ソウル地下鉄に凶器男、乗客は80分間無防備

 「電車の中で男が凶器を持っている」

 26日午前8時24分ごろ、ソウル地下鉄1号線の電車運転手に非常事態を知らせる電話があった。乗客が電車内に設置された非常電話で連絡してきたものだった。市庁駅から鐘閣駅に向かっていた電車の3号車で、ホームレスの男(51)が懐から長さ25センチメートルの果物ナイフを取り出し、乗客に向かって2-3回振り回したのだった。

 男の行動に驚いた乗客は、電車が鐘閣駅に停車すると、「おかしな男がいる」と叫びながら下車し、一部の乗客は男を避け、別の車両に逃げた。しかし、男は大混乱に陥った電車から悠々を降り、鍾路3街方向に向かう後続電車に乗り、凶器を所持したまま1時間20分も乗り続け、ソウル駅で警察に身柄を確保された。1日平均720万人(2014年現在)が利用するソウル地下鉄の乗客が男に襲われる脅威に無防備のままさらされた格好だ。

 男は騒動を起こし、後続電車に乗る際にも制止されなかった。市民の通報で現場に急行した鐘閣駅の職員は「男が乗った後続電車は既に発車しており、何もせずに事務室に戻った」と話した。男はその後、清涼里駅で反対方向の電車に乗り換え、ソウル駅まで来た。男は午前9時45分ごろ、ソウル駅で身柄を確保されるまで、ソウル-清涼里間駅の10駅分の区間を移動したことになる。

 男が乗った電車が鐘閣駅と鍾路3街駅の間を走行していた午前8時27分ごろ、地下鉄保安官(40)は車内で独り言をつぶやく男を発見し、鍾路3街駅で車外に追い出した。男は普段ソウル駅でホームレス生活を送っており、担当警察官の間では顔が知られていたという。しかし、警備員は男がわずか7分前に地下鉄車内で凶器を振り回していた事実を知らずにいた。警備員が事件の通知を受けたのは午前8時36分ごろだった。

 男は警察の取り調べに対し、「車内に人が多く、むしゃくしゃしていたところに幻聴が聞こえ、乗客を怖がらせようとして凶器で脅した」と話した。身柄確保当時、男はジャンパーに果物ナイフ2本を所持していた。警察は特殊脅迫の疑いで、男の逮捕状を請求した。

 多数の死傷者を出した2003年の大邱地下鉄放火事件以降も地下鉄車内で乗客が騒動を起こす事件は続出している。14年5月末には、男(73)が地下鉄3号線道谷駅に接近する電車内でシンナーをまき、ライターで火をつけたとして逮捕された。10年12月6日にも地下鉄2号線の電車で知的障害者が酒に酔って凶器を振り回した。

 今回騒動があった地下鉄1号線を運行するソウルメトロのマニュアルには、「電車内で凶器による騒ぎがあった場合、総合管制所が運転士と各駅の事務室に放送や文字メッセージで事件発生の事実を知らせ、後続列車を停車させ、保安官と駅職員が車内を捜索する」と規定されていた。しかし、今回鍾路3街駅で男を発見した保安官が事件発生の事実を通知されるまで発生から16分かかった。マニュアルが機能しなかったと言える。

イ・テドン記者
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