1. 私はジョン・テンプロン。BuzzFeed Newsのデータ・リポーター。15カ月かかって テニスのデータを調べ、 どの選手が八百長にかかわっているかを調べました。
(この報道の概要は こちら)
3. 私は数字を扱う人間であって、テニスについては素人。でも、統計データを見て「紳士のスポーツ」に疑いを持ったわけです。
フロリダ州立大学のスポーツ経営学の教授とテニスをギャンブルの対象としているプロフェッショナルとの共同研究の結果によれば、毎年、およそ23試合のプロトーナメントの1回戦で、「操作された、または明らかに仕組まれた」試合を戦った選手がいたといいます。これは全体のおよそ1%。しかしこの論文では、個別の選手について触れていないし、2011〜2013年の試合についてしか調べていませんでした。
5. 私は膨大なテニスのギャンブルのデータに当たり、「試合を投げた」選手を探し始めました。
なぜ、プレーデータでなく、賭けのデータに当たるのか。八百長があるならば、お金が動くから。普通の試合では、ブックメーカーが設定したオッズに従い、勝つ選手、負ける選手、それぞれに賭ける人がバラつきます。しかし、オッズで調整されているのにもかかわらず、一方の選手に賭け金が偏ったとすると、それは賭けている人物が、ブックメーカーより試合で何が起こるのかを初めから知っているということ。片方の選手が、わざと負けているということです。
7. そんなわけで、2009年から2015年の2万6000試合を分析してみた。
これは、膨大なデータでした。ブックメーカーは、賭けの状況に応じてオッズを調整します。そこで私は、主要な7つのブックメーカーが、各試合に最初に付けたオッズに注目し、最終的なオッズと比較して、どれだけオッズが変わったかを調べました。
9. 10%以上オッズが変わった試合を抜き出してみると……
調査した全試合のおよそ11%ありました。これだけオッズが動くのには、いろいろな理由が考えられます。たとえば、ウォーミングアップ中に選手が怪我をして、賭ける選手を変えたとか。でも、ある選手が負けることがわかっている、という内部情報を知っているということも、もちろんありうるわけです。
11. データからはある特定の選手の試合相手に、多くの賭け金が集まる傾向がありました。最初に設定されたオッズから予想されるより、遥かに多くの試合に負けている選手がいる。これは興味深い……。
実際に、その選手が負ける確率はどのくらいなのかを予測するため、一人の選手につき100万回、シミュレーションをしました。(詳細についてはこの記事に)
13. その結果、賭け金が集まった試合に高い頻度で負けている選手が15人いたのです。
うち4人は掛け金の集まったほぼすべての試合に負け、データが示す傾向からすれば、異常なパターンを示しました。ブックメーカーが定めた最初のオッズから計算すると、そうなる確率は千分の1未満なんです。
この分析には、一般公開されている情報だけしか使っていません。協会やブックメーカーは、実際に賭けられた記録や、通話記録、銀行の記録など、法的根拠のあるより詳細な情報にアクセスできます。こうした詳細なデータなしでは、実際に八百長があるかはわかりません。だから、BuzzFeed Newsは疑わしい選手の名前を公表しないことにしました。
15. それでも、ある選手に至っては、16試合にわたって10%以上も本来あるべき数字よりオッズを下げていることがわかりました。
17. 16試合中、15試合に負け。うち数試合は、勝つ見込みが高かったのに。
もちろん賭けのパターンだけでは、八百長の証拠にはなりません。怪我、疲れ、不運。賭け金が集まった試合でたまたま、選手が実力を発揮できないことはあります。でも、特定の選手が賭け金が集まった試合で、繰り返し不調になることは、ありえないんです。
ブックメーカーの初期オッズを使って、私がシミュレーションした結果、この選手が16試合中15試合も負けるのは、7500回に1回あるかないかでした。
19. 2010年に開催されたあるトーナメントで、ブックメーカーは約69%の確率でその選手が初戦を勝つと予想していました。でも、試合の数時間前、オッズはたった47%に……。
21. そしてその選手は2セットを落とし、負けました。
繰り返しますが、その試合が八百長であったかどうかはわかりません。でも、データから得られる傾向は明らかにおかしいし、ありえないもの。そしてこの疑惑は、データだけに留まりません。さらなるテニスの八百長疑惑に関しては、BuzzFeed NewsとBBCの調査報道をお読みください。