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アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と- 作者:一星

第二章 人里へ

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八話 女冒険者

 コリーンちゃんを肩車しながら縄張りを歩き回り、片っ端から鑑定して回る事数時間、この森は中々使えそうな植物が有る事に気付いた。
 ヒノキ、スギなど俺が知っている木材になる木や、少し開けた場所で自生していた、麻やキイチゴなど食べたり使えたり出来そうな物もあった。
 他にも気になる植物は有ったので今後の参考に覚えておこう。硬貨があると分かった以上この世界にも経済があるって事だ、もしかしたら儲け話につながるかも知れない。

 朝に集落を出て森の中で食事を取り、陽が暮れる前に集落へ戻る。戻ったらゴブ太君との槍の訓練。そして武器の開発。
 ここ数日間はこれを繰り返し行う日々を過ごしている。

 コリーンちゃんは偶に両親が恋しいのか泣いてしまうのだが、それでも大分慣れてきたようで、最近ではポッポちゃんとコボ美ちゃんを引き連れて遊びまわっている。
 ポッポちゃんは念の為に、監視としてコリーンちゃんに付ける事にした。本人も仕事と遊びが両方出来て機嫌も良くなるってものだ。
 そんなコリーンちゃんもまだオークは怖いらしくて、自分からは近付こうとはしない。デカいし太いし顔もおっかない。子供からしたら怖いよね。

 集落を中心とした伐採は一応の終わりを見せている。大体半径二百メートルまで拡大された広場は、多数の小屋を持ち、周りを柵で囲み、それでも使いきれなかった木材が所々に積んである。

 伐採を中心とした作業をしていたボーク君も、やっと手が空いたからか新しい縄張りを満喫している様だ。

 そうそう、老コボルトに探させていた磁器に向いている土だったが、とうとう見つかった様で先日俺の元に小瓶型の磁器を持ってきた。試験管の形は難しかったらしく、この形になったのだがそれは問題ない。要は使えれば何でもいいのだ。
 持ってきた小瓶は水を通す事無く、コルクの蓋をすれば密封も出来る。いい仕事をするじゃないか。

 っておい、コルク何てどこにあったんだ後で教えてくれ。

 これでポーション作りも出来る様になったので、今日は昼ごろに戻ってきてからポーションを作り続けている。
 ポーション作りも八割方が終わった頃に、一休みしようとコリーンちゃんとコボ美ちゃんの相手でもしようとか思ていたら、ボーク君が何かを背負って小屋に入ってきた。
 コリーンちゃんがビビっているのを見たボーク君は、少し悲しそうな顔をしたが直ぐに何時もの顔にも戻り、肩に担いでいたものを俺の前へ降ろした。

「ボーク君、これは一体なんだ?」

 そう俺が尋ねると、ボーク君はフゴフゴと、「人間四人来た。こいつ置いて他のは逃げた。こいつ向かってきたから殴ったら寝た」と言い。続けて「ボス雌好き」と、言い放ち小屋から出て行った。

 そう俺の目の前には、歳の頃二十歳位の女性が倒れているのだ。

「キャスお姉ちゃん!」

 コリーンちゃんが倒れている女性に近づき、体を揺すりながら名前を呼んでいる。どうやら顔見知りの様だ。

「コリーンちゃん、このお姉ちゃんの事知ってるの?」
「うん、キャスお姉ちゃんなの。一緒の村なの」

 なるほど、コリーンちゃんは利発な子だなぁ。
 兎に角、この姉ちゃんが起きない限りは話が進まない。外傷は見られないが、ここは一発ポーションぶっ掛けでもしてみるか?

 そう考えたのだが、どこに掛ければいいのかも分からないし勿体ないから辞めておいた。死んではいない様だし放って置けばその内気が付くだろうと思い、残りのポーション作りを再開した。
 ポーション作りの作業が終わってもまだ目を覚まさない。もしかして当たり所が悪くて死……は無いな、ちゃんと探知で気配の察知が出来る。
 仕方が無いので女性に近づきポーションを、無理やり口を開き流し込んみる。すると、ゲホゲホと咳き込みながら女性は目を覚ました。

「えっ?」

 俺の腕の中で目覚めた彼女は、俺と目を合わすとまず驚きの声を上げた。

「えっ? 何っ?」

 ぐるぐる辺りを見回すが、周りを見回してもまだ混乱しているらしく事の理解が出来ていないようだ。
 見回す視線がコリーンちゃんを捉えると女性はこう言った。

「コリーン! あんた無事だったのね!」

 女性は俺の腕の中から跳ね上がり、コリーンちゃんを抱きしめる。その顔は本当に心配していたのだと分かる優しい顔をしていた。
 女性がふと、コリーンちゃんの隣に座っていたコボ美ちゃんを見ると体を大きくビクつかせ一言言い放った。

「亜人!」

 彼女の体が強張り、コリーンちゃんを守る様にコボ美ちゃんから距離を取る。だが、ここは小屋の中。直ぐに壁際に追いやられ行き場を失う。

「お姉ちゃん痛いよぉ」
「あんた何言ってるの! 亜人が居るのよ!」

 強く抱きしめられたコリーンちゃんが、抗議の声を上げるが、女性はそれどころでは無いと更に強く抱きしめる。
 このままではコリーンちゃんが可哀そうなので、俺は立ち上がり女性の前に進み出る。

「お姉さん、あのコボルトは危険じゃないですよ、取りあえず今は安全ですから落ち着いてください。コリーンちゃんがやばい顔してます」

 俺が諭すようにそう言うと彼女は少し間の抜けた顔をして、魂が抜けかかっているコリーンちゃんを見ると抱きしめていたその手を緩めた。
 危ない! もう少しでコリーンちゃんを失う所だった!

 少女の危機も救った所で、もう一度女性と向き合い俺はこう言った。

「取り敢えず、お話ししましょうか?」

 容疑者に問い質す様なもの言いだが仕方が無い。これから質問が始まるのだ、尋問と似たようなものだろう。


 お互い名前を教え合い、彼女がここに運ばれてきた理由を話すと、俺と座って向き合う女性――キャスは自分が何故ここまで来たかを話し出した。

「私はこの子、コリーンを攫った奴らを追って、仲間と森に入ったの。最初はこんな深い場所まで、来る気は無かったんだけど、痕跡を追って進んでたら大分奥まで来ちゃってね。これ以上は無理と判断したんだけど、帰り道で魔獣に襲われちゃってね。それから逃げてたらこんな深い場所まで入り込んだって訳よ」

 俺の渡した水を飲みながら、一気に話してくれるキャスお姉さん、見た目はボブカットの明るい髪の色をした、可愛らしい顔をしている女性だ。人攫いを追っていたと言うだけあって、一部金属を使った革鎧と帯剣をしている。体の一部がやたら目立つのだが、まあ今は関係ない。
 言ってる事に、幾つか疑問があるので一つずつ聞いていこう。

「この森を抜けると、どこかに出るのですか?」

 人攫いがこの森をどう進んで、抜けるつもりだったのか気になった。もしそんな道が有るのならば、使わない手は無いからだ。だがそれも直ぐに否定の答えが返ってくる。

「人攫いの野郎はコリーンを攫ったのがばれて、この森に逃げ込んだのよ。こんな危ない所に連れてくるなんて殺してやりたいわ!」

 なるほど、別にこの森を通ってどこかに行くつもりでは無かったのか、俺の縄張りに入ったのも彼女らに追われて逃げていたのだろう。
 てか、この姉ちゃん物騒な事言うな。この世界の人って過激な人が多いのだろうか?

「あっ、人攫いならもう死んでますよ。僕、埋めましたから」

 コリーンちゃんを助けた時の事を簡単に教えると、キャスは少し驚いた様子を見せるが、直ぐに質問をしてきた。

「人攫いは三人居たはずなんだけど、他は見なかったの? いや、それより亜人をどうやって……」

 ほう、人攫いは三人組みだったのか、見捨てられたかはぐれたかしたのだろうか。何か亜人が何だとか言ってるけど、大方どうやって従えてるのか考えてるのだろう。言葉が通じなきゃ俺だって無理だっただろうし、そりゃ疑問にもなるか。

 それは追々話すとして、それよりもまだ聞きたいことが有る。

「お姉さん、村って何処にあるんですか?」
「えっ? 村? あぁ……村ならこの森を南に抜けた先にあるのよ。ここからだとたぶん、歩いて六日は掛かるけどね」

 考え事をしていた所を悪いが、俺の質問には答えてもらう。
 しかしこれは良い情報を聞いた。南に進めば森を出られるって事だし村もある。俺の目標が定まった感じだ。

「そんで、魔獣って何ですか?」
「えーっと、キマイラって知ってる? アレに追われちゃってね。命からがら逃げたのよ。幾らこの森が危険だと言われてても、あんな化け物が出るなんて聞いたことないわ」

 キマイラって確かに頭一杯ある奴だよな。それはキメラだっけ? それよりも、化け物と言われるレベルの魔獣か。西の蜘蛛とトロールが滅んでるのもそいつの所為か?
 ん……、魔物と魔獣ってどう違うんだ?

 俺が新たに得た情報を思慮していると、今度は俺が質問をされる。

「ゼン君、だったわよね。あなたは一体何者なの?」

 う~ん、どうしよう。何者何だと言われたら、何て答えればいいんだよ。何がセーフで何がアウトなのかも分からねえ。ここは適当に答えとくか。

「気が付いたらこの森にいましてね。人里を探していたんですよ」
「お母さんとお父さんは?」

 ぐっ、やっぱり来るかその質問。

「遠い所にいます」
「あっ……ごめんね?」

 ははは、俺は嘘はついてない。俺の親はこの世界から見たら遠くである異世界に居るからな!
 まあ、勘違いしてもらおうと思って言ったんだけどね。こう言えばあまり突っ込んでこないだろ。

「まあいいわ、そんな事よりも何で亜人と一緒に居られるの? 私も捕まったはずなのに、無事何て信じられないわ……」

 ゴブリンもオークもコボルトも、亜人というカテゴリなんだな。この言い方だと、余りいい関係とは言えなそうだな。無事とか言ってるけど、もしかしたらエロゲー的な無事か?

「何故か彼らと話すことが出来ましてね。いつの間にかボスになってたんです」
「はぁ?」

 うむ、人間の認識でも亜人と会話をする事はあり得ないのか。話せば結構いい奴らなんだけどなぁ。
 まあ、実際話せる所を見せてみるか。

「コボ美ちゃん、こっちおいで」

 俺はコボ美ちゃんを呼び寄せる。

「コボ美ちゃん、そこで止まって」
「一周回って」
「手を上げて、そう両手」
「コボ美ちゃん、お座り」

 俺が連続で指示を出すと、コボ美ちゃんはしっかりと答えてくれた。可愛い、後で肉でも上げよう。復帰しているコリーンちゃんも、拍手をしてくれている。

「ね? 分かってるでしょ?」

 俺はキャスに振り向き、つい自慢げにそう言ってしまった。

「は、はは……信じられないわ」

 おいおい、これってそこまでの事なのかよ。思いっきり引いてるじゃねえか。この世界で亜人の扱いって完全に別の生き物って感じなのか?

 この世界における彼ら亜人の扱いが、まだ分からないがこの反応を見る限り、いい方向ではないのは間違いない。だが、この姉ちゃんに遠慮する何て事はありえない。
 俺はキャスが持ってきた情報を、各種族の代表達と協議する為に、表に居た警備のゴブリンに召集命令を伝える様命じた。

 種族の代表が集まるまで、更にキャスと会話を重ね、更に幾つかの事が分かってくる。

 まず、この森はヘルヴァン山脈の麓に広がる森で、多数の領に跨って存在しているらしい。この集落のある場所は、シーレッド王国のウェロー領という所に所属すると言う。だが、森は深く亜人や魔獣が多く住むこの森は、ここ十数年で近隣に村が作られた為、今だ未到達地が多いらしく調査も進んでいないので、無理に軍の派遣なんかも行われていないので手付かずの場所が大半だと言う。
 要するに土地の所有権を主張しているが、開発は出来ていないって事だろう。

 キャスは麓の村で育ち、冒険者として働いていると言う。冒険者と言っても、キャスの場合は完全に地元密着で、森の浅い所に出るゴブリンやスライムなどを狩ったり、森に生えている食べられる草などの採取や、付近の村に荷物を届けるなどで生計を立てているとの事だ。
 歳も若そうだし、駆け出しって所なんだろう。

 今回の救出部隊は、最初は村の農民など合わせて二十を超える数が居たらしいが、森の深くまで人攫いの痕跡を追うたびに、段々と村へ戻って行ってしまったらしい。そして、キマイラの襲撃で何人かの冒険者は死んだらしい。キャスにしても明らかに安全マージンを超えた深さに侵入していたらしく、顔見知りのコリーンちゃんを如何しても助けたかったのだとが分かる。
 優しい子なんだな。俺が大人の体だったらほっとかないぞ、こんな良い子。おっぱいも大きいし。

 俺の質問にも、結構丁寧に答えてくれるキャスとの会話は、ゴブ太、ゴブ元、老ゴブ、ボーク、老コボルトが、小屋に入ってきたところで終わった。
 キャスが明らかに怯えているが少し我慢してもらおう。コリーンちゃんと言えば流石になれている。先程からコボ美ちゃんと謎の遊びを繰り広げていた。

 集まった代表達に説明をすると、皆一様にキマイラの事に食いついてきた。どうやら相当な魔獣らしい。老ゴブと老コボルトの言う事には、確実に北から下りてきた魔獣で、俺らの縄張りの西側は、キマイラの襲撃を受けた可能性が高いと言う。
 その襲撃がどこまで続いているかは分からないが、人間がここまで来れたのはキマイラが暴れた結果、縄張りの空白地が多数出来た事が原因だと考えられるとの事だ。
 確かにキャスの話を聞く限り、キマイラに追われて森を北上しても、亜人や獣などは殆ど見なかったと言う。

 今の所は縄張りの西側に居る可能性が高い。そんなおっかない魔獣に遭遇はしたくないので森を出るならば南か、東に一度出てから南に向かうのがいいのだろう。

 ここの集落の事を加味して考えると、進行方向は南以外ありえない。南の勢力を排除しない事には、この縄張りの安全は無いからだ。オーガとゴブリンのどちらかが勝てば、次の矛先がこちらに向かう事は可能性としてかなり高い。
 話に聞く南方の戦力は、俺を抜いた場合この縄張りを確実に上回っている。
 俺は何時かこの群れを抜けるのだ。それを想定して考えなくてはならない。

 例え俺が居たとしても、真面に当たれば相当な被害が出るだろう。俺だって百を超えるゴブリンに囲まれたら死ぬのは間違いない。十程度だったらいけそうだけど、それ以上は距離が無ければ俺にはどうしようもなくなる。
 それならば、南が争いをしてる最中に襲うのが一番だ。俺らの被害が少なく勝利を得られることが一番の理想なのだから。

 南さえ排除してしまえば、相当な縄張りを持つことが出来る。縄張りの広さは食糧の確保で有利になり群れの強さに直結する。
 今も既にこの群れを増やす為に、各種族とも連日子作りに励んでいるらしい。ゴブリンに至っては、後三ヶ月もあれば数が倍になるとの事だ。繁殖力高すぎるだろ!

 ちなみに東は縄張り争いの心配は無いらしい。何故なら東に居るリザードマンは、多量の水が有る場所以外には手を出さないからだ。

 そう考えれば考える程、今後は南の戦いに勝利する事が最優先課題だ。最早俺にこの群れを見捨てて行動するという考えはない。

 考えも纏まり、俺と三種族の話を断片的にだろうが聞いていたキャスに俺は尋ねる。

「んで、お姉さんはどうする?」

 話し合いを理解できるのは俺の言葉だけだが、大体は理解しているであろう彼女の答えは。

「お任せします」

 との事だった。まあ当然だろう、既に一人では帰れない場所に居るのだ。最初から選択肢何て無いんだ。もし無理にでもコリーンちゃんを連れていくと言ったら、俺は力ずくで止めるしね。この姉ちゃんが自分で死にに行くのは、勿体ないけど仕方が無い。だがコリーンちゃんは別だからね。

 話は纏まった。これで迷うことなく作戦を実行する事が出来る。
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