私たちの社会で日常化している不平等を、どう克服していくべきか。

 きのう始まった国会の代表質問では、この喫緊の課題に向けた質疑も交わされた。

 経済成長や外交・安全保障政策、そして甘利経済再生相の金銭授受疑惑の解明――。いずれも、いま国会が取り組むべき重要な課題である。

 ただ、正社員と非正社員、男と女、都市と地方など日本社会で拡大しつつある様々な格差、すなわち不平等の解消は、とりわけ対応が急がれる。

 民主党の岡田代表は「格差是正、公正な分配のための具体策について提案したい」と語り、児童手当の1人あたり支給額や児童扶養手当の支給対象年齢の引き上げなどを挙げ、財源として金融課税や所得税・相続税の累進強化を示した。

 また、安倍首相が施政方針演説で「実現に踏み込む」とした同一労働同一賃金について、もともと民主党が訴えているような正規と非正規雇用の「均等待遇」をめざすのかとただした。

 維新の党の松野代表も、国民年金保険料を払っていない人などの数字をあげて、早急な対応を求めた。

 厚生労働省の調査によれば、日本の相対的貧困率は2012年で16・1%。年々少しずつ増加している。30歳未満の若年世帯では27・8%、1人親世帯では54・6%にも達している。

 首相もこうした現状を踏まえ、「格差が固定化しないよう雇用環境の改善や社会保障環境の改善の見直しを行っていく」と応じた。ただ、岡田氏の提案への首相の答弁はやや抽象的で、物足りなさが残った。

 首相はさきの施政方針演説で、「批判だけに明け暮れ、対案を示さず、後は『どうにかなる』。そういう態度は、国民に対して誠に無責任だ」と野党を批判し、「具体的な政策をぶつけあい、建設的な議論を行おう」と呼びかけた。

 首相の念頭には、安保関連法制や憲法改正への民主党などの対応があるのだろう。だが、憲法を逸脱する政策に反対を貫くことが無責任とは言えないし、内容より改憲ありきの首相の姿勢を警戒するのは当然だ。

 むしろ首相の方こそ、野党の疑問や提案に対して、「具体的に、建設的に」答える責任を果たしてもらいたい。

 夏に参院選を控えたこの国会は短期戦とも言われる。一方、論ずべき課題は山積みであり、疑惑の解明も必須だ。選挙を意識した批判合戦に終わらせてはならない。