「きょうの健康」です。
今日は月に1度最新の医療情報をお伝えしている「メディカルジャーナル」です。
今日のテーマは「急増する肺MAC症」です。
私も初めて聞いた病気なんですが今中高年の女性を中心に急増しているという事なんですね。
原因となってるのがこの菌です。
正式な菌の名前の頭文字を取りましてMAC菌です。
一体どんな菌でどんな病気なんでしょうか。
お話は…呼吸器内科医で長年肺MAC症の治療に携わっていらっしゃいます。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
その肺MAC症ですね初めて聞いた方も多いと思うんですけれども一体どういう病気なんでしょうか?肺MAC症はMAC菌という結核菌の親戚のような細菌に感染して起きる肺の病気です。
長引くせきやたんが特徴で重症になると呼吸困難に陥る事もあります。
結核とは違うんでしょうか?かなり違います。
結核菌もMAC菌も大きくは抗酸菌属と呼ばれる細菌のグループに属しています。
見た目も非常に似てますが結核菌がくしゃみやせきでヒトからヒトへ感染するのに対して非結核性抗酸菌はヒトからヒトへは感染しないところが大きく違います。
どうやってそれは感染していくんですか?MAC菌を含む非結核性抗酸菌は水や土の中に生息している細菌で詳しい経路は不明なのですが環境から人に感染すると考えられてます。
この中でその非結核性抗酸菌ありますよね。
これはどういうものなんでしょうか?抗酸菌にはたくさん種類がありまして結核という病気の存在が大きいので結核菌というのは独立したグループになってますけれどもそれ以外の抗酸菌は全部非結核性抗酸菌というふうになってます。
そして日本ではこの菌で発病する方の9割はこのMAC菌という菌で起きてます。
非結核性抗酸菌の種類としては相当あるんですか?150種類あります。
あ〜はい。
今そのMAC症に感染する人が増えてるという事なんですけどどれくらい増えてるんでしょうか?これが1年間に発病する方のグラフですけれども結核がこのように減ってきてるのに対して非結核性抗酸菌は昔は少なかったんですけれども今非常に増えて人口10万対14.7という数字。
結核よりも上回ってきてます。
10万人当たり14.7人。
そうです。
これは前の調査に比べますと相当やっぱり多いんですね。
2.6倍ぐらい。
この7年前と比べて2.6倍です。
どうしてこんなにこう…グッと増えてるんでしょうか?MAC菌は暖かい場所を好むので日本の最近のように温水供給が普及しているそういう社会的な変化が一つはあると思われます。
また一般的な背景として地球の温暖化なども関係してるかもしれません。
しかしその日本では検査が非常に普及…。
CTや高度な検査が普及してるために早く見つかってる。
あるいはお医者さんの中でもこの病気の理解が広まってる。
そういう事も要素として考えられます。
どうなんでしょう。
このMAC菌に感染しますと症状としてはどういう症状になってくるんですか?たんやせきが主な症状です。
はい。
せきやたんが1か月以上続いたり血たんが出たりしたら肺MAC症を疑って呼吸器内科を受診して下さい。
ひどくなるとどういう状態にこれはなってしまうんですか?発熱や全身けん怠感あるいは体重減少などが出現します。
ひどくなると呼吸困難が強くなって空洞ができたりあるいは最悪の場合命の危険もあります。
思うんですがその結核との違いですね。
結核との違いはどういうものなんでしょうか?結核の場合はだんだん熱が出てくるのが一般的ですけども肺MAC症の場合は相当ひどくならないと熱は出ません。
もう一つの違いは肺MAC症の場合は結核よりはるかにゆっくりしか進行しません。
ここのレントゲンはこの肺MAC症と気付かずに経過した方なんですけれども発症時のレントゲンはこのように非常に曖昧な影なんですけれども5年後にはかなり上の方に広く広がってます。
更に15年後には右の肺のほとんどを病変が占めて更に反対側にも広がって酸素が必要なような状態になってきてます。
こうなるまで非常にやっぱりゆっくりと結核と違ってゆっくりと進行…。
どれぐらいの年数をかけて進行するんですか?これ15年ですけど…。
15年です。
そうです。
非常に全般的にゆっくりしてますね。
10年か20年ぐらいかけて重症化という事なんですね。
検査ですけれども検査としてはどんな検査になるんでしょうか。
肺MAC症を正しく診断するための検査で一番重要なのは喀たん検査です。
どういう菌がいるか。
それから胸部エックス線検査でどのような病変の広がりがあるか。
詳しくはCT検査が非常に役に立ちます。
どうしてCT検査が役に立つんですか?エックス線検査だけだと気管支炎との区別がつき難いんですけれどもCTの検査では肺MAC症独特の陰影が分かります。
診断されました。
された場合治療としてはどうなんでしょうか?細菌感染なので基本的には抗生物質で治療する訳ですけれどもクラリスロマイシンエタンブトールリファンピシンこのような3つの抗生物質を併用するのが原則です。
そしてなぜ3つも併用しなければいけないかというとこの菌を完全に殺菌できる強力な抗生物質がないので複数の薬を使わないとできないという事ともう一つは1種類の薬だけで長期に服用していると耐性になって菌に効かなくなりますので3種類の薬を併用すると耐性が生じにくいという事があります。
注意する点というのは何かありますか?従ってこの処方された数を守って長期に服用する事が大事です。
勝手にのんだりのまなかったりしてはいけないという事になってきますね。
そうです。
どうなんでしょう。
服用後どれぐらいでこれはよくなってくると考えられるんでしょうか?一般的にはせきやたんの自覚症状は1か月ぐらいから減ってきますが菌は3か月ぐらいたつと陰性になってきます。
多くの方は。
こちらの方のようにこれが治療前のCTですけどもここに空洞が見えます。
約1年後この空洞はこのように縮小して小さくなってます。
このようにかなり長く服用しないといけない…。
服用するべきというのが一般的な原則ですね。
長くというのはどうしてでしょうか?2年から4年ぐらい多くの方の場合必要と思われます。
早く菌が消えたからといってすぐ薬をやめると再発して前よりもひどくなる事がしばしばあります。
再発するという事もあるんですね。
そうです。
定期的にチェックして適宜抗生物質を使っていけば長くつきあっていく事ができます。
そうしますとその副作用ですね。
副作用はどうなんでしょうか?副作用で初期に多いのはかゆみや発疹で来るアレルギー症状。
あるいは人によって肝障害が来る事もありますがこれらは薬ののみ方の調節でほとんど解決できます。
しばらくたってから出てくる副作用として視力低下がありますので眼科の先生に定期的にチェックして頂いて薬をやめれば視力は回復します。
ご覧のような副作用。
ほかにも何か注意する点というのはあるんでしょうか?高齢者の場合は既に多くの薬をほかの病気でのんでらっしゃいますのであまり重くない場合は無理に抗生物質を服用しないでせきを和らげたりたんを切れやすくする薬だけでも対処できる場合もあります。
はい。
薬以外のそれこそ治療というのは何かあるんでしょうか?この菌を完全に殺菌できる薬はないので場合によって手術が必要な場合があります。
比較的若い方で病変が1か所に固まってるような場合は積極的に手術を行う事があります。
こちらがそのエックス線写真ですか?そうです。
この方はここに大きな空洞があってお薬だけでは到底よくならないので手術でこれを取っています。
この方今この手術の後15年たってますけれども病気があまり広がらないで元気でお暮らしになってます。
どれぐらいこれ術後たってらっしゃるんでしょうか。
15年…。
15年…ああそうですか。
どうでしょう。
その高齢でない…手術ができない場合というのもあるんですか?病変がいろんな所に散らばってある場合はなかなか手術する事は困難です。
そういうような場合はあらかじめお薬の治療で小さな病変は無くしてから手術する場合もあります。
今日いろいろお話伺ってまいりましてその…肺MAC症というの初めて聞きましたし聞いた方も多いと思うんですけどやっぱりですねそういう病気のある存在ですよねそれやっぱり知るところからスタートするんだなというのを改めて思いましたけれども。
そうです。
早期に気付いて適切な治療を受ければ長くつきあっていける病気です。
特に中高年の女性は長引くせきや血たんがあれば一度呼吸器内科を受診して検査して頂きたいと思います。
気付かずに放置しておくと呼吸困難からそしてまた本当にひどい場合には死に至る場合もあるという事でしたもんね。
今日はですねそういう急増する肺MAC症ですね肺MAC症についてお話を伺ってまいりました。
お話はですね倉島篤行さんでいらっしゃいました。
どうもありがとうございました。
本当にいかに知る事が大切かというのをよく分かりました。
それでは「きょうの健康」この辺で失礼します。
2016/01/25(月) 20:30〜20:45
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 メディカルジャーナル「急増する肺MAC症」[解][字]
中高年の女性を中心に急増する肺MAC症。長引くせき・たんが特徴だが、かぜ・気管支炎と間違われやすい。早期発見のための症状・検査、そして具体的な治療法を紹介する。
詳細情報
番組内容
いま、中高年の女性を中心に急増しているという肺MAC症。最新の調査では、結核より患率が高いことが明 らかになった。肺MAC症は長引くせき・たんが特徴で、重症になると呼吸困難に陥ることもある。早期発見・早期治療が重要だが、かぜ・気管支炎だと思い込み、見過ごされているケースが多いという。番組では、肺MAC症の原因菌やかぜ・気管支炎との見分け方、抗生物質・手術といった治療について詳しくお伝えする。
出演者
【講師】複十字病院 臨床研究アドバイザー…倉島篤行,【キャスター】桜井洋子
ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0x0808)
EventID:20337(0x4F71)