから、もう満足してるからね。おっ、来みたいだな」

 ホーマーがそう言うと部屋のドアが開けられ、手に布の袋を持った先程の女性が戻ってきた。
 無言でその袋をホーマーに渡すと、女性は部屋から出ていく。

「じゃあこれが支払だ。あれだけの素材を一度に持ってきてくれたから少しだけおまけをして、ランクも上げておこう。本来は依頼をクリアーしてテストを受けるべきだが、それも必要ないだろうからな。帰る前にカードの交換だけして置いてくれ。受付に言えば分かるからね」

 俺は渡された袋を受け取ると、中に大金貨九枚が入っている事を確認してから、マジックバッグに収納して席を立った。

「色々と失礼な事を言って、すみませんでした。最後にこの街の奴隷商の場所を教えてください」
「へっ? 君は豪快だな。金を手に入れたら次は奴隷か……。大人として悩む所だな!」

 ホーマーはそうは言いながらも、丁寧に奴隷商の場所を教えてくれた。俺は礼をしてから部屋を出て、ギルドの受付でカードの交換をしてから表に出た。
 新しく貰ったカードは銀色をしていて、それに伴いランクもシルバーへと上がる事になった。
 俺はカードを一瞥してマジックバッグに収納すると、急いで奴隷商への道を進んでいった。

 奴隷商の場所は俺が以前に泊まった高級宿の近くにあり、立地がかなりいい場所にある。扱う商品の金額を考えれば当たり前で、来る客は大体は金持ちなのだから当然なのかもしれない。

 陽は既に落ち夜の闇が街を覆い始めているが、この時間でもまだ奴隷商は開いているらしく、俺が査定が終わった時に感じた、若干の不安は解消された。

 程なくしてたどり着いた奴隷商は、綺麗な佇まいの一見店とは思えない作りをした建物だった。
 この辺で商売をしていると普通の事なのか、店の前には警備の男が二人立っていた。

 俺が建物のドアに近付くと、警備の男が俺の出で立ちを確認してから声を掛けてきた。

「ここは奴隷商ですが、何か御用ですか?」

 今回はちゃんと靴も履いてるし、まともな格好をしているので、確りとした対応なんだな。

 俺は警備の男に奴隷を購入しに来た旨を伝えると、その男はもう一人の警備の男に目配せをして、ドアを開けさせた。
 中に案内されるとそこは、以前利用した高級宿よりかは落ち着いた作りをした内装で、あまり飾り気が無い印象を受ける。

 俺が通された部屋の椅子に座り、ポッポちゃんを膝の上に乗せて撫でていると、大分肥満気味な男が従者であろう若い男女を連れて姿を現した。
 俺が席を立ち出迎えようとすると、男は慌てて俺に声を掛けてくる。

「お客様、そのままで結構でございます」

 男は慌ててテーブルを挟んだ俺の前の席まで来ると、従者ともども深々と頭を下げ挨拶をした。

「私はこの商館の主をしております、ガレスと申します。本日はお越し頂き、誠に有難うございます」
「ゼンです。宜しくお願いします」

 子供の俺にも何の違和感なく頭を下げるこの姿勢に、俺は思っていた奴隷商とは違う印象を受けた。
 もっと態度がデカい、厳ついおっさんが出てくるかと構えていたので、拍子抜けしてしまった。
 まあ、この世界は確立された身分制度もあるから、俺がどこぞの貴族の子でもおかしくは無い。そんな問題起こしそうな奴は上に上がれないか。

 俺はガレスと名乗った男をそう評価していると、彼が口を開く。

「本日は奴隷のご購入とお聞きしましたが、どの様な者をお求めでしょう?」
「一六才位の女性で、容姿が優れている者を探しています」
「ほう、愛玩用で宜しいですかな? その年齢ですと、戦闘に向いているのは中々おりませんので」

 ガレスはそう言い、後ろ控えていた従者の男に小声で何かを告げると、従者の男は部屋から出て行った。

「直ぐにご用意させますので、暫くお待ちください。さて、ゼン様は奴隷の購入は初めてで御座いますね?」
「分かるのですか?」
「何となくでは御座いますが、若干緊張しているご様子なので、そう推測させていただきました」

 たっぷりと脂肪の付いた顎に生えた髭を撫でながら、ガレスは俺にそう言う。
 人を扱う商売人の感や経験と言う奴なんだろうか、余り表に出している気は無かったのだが、簡単に分かってしまうらしい。

「ご用意できるまで、簡単なご説明をさせて頂きましょう」

 村での生活だと奴隷の話なんて、具体的な事は聞けないので正直助かると思い、俺はガレスから説明を受けた。

 詳細な相場や扱い方に解放方法等、俺が知らなかった事が分かる。一番の収穫は相場だろう。俺が求めた特徴だと、大体大金貨四枚程度が必要らしい。
 十分に足りている事に俺は安堵すると、ガレスも値段を聞いた俺の反応を見ていたのか、一段と笑顔になった。
 何でも無いように対応してたけど、このおっさんもちょっと心配してたらしい。

 説明は続き、それが終わる頃を狙ったかの様に、先ほどの従者が部屋に入ってくる。その後ろには俺が指定した条件に合っている女性が、合計五人連れられてきた。
 人族三人にエルフと獣人、どの子も一定以上の容姿をしている。
 どの子の顔も暗い様子なのだが、俺の姿を見ると想像していた買い手とは違ったのか、僅かながら表情が晴れている。

 俺は連れられてきた子達を、買う事が出来ると言う事実に、激しく心が揺さぶられた。子供で性欲が薄い今だから耐えられるのだろうが、買えるだけの金を持ち、探し出せば自分の好みの女性を買えると言う事の意味を実感してしまったのだ。

 一瞬思考を奪われてしまったが、そんな事よりもナディーネがこの中にいない事の方が問題だ。見間違うはずも無く、居ない事が分かり、自分の顔が苦いような表情になっているのを分かってしまう。

 やばい居ないぞ……。
 どうする、ガレスに事情を話してみるか?

 ……いや、幾ら人が良さそうでも相手は商売人だ。いらん情報をこの段階で与える意味は無い。

 そう言えば、教育とか何かと村長が言ってたな。
 もしかしたら、まだその段階で売りには出していないだけなのか?

 俺が連れてこられた女性達を、見る事なく考え事をしていると、ガレスが話しかけてきた。

「お気に召さなかった御様子ですね。もう少し範囲を広げてお連れしましょうか?」
「いえ、それより同じような条件で、教育中の子は居ないのですか?」
「ええ、居りますが、その様な者はまだ自分の身に起きた事を、受け入れられていない事が多く、余りお見せできる状態では無いのでございます」
「私は気にしないので、一度見せて貰えないでしょか?」

 俺がそう言うとガレスは、眉をひそめて俺の事を見つめる。
 その瞳を俺が見つめ返し、どれほど経っただろうか、ガレスは目を閉じると席を立った。

「ご案内いたします」

 その一言だけを言うとガレスは部屋から出ようとする。俺はそれに続くと従者の女性がその後に付いた。

 連れてこられたのは建物の奥側にある一角で、そこに至るには鉄格子を抜ける事になった。物々しい感じだが、奴隷は逃亡できない事を考えると、諦めさせるように心理的な効果を狙っているのかも知れない。
 絶望の中で鉄格子を潜るなんて、想像しただけでも嫌になってくる。

 暗い通路を抜けると監視の男だろうか、ガレスに気づくとこちらに歩いてきた。ガレスが案内をする事を告げると、監視の男は何も言わずに先頭を歩き、薄暗い通路を歩いて行く。

 通路をまっすぐ進むと、両脇の壁が鉄格子に変わり、小分けにされた部屋の姿が見える。合計四部屋に男女が分けらており、年齢も子供から壮年までと幅が広い。
 俺が女性が入れられている側の、部屋の中を見ようと思い近づくと、監視の男が壁に掛けられていた燭台を手に取り奥まで見える様にしてくれた。

 一つ目の部屋を見渡してみるが、そこには獣人の女性が数人いるだけだった。確かに俺が言った特徴の子が数人いる。
 俺は一つ深呼吸をしてから、もう一つの部屋を覗きこむと、そこには三人の影が見えた。

 一つの大きな影に二つの小さな影が寄り添っている。
 監視の男がその部屋を燭台で灯すと、その姿がはっきりと見える。

 居た……。

 目を閉じ両腕に子供を抱え、守る様に身を固めているナディーネがそこには居た。
 俺は自分の呼吸が強くなる事を感じ、そして気づかれない様にため息を吐くと安堵を覚え、そして気合が込み上げてくる事を感じる。

「ガレスさん、この子を買います」

 俺がそう言うとガレスは眉間に深い皺を刻んだ。
+注意+
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