ろーかる直送便 クローズアップ東北▽ゼロからの町づくり〜陸前高田それぞれの選択 2016.01.25


壊滅的な被害を受けた岩手県陸前高田市の復興は今大きな節目を迎えています。
最大で…住宅再建何とか皆さん早く進めて頂けるために…。
住民たちの生活の場が間もなく完成しようとしているのです。
震災前の陸前高田の町並みです。
個人商店が軒を連ねる市街地を中心に2万4,000人余りの暮らしが営まれていました。
にぎやかだったあの町をよみがえらせたいと願い続けてきた陸前高田の人々。
今それぞれが選択を迫られています。
陸前高田を離れ避難生活を送るこの男性。
自宅の再建にばく大な費用がかかると分かりふるさとに戻るか迷い続けています。
町の復興を担う市役所もまた正念場を迎えています。
中心市街地の計画を策定し町ににぎわいを取り戻すためのさまざまな戦略を打ち出そうとしています。
あの日から5度目の冬を迎えた陸前高田市。
ゼロからの町づくりに挑む人たちのそれぞれの選択を見つめました。
(塚原)「クローズアップ東北」です。
岩手県陸前高田の復興事業の象徴だったベルトコンベヤー。
この巨大なものが今この状況になっています。
今年9月にかさ上げのための土砂を運ぶその役目を終えているんです。
来年にはかさ上げした所に建物が建ち始めいよいよ町づくりが本格化していく事になります。
では陸前高田の復興計画を見ていきます。
かさ上げした所には中心市街地や住宅地を造ります。
更に高台を切り崩しそこにも住宅地を整備していきます。
住宅や店舗など2,120の建物を収容する土地を整備する被災地でも最大規模の復興事業と言われています。
先月からはかさ上げした土地や高台のどこに建物を再建していくのかを決める「換地」も始まりました。
そうした中陸前高田の人たちはこれから自分たちの暮らしをどこにどうやって再建していくのかその選択を迫られるようになっています。
その実態を取材しました。
岩手県盛岡市。
(取材者)おはようございます。
おはようございます。
陸前高田市の中心街にあった自宅と店を津波で失いました。
今は盛岡市で家族と共に避難生活を送っています。
こんにちは。
この日菅野さんは陸前高田市に造成中の宅地について担当者から説明を受けました。
町の復興にめどがつき次第ふるさとに戻って暮らしたいと願ってきた菅野さん。
自分の土地を高台の住宅地と取り替える換地を申請しその場所が決まりました。
(担当者)高台3の14の中の8番の位置になります。
予定よりも早く土地の引き渡しができるといいます。
しかし素直に喜ぶ事ができません。
そっか…。
菅野さんを悩ませているのが予想を超えた経済的負担です。
今年8月換地に備え家の再建費用の見積もりを取ったところ思いも寄らない金額を告げられました。
(菅野)見てびっくりしたんですけども全部で「3,165万」っていう数字が出ましたね。
復興需要で建築資材や人件費が高騰。
年金と妻のパートでやりくりする菅野さん一家には重すぎる負担です。
震災前菅野さんは陸前高田の商店街で煎餅店を営んでいました。
なじみの客との交流。
家族や友人との思い出。
ふるさとを離れる事でそれが断ち切られるのではと感じています。
被災地を離れ避難してきた人たちを支援する…利用者は1,300人余り。
中にはふるさとを離れて暮らす事を決断した人もいます。
こうした声を受け県は新たな施策を打ち出そうとしています。
これまで被災地に限定して建設してきた災害公営住宅を内陸部にも建てる検討を始めたのです。
自宅の再建費用に悩む菅野さんは先月末気になる新聞記事を見つけました。
岩手県の調査で内陸や県外に避難した人のうち地元に戻りたいと考えている人が2割を下回る事が分かったのです。
実は菅野さんには経済的な理由に加えもう一つ大きな悩みがあります。
菅野さんが一緒に暮らす80代の母親は盛岡市では歩いて病院に通い週2回デイサービスを利用しています。
そんな暮らしが復興途上のふるさとでできるのか…。
陸前高田市で開かれた相談会に参加する事にしました。
皆さんおはようございます。
おはようございます。
訪れたのは地域の介護や福祉事業に取り組む団体です。
家族だけで母親を支えきれなくなった時介護サービスに頼れるのか不安だというのです。
(事務局長)社協でも今…ああやっぱなぁ。
足りないんですよ。
震災後急速に町の高齢化が進む中で起きている厳しい現実。
菅野さんの迷いは深まるばかりです。
陸前高田にとどまっている人の中にも岐路に立たされている人は数多くいます。
仮設の商店街の一角でのれんを掲げる一軒の居酒屋。
店主の…震災前に亡くした夫と始めたこの店を30年以上切り盛りしてきました。
もう一杯…。
(菅沼)もう一杯飲む?しかし仮設店舗には期限があるためここで商売ができるのはあと2年ほどしかありません。
その後も店を続けるのか決断を迫られています。
復興に時間がかかる中人口の流出は加速し売り上げも減り続けています。
町の将来に不安を抱く菅沼さんは店を再建する覚悟を決めきれずにいます。
そういうのも考えるんだよね。
今も菅沼さんのように陸前高田の商店のほとんどが仮設店舗での営業を強いられています。
そうした中取り巻く環境は厳しさを増しています。
陸前高田商工会によりますと震災前市内に699あった事業所のうち今はおよそ1/3に当たる255の事業所が廃業したり陸前高田から転出したりしています。
更に町づくりの大きな懸念材料となっているのが人口の急激な流出です。
減少が続いているのは65歳未満の人たちです。
陸前高田市はこのかさ上げ地に魅力的な中心市街地をつくる事で住民たちを呼び戻そうとしています。
震災前4つに分散していた商店街。
市民ゆかりの魅力的な店舗を一つにまとめて買い物や食事をしたくなる町をつくろうとしています。
その隣には新たな大型商業施設を造ります。
そこにはスーパーや介護事業所が入る予定です。
更に公園や文化会館など公共施設も配置します。
住民が憩える空間もつくり出そうとしているんです。
市が復興の要と位置づける中心市街地の再生。
その挑戦を追いました。
ゼロからの町づくりを進める…この日市街地の核となる大型商業施設について設計業者と検討を重ねていました。
住民たちを呼び込むためこの施設には図書館とカフェも配置する予定です。
それはありだと。
市役所で都市計画を担う…町ににぎわいを取り戻すためには魅力的な中心市街地をつくり出す事が鍵になると考えています。
魅力ある中心市街地をつくるに当たって阿部さんが特に重要だと考えているのが商店街の再生です。
そこで市が導入を決断したのが1つの自治体で1つの地区にしか利用できない「津波復興拠点整備事業」という制度です。
この事業を使えば市が土地を買い取り自由に商店主に貸し出す事ができます。
その値段とは…。
坪単価は年額1,000円程度。
一般的な広さの飲食店なら年間およそ4万円という破格の賃料です。
市が打ち出した戦略に対してこれまでおよそ30人の商店主が借地で店を再建する意向を示しています。
雑貨店を営む…市の借地提供は大きな助けになるといいます。
しかし土地を安く借りる事ができたとしても店の再建は難しいという商店主も少なくありません。
かつて駅前で営んでいたカフェを仮設の商店街で続けています。
店を再建する際太田さんの震災前の店は貸店舗だったために他の商店主たちが利用できる補助金を受け取れずほとんどが自己負担になります。
それでも陸前高田を盛り上げていくためにも店を続けたいと願う太田さん。
この日市の商工観光課を訪れ相談する事にしました。
そうは思ってても現実に…まず太田さんが持ちかけたのは市が管理する仮設の店舗を買い取り今の場所で商売を続けられないかという事でした。
以前から出てる…つどいの丘商店街…。
仮に太田さんが買い取ったとしても将来店をたたむ時に多額の解体費用を負担しなければならないというのです。
話し合いを続ける中で一つの可能性が出てきました。
市が示した戦略です。
仮設商店街の建物をそのままかさ上げ地の中心部に移設。
太田さんのように店舗の再建が難しい店主に安く貸し出します。
建物は市が管理するため解体費用を負担する必要もありません。
そういうふうには考えますね。
東日本大震災は町の機能が失われるほどの大きな被害をもたらしました。
その中で陸前高田の人たちは自らの暮らしを再建する事だけでなく町の行く末にも思いをはせそのはざまで葛藤しています。
そこで出される選択は誰も非難できるものではなくやむにやまれぬものだと感じます。
復興の難しさというのは一人一人状況が異なる中で最適な解決策を見つけていかなければいけないというところにあると思います。
陸前高田の人たちは行政や商店主といった立場を超えて今できる限りの手を打とうとしています。
その姿の中に復興の鍵があるように感じました。
2016/01/25(月) 15:15〜15:41
NHK総合1・神戸
ろーかる直送便 クローズアップ東北▽ゼロからの町づくり〜陸前高田それぞれの選択[字]

人口減少と高齢化が進む中、壊滅的な被害を受けた岩手県陸前高田市。町を一から再生させるという難事業に挑戦する市役所や商店の人々に密着。復興への道筋を探る。

詳細情報
番組内容
津波で中心市街地のほとんどが流出した岩手県陸前高田市。震災から4年半が過ぎ、市が復興の核と位置づける、広大なかさ上げ地への土砂運搬が終了。高台に新たに造成した住宅地の引き渡しも始まり、町作りは大きな節目を迎えている。人口減少と高齢化が進む中、壊滅的な被害を受けた町を一から再生させるという難事業に挑むことになった陸前高田市。町づくりに奔走する市役所や商店の人々、そして住民たちの暮らしを見つめる。
出演者
【キャスター】塚原泰介

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ニュース/報道 – ローカル・地域

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