晩さん会で「忘れてはならないこと…」
【マニラ高島博之】フィリピンを訪問している天皇、皇后両陛下は27日夜、首都マニラのマラカニアン宮殿でフィリピンのアキノ大統領主催の晩さん会に出席された。天皇陛下はあいさつで、太平洋戦争でのフィリピンの甚大な被害に触れ、「私ども日本人が決して忘れてはならないことであり、私どもはこのことを深く心に置き、旅の日々を過ごすつもりでいます」と述べた。
陛下は1962年11月の皇太子時代にフィリピンを訪問したことを振り返り「多くの貴国民から温かく迎えられたことは、私どもの心に今も深く残っております」と語った。今回、54年ぶりの訪問を果たしたことについて「大統領閣下のご招待によりフィリピンの地を再び踏みますことは、皇后と私にとり、深い喜びと感慨を覚えるものであります」と感謝の気持ちを表した。
「私ども日本人が決して忘れてはならないこと」として太平洋戦争で100万人以上が犠牲になったといわれるフィリピンの被害に言及し、「貴国の国内において日米両国間の熾烈(しれつ)な戦闘が行われ、貴国の多くの人が命を失い、傷つきました」と述べた。
今回の訪問が「両国国民の相互理解と友好の絆を一層強めることに資すること」を深く願うと述べ、アキノ大統領と乾杯した。
陛下に先立ちあいさつしたアキノ大統領は「両陛下がこのたび我が国にお越しくださったという事実そのものが、両国間の友好関係の深さを明確に物語っております」と歓迎の言葉を述べた。また、両陛下と会うのは「4度目となります」としたうえで「お目にかかるたびに感銘を受けるのは、両陛下が示される飾り気のなさ、ご誠実さ、そして優美さです」と語った。
天皇、皇后両陛下は晩さん会前の同日午後、フィリピン独立運動の英雄ホセ・リサール(1861〜96年)の記念碑に供花した。あいさつで天皇陛下はリサールが日本に約1カ月半滞在したことに触れ、「フィリピンの国民的英雄であるとともに、日比(にっぴ)両国の友好関係の先駆けとなった人物でもありました」と話した。
両陛下は太平洋戦争でのフィリピン人犠牲者などが眠る「無名戦士の墓」も訪れた。ひつぎをかたどった碑に供花した後、約2分間にわたって拝礼し、追悼の思いを示された。
28日は、日本への留学経験があるフィリピン人と面会するほか、在留邦人や日系人との懇談などが予定されている。フィリピンでの日本人戦没者を追悼する「比島戦没者の碑」への供花は29日に行われる。