不器用な男の恋とミラクル!
安田顕×麻生久美子
最強の“脇役俳優”が現場の先々で起こす奇跡とその不器用な恋を描く映画『俳優 亀岡拓次』。横浜聡子監督のつくり出す奇想天外なエンタメに挑んだ2人は意外にも初共演。
安田 最初に映画の主役の話がきてますと言われた時には「はい、やります!」と即答しました。
麻生 アハハハ、内容も聞かずに?
安田 だって普段は脇役で、主演の話なんて滅多にないですから! オファーを受けた後で原作を読んだら、37歳独身の“脇役俳優”亀岡が主人公の話で、僕にぴったりでした。麻生さんは亀岡が恋に落ちる女将・安曇さんを演じられるわけですが、横浜聡子監督とは以前からのお付き合いなんですよね。
麻生 『ウルトラミラクルラブストーリー』(09)に出演して以来のご縁ですが、横浜さんが大好きなので、私も本を読む前に「やります、どんな役でも!」って返事しました。
安田 監督のどんなところが好きなんですか?
麻生 演出をする時の横浜さんがすごく素敵で。普通なら泣くようなシーンでも、「泣かないで下さい」とか、商業映画だとありえないような感覚で、大御所の俳優さんに対しても変わらず意志を通していくんです。いい意味で頑固で、曲げないところがかっこいい。
安田 現場でくみ取ることができなかった部分もあったんですけど、完成した作品を観て、横浜監督の世界観は本当に素敵だなと実感しました。言葉と言葉のあいだの行間をきちんと切り取っていて。言葉にならない映画ならではの空間が立ち上がってくる作品で、映画館で観て欲しいと強く思いました。
麻生 私も出来上がった作品を観て、こんな風に撮ってたんだとビックリしました。とくに居酒屋でカウンター越しに私がお酒を注いでいる時のカメラワークが新鮮でした。
安田 所作がとても色っぽかったです。女優さんですから綺麗なのは当たり前なのかもしれませんが、麻生さんの演じる安曇さんには独特の清貧さがあるんです。もう平成の大原麗子さんみたいで。
麻生 ウソだ(笑)。
安田 もう隣に座られたら目なんかあわせられないオーラで! だからカウンター越しくらいの距離感で鑑賞すべき方だという思いを抱きました。
麻生 照れますよ~。実は居酒屋のシーンを撮った時、直前まで舞台をやっていたので2日しかセリフ覚える時間がなく、すごく焦ってたんです。でもカウンターの中に入ってみたら、安田さんの雰囲気のおかげですかね? すごくリラックスしてできました。