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映画評論家町山智浩アメリカ日記




音声ファイルの有料ダウンロード「町山智浩の映画ムダ話」。今週は、
アンドレイ・タルコフスキー監督『ノスタルジア』(83年)について。

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「狼たちは天使の匂い 我が偏愛のアクション映画」です。


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ロフトプラスワンでタランティーノと公開飲み会(無修正)

2016-01-26 『サウルの息子』の息子とラストについて

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TBSラジオ「たまむすび」、今回は、カンヌ映画祭グランプリ、アカデミー外国語映画賞確実の傑作『サウルの息子』について話しました。

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『サウルの息子』の監督ネメシュ・ラースローの短編『With A Little Patience(ちょっとの我慢)』。

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息子とラストについて

サウルがあの少年を息子だと言って、必死に埋葬しようとしたのは

(以下は物語の結末に触れているので10行くらい空けます)

象徴的なことです。同僚は「サウルには息子がいないはずだ」と言いますが、

サウルにとって、あの子は救えなかった子どもたちすべての象徴なのでしょう。

監督は、『アウシュヴィッツの巻物』という本を見つけて、この映画を企画したと語っています。

それは、ゾンダーコマンドたちが死の前に遺した、アウシュヴィツの記録でした。

ナチはユダヤ人を絶滅させた後、アウシュヴィッツをはじめ、すべての証拠を隠滅して、ホロコーストの事実そのものを歴史から隠蔽するつもりでした。

だから、ゾンダーコマンドたちは密かに紙に事実を記録し、瓶に入れて、あちこちに埋めたのです。

ゾンダーコマンドたちはわずか数名を残して殺されましたが、その記録を入れた瓶は戦後、発掘され、出版され、こうして映画になりました。

ユダヤ教やキリスト教では、正しい者は未来に墓から蘇って幸福に暮らせると信じているので、遺体を焼いて消滅させると復活できなくなると嫌がります。

だからサウルは、ユダヤ人が歴史から消滅させられる瀬戸際で、一人だけでも埋葬しようと必死になったのですが、

それは、記録を残せばいつか掘り起こされ人々に伝えられると願ったゾンダーコマンドたちと同じ思いなのです。

だから、彼自身の息子というより、すべてのユダヤ人の未来を意味しているのでしょう。


最後に、サウルは地元ポーランドの少年を見て微笑みます。

それは、あの「息子」が蘇ったように見えただけでなく、

その少年がサウルたちを目撃すれば、彼が後世に伝えてくれるだろうと安心したからでもあるでしょうし、

我々、観客に向かって、「これを見てくれたよね? なら、もう二度とこんなことをしないよね」と希望を託した微笑みでもあるでしょう。

この映画にとって「サウルの息子」とは、未来の世代すべてを意味しているのでしょう。

ユダヤ人とはそもそも難民です。

西暦135年、ローマ帝国に反乱したユダヤ王国は解体され、国を失ったユダヤ人はヨーロッパ全体に離散しました。

現在、内戦によって住む場所を失い、ヨーロッパに逃れたシリア難民と同じです。

難民排除の行きつく先はホロコーストなのです。

だから、今、すでに難民排除の声があがっている日本でも、この映画を観る意味があると思います。