@Copy writing ,@Fall™というTwitterアカウントをご存知ですか?
ほかにも数々の有名文豪の名言botを発信している中の方の、ちょっぴり大人なインタビューです。この方の言葉は繊細かつ孤独で、たくさんの人がいる街の中でもどこか独りぼっちだと思って歩いている、そんな私たちの影の寂しさを、ストレートに表現されていると思います。
中の人Fallさん
兵庫県出身、東京在住。フォロワーをそれぞれ@Copy writing120万人、@Fall™6万人、など運用。繊細で、心に刺さるような言葉は特に10、20代に人気。
ずっと一緒にはいられないから、今はずっと一緒にいよう。 by グリコ
— Copy writing (@Copy__writing) January 24, 2016
桜は散る、梅は毀れる、椿は落ちる、顔は崩れ身体は腐り、さようならを言う度にひとは少し死ぬらしい、恋文は美しい脅迫状、或いは東京は春の香り、誰でもよかったと言い続けろよ、神や法律は何も禁止していない、恋は恋の死へと墜落し、君は僕を忘れ、僕は君の一瞬になる
— Fall™ (@No_001_Bitch) December 16, 2015
——どんなときに、@Copywritingでつぶやくんですか?
Fall(以下、F):思い立ったらすぐ。会社にいても、仕事しているふりしてメモパッドでぶわっと書き始めたりとかする。
森美加(以下、M):書いている内容は、普段の自分と違う感覚ってありますか?
F:アカウントでは、基本的に若干いい人を演じている。でも、ちょっとだけいい人を演じたい気分だったらいいことを書くし、むかつくと思ったらぐわっと曲げる。
——最近、フォロワーがかなり増えていますね。
F:人間そんなに好かれるわけないから、気持ちが悪いなと思ってるよ。
M:批判もあるんですか?
F:3万人以上のフォロワーがつくと、必ず一人アンチが生まれるみたいだね。わざわざ一人になるために書いてるから、不快な情報を見たら俺は速攻でブロックするけど。
M:大胆なことをおっしゃっているから、批判は怖くないのかと思っていました。
F:だんだん優等生になってしまう感じがあるよね。
でも面白い。俺みたいに本を書いているわけでもない、よく分からない人間に向けて批判するのは滑稽だ。つくる側の人間だから、常に批判される立場にいるんだろうなと思う。
——コピーライターとして文を書くにあたって、気をつけていることはありますか?
F:嘘をつかないこと。例えば古本屋さんのコピーに、古本の汚れを「涙の跡」って書いているのを見つけた。そういう嘘は絶対に言わない。
——LINEやTwitterで質問が来ることはよくあるんですか?
F:いつも。夜中になるにつれ、えぐいものが多くなってくる。
M:どんなの?
F:恋愛系が多くて、失恋したとか浮気されているとか、したとか。きっと彼氏に話すべきかどうか迷っている女性は、浮気の常習犯じゃない。ピュアで汚いことができない人が、俺に相談してくるみたい。
M:不倫には、なんて返したんですか?
F:基本的には肯定派なので、好きにしろと。
M:相談にのることで自分が何か得ている、と思いますか?
F:思う。貴方もそうだと思うけれど、元々悩まないタイプだと思うから。二択なら一つを選んで、ぐわっといくタイプだと思う。だから続けようと思った。
M:すべてのメッセージに返信しているの?
F:100きたら3〜5くらいは返すかな。
真面目に答えた事例 pic.twitter.com/W5EJzwXy5R
— Fall™ (@No_001_Bitch) December 27, 2015
——「言葉」は好きですか?
F:大好きだよ。普段はプロデューサーとして広告を作る仕事をしていて、コピーライターや、アートディレクションもやってる。仕事道具であるし、一方で絶対に自分のものでなくて他人のものであるという考えもある。視覚的な表現と同じくらい、言葉の表現もメディアとして強い力があると思う。
M:東京タワーや少女がキスをしている写真をTwitterでみたとき、孤独な感じにすごく共感していました。
F:ありがとう。東京生まれ東京育ちの人は、東京を表現する時にありのままだからすごく羨ましいね。
M:先入観のなさですか?
F:そう、「自分の表現したい東京」ではなく、「切り取った東京」が明らかに東京。例えば、俺が渋谷に行けば、絶対に孤独な女を撮ってやるぞって気持ちになるんだよ、なぜか。でも渋谷の本質ってそうじゃない。みんな寂しさを持っているけれど、何か楽しいことがあるかもって思いもそこにある。
M:東京生まれじゃないんですね?
F:そうそう、地元は兵庫県神戸市。いいところだよ。
M:東京はどんな街ですか?
F:寂しくて大好きだよ。ただ俺は、「寂しい」ということに関してネガティブなイメージは全くない。
M:その寂しさも好きということ?
F:うん、大好きだね。東京には、みんな寂しいと思っている感じがある。東京生まれの人は逆にどう思うの?
M:私も孤独を感じるけど。でも故郷はここしかないと思います。
上京された時、一人で東京は怖くはなかった?
F:怖かったよ。新幹線で泣いた。
Fallさんが趣味で撮っていらっしゃる写真たち。OLYMPUSを使用されているそうです。
——どんな学生だったんですか?
F:一年間友達と全く話さない期間とかあった。学校にも行かず、電話がかかってきても全部無視していた。独りでいたかった。でも一人でいても、二人で話していても、結局独りであることには変わりがないと分かって、そういうことはやめた。意味ないなって。
M:どうして一人になりたかったんですか?
F:失恋してたんだよ。
M:でも1年間も全員と連絡を切るのは、苦しくなかったですか?
F:寂しかった。馬鹿なことしてるなぁと思いながらやってたよ。
M:ひとりの状態は寂しいですよね。昼間は忙しくしていても、夜、自分の部屋でひとりになるとすごく辛く感じます。
F:何時くらい?
M:11時過ぎ、とか。書き物をしていても、その時間帯だけは辛くなって。大嫌いなメディアを手にとってしまうんです。
F:面白いね、嫌いなの?
M:何かに依存して生きている感覚が嫌いです。
F:今の子は大変だね。
M:あまり世代差はないと思うけれど、夜寂しくなることはありました?
F:沢山あるよ。山手線をぐるぐると散歩したりした。きっと「寂しさ」は何かに没頭していたら忘れられると思う。あるいは繋がっていてもいいけれど、誰かと繋がって何か一緒に目標を達成していれば、無駄な寂しさは感じないと思う。
— Fall™ (@No_001_Bitch) October 27, 2015
——学生時代、サークルとかは入ってましたか?
F:「かくれんぼ同好会」っていう、かくれんぼをするだけのサークルに入ってたけど、あまり行っていなかった。大学の頃は、サークルにも授業にも行かずに、ずっと図書館にこもってこういうアカウントをつくったり、本を読むことしかしていなかった。
M:本が好き?
F:すごく。どんな本を読むの?
M:重松清、山田詠美が好きです。表現が繊細で。ダークだけれど最後に明るい兆しがある本が好き。私は性善説を信じたいから。
F:三島由紀夫の『金閣寺』がおすすめだよ。あとは江國香織の『ウエハースの椅子』。絶望だからね。
M:読んでみます。Fall™さんは性善説を信じますか?
F:信じるよ。基本的に皆いい奴だと思っている。
M:Fall™さんのアカウントからはそう感じなかったです。
F:いざ誰かに裏切られたときに失望したり、傷ついたりしないように、性悪説を信じる自分も常に隣に置いてるんだと思う。それで自分を守ってもらっている。
——大人になったな、と感じたときはありますか?
F:家庭を持つようになって、終電の時間を気にしたとき、とか。終電が終わってからが夜だと思っていたよ。
M:今、自分が子どもと大人の間にいる気がしていて。大人になりたいけれど、ただの背伸びした子どもなんだろうな、と思うんです。
F:大人なんて存在しないと思うよ。みんなどこかしら、子どもだ。それに俺の前で、今あなたは大人っぽく見えてるから、それでいいと思う。
M:背伸びじゃない?
F:それもいいと思う。
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— Copy writing (@Copy__writing) January 3, 2016
——人付き合いは得意ですか?
F:一言も喋らない人間だと思ってた?よく言われるよ。
M:内向的な方ではなかったんですね。
F:好かれる人と嫌われる人両極端に分かれているけれど、そこは諦めている。結局なるようにしかならないから。
——最後に、FALLさんの夢を教えてください。
F:今みたいなふわふわしたコピーを描きまくって、世の中をおかしくしたい。
M:良い意味でおかしく、ですか?
F:世の中の女の人が「孤独で寂しそうな男が好き」と口を揃えていうような社会を作ってやりたい。コピーで感性を一律にしてやろうと。インターネットは、すべての話を良い方向に持って行こうとする傾向があるけど、暗いことは暗いことでいいじゃない、と言いたい。
(Text:森 美加 / Edit:石黒和己)
編集後記:Fallさんにお会いして、インタビューをすると決めた時から、小説のような記事が書きたいと思っていました。会いに行く前の電車では緊張して、久しぶりに音楽を聞きませんでした。進路や、言葉の遣い方や、それだけではなくて、Fallさんの人としての温かさを記事から感じ取っていただけたらと思います。有難うございました。
森 美加
高校1年次に18歳以上の選挙権についてのレポートを書く。カナダに一時期留学。犬を飼っていますが猫派です!笑
過去記事>>「若者のための政治を実現するために、私たちにできること。-森美加(17)」