クローズアップ 週刊文春 掲載記事
【1月30日公開】映画『俳優 亀岡拓次』特別対談

不器用な男の恋とミラクル!
安田顕×麻生久美子

 最強の“脇役俳優”が現場の先々で起こす奇跡とその不器用な恋を描く映画『俳優 亀岡拓次』。横浜聡子監督のつくり出す奇想天外なエンタメに挑んだ2人は意外にも初共演。

あそうくみこ/1978年生まれ。各賞を総なめにした『カンゾー先生』『夕凪の街 桜の国』をはじめ、映画、ドラマで幅広く活躍。『モテキ』など話題作多数。やすだけん/1973年生まれ。演劇ユニット「TEAM NACS」メンバー。映画、ドラマで幅広く活躍。最近ではドラマ『下町ロケット』の技術開発部長役が話題に。

安田 最初に映画の主役の話がきてますと言われた時には「はい、やります!」と即答しました。

麻生 アハハハ、内容も聞かずに?

安田 だって普段は脇役で、主演の話なんて滅多にないですから! オファーを受けた後で原作を読んだら、37歳独身の“脇役俳優”亀岡が主人公の話で、僕にぴったりでした。麻生さんは亀岡が恋に落ちる女将・安曇さんを演じられるわけですが、横浜聡子監督とは以前からのお付き合いなんですよね。

麻生 『ウルトラミラクルラブストーリー』(09)に出演して以来のご縁ですが、横浜さんが大好きなので、私も本を読む前に「やります、どんな役でも!」って返事しました。

安田 監督のどんなところが好きなんですか?

麻生 演出をする時の横浜さんがすごく素敵で。普通なら泣くようなシーンでも、「泣かないで下さい」とか、商業映画だとありえないような感覚で、大御所の俳優さんに対しても変わらず意志を通していくんです。いい意味で頑固で、曲げないところがかっこいい。

安田 現場でくみ取ることができなかった部分もあったんですけど、完成した作品を観て、横浜監督の世界観は本当に素敵だなと実感しました。言葉と言葉のあいだの行間をきちんと切り取っていて。言葉にならない映画ならではの空間が立ち上がってくる作品で、映画館で観て欲しいと強く思いました。

麻生 私も出来上がった作品を観て、こんな風に撮ってたんだとビックリしました。とくに居酒屋でカウンター越しに私がお酒を注いでいる時のカメラワークが新鮮でした。

安田 所作がとても色っぽかったです。女優さんですから綺麗なのは当たり前なのかもしれませんが、麻生さんの演じる安曇さんには独特の清貧さがあるんです。もう平成の大原麗子さんみたいで。

麻生 ウソだ(笑)。

安田 もう隣に座られたら目なんかあわせられないオーラで! だからカウンター越しくらいの距離感で鑑賞すべき方だという思いを抱きました。

麻生 照れますよ~。実は居酒屋のシーンを撮った時、直前まで舞台をやっていたので2日しかセリフ覚える時間がなく、すごく焦ってたんです。でもカウンターの中に入ってみたら、安田さんの雰囲気のおかげですかね? すごくリラックスしてできました。

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2016年2月4日号
2016年2月4日号
甘利大臣事務所の嘘と「告発」の理由
2016年1月28日 発売 / 定価400円(税込)

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