(世奈子)へえー。
美輪子の身代わりにあなたが?あなたが率先して?
(富貴子)いかがでしょうか?妹はまだ学生の身分だしとてもあんな年寄りの妻の役目を背負わせるのは無理です。
(富貴子)人身御供のように結婚してもとうてい神経が持たないでしょう。
過去にPTSDになったこともありますし破綻するのは目に見えてます。
(世奈子)綱輝はどうするのよ?婚約してるんでしょう?当然婚約は解消します。
了解してもらいます。
(世奈子)後腐れのないようにできるの?奇麗さっぱりと縁を切れるっていうの?切ります。
(世奈子)本当かしら?
(世奈子)男女の情念ってそんな思惑どおりに奇麗さっぱりと片付くものじゃないのよ?ママが私を忌み嫌ってるのはよく分かってるんですよ。
私みたいな偽ぼたんを綱輝さんとは絶対一緒にはさせたくないと思ってらっしゃるのも。
だったらちょうどいいじゃないですか。
思いどおりこれで私たちの仲を引き裂けるんですから。
そうでしょう?なめた口をたたくんじゃないわよ。
あなたってやっぱり相当な擦れっからしね。
信用できないわ。
じゃあどうすればいいんですか?無理やり美輪ちゃんと結婚させても悲惨な結果になるのは目に見えてるのに。
さあね。
どうすればいいかしら?とにかく社長を呼んでくるわ。
えっ?来てらっしゃるんですか?
(世奈子)あなたから電話があったから社長にも連絡しておいたのよ。
(世奈子)ヴィーニャ・エル・ピソン用意してちょうだい。
ハモン・セラーノとね。
(従業員)かしこまりました。
・
(ドアの開く音)
(大隈)おう。
・
(ドアの閉まる音)
(世奈子)社長。
あの女…。
(大隈)ああ…。
富貴子さんいうたな?妹に負けず劣らず美人やな。
(世奈子)牡丹と薔薇の姉妹っていわれてるんですけどね。
(大隈)姉が牡丹で妹が薔薇かいな。
わしはどっちかっていうと牡丹の方がええな。
薔薇はとげがあるよってちくちく刺されると困るがな。
ハハハ!あんたが妹の代わりにOKしてくれそうやって聞いてわしも喜んどるんや。
ハハハ。
はあ。
どうも。
(大隈)こうなったら思いっ切り盛大に結婚の祝いをやろうじゃないか。
全てはローズガーデンの銀行の抵当権抹消の登記をしていただいてその上でのことにしたいと思います。
(大隈)そらそうや。
わしは約束は守るがな。
ハハハ。
いいんですかねぇ社長。
ホントに?言っときますけど妹よりもこちらの姉の方がしたたかですよ。
(大隈)男がおるそうやな?
(世奈子)もちろん交際相手もいるし何しろアメリカまで渡り歩いてるんですから相当な発展モードです。
わしは男と切れてさえくれりゃええのや。
(世奈子)さっきから色々とその話をしてたんですけどねぇ。
(大隈)大丈夫や言うてんのやろ?信用したったらええがな。
(世奈子)まあ嫌だ。
血も涙もないどケチの金貸し社長が若い女に簡単に丸め込まれたんじゃ純情なのかえげつないのか分からないわ。
わしはな純情なんや。
今かてな胸がドキドキしとるんや。
わしもこの年やし早いとこ若い娘にわしの子を産んでもらいたい。
まあ太閤はんが淀君はんと結婚するような心境なんや。
いけません。
社長。
そんなはしゃいだ気分じゃ失敗します。
若い娘にいいようにだまされてしまいますよ。
ほうか?こんな虫も殺さんようなカワイイ顔してわしをだますんかいな?
(世奈子)今どきの若い女を信用したら駄目です。
(大隈)そやかてこれだけの美人やし男の一人や二人おらん方がおかしいんちゃうか?だからそこをきちんと締めておかなきゃ駄目だって言ってるんです。
この偽ぼたんが社長と結婚するのと同時に相手の男にも別の女と結婚させる。
そうすれば社長も脇が甘いなんて言われなくて済むわ。
別の女をあてごうて不倫防止するちゅうわけやな?ご明察ですわ。
私さっきからぴかぴかってひらめいたのよ。
どうかしら?美輪子と綱輝をくっつけちゃうっていうのは?えっ!?綱輝が独身でうろうろしてるんじゃ目障りで危険でしょうがないからちょうどいいじゃないのよ。
それで。
待ってください。
そんな無茶な話って…。
もともとあなたが言ってることが無茶じゃないの。
小日向家のローズガーデンを守るために好きでもない年上の初老男と結婚してもいいっていうんだから。
無茶ついでに美輪子を綱輝と結婚させたっていいじゃないの。
(世奈子)それが社長からの条件だわ。
そうでなければローズガーデンの抵当権抹消なんてとんでもないわよ。
(大隈)なるほどなぁ。
名案や。
名案や。
(世奈子)いいわね?あなた。
そこまで覚悟を決めなさいよ。
そうでなきゃこの話はなかったことにしますからね。
(眞澄)もういいわ。
富貴子。
やめましょう。
次から次へと無理難題吹っ掛けられてバカにしてる。
あんまり惨めじゃないの。
第一美輪子だって綱輝さんだってこんなよこしまな話受け入れられるはずがないんだし。
ローズガーデンは借金の抵当として手放すしかないわ。
ジェームスおじいちゃまには申し訳ないけどきっと許してくださるわよ。
ねえ?そうしましょう?
(美輪子)私結婚してもいいわよ。
綱輝さんとなら。
えっ?
(美輪子)結婚なんて簡単じゃないの。
結婚式を挙げて籍を入れてそれでOKじゃない?本気で言ってるの?えっ?だってどうせ偽装結婚なんでしょう?形だけの。
偽装結婚ですって?そうよ。
実体はないけど法律的には結婚してるってことだけだから。
綱輝さんだって事情を話せば協力してくれるんじゃないかしら?私はどうしてもローズガーデンを失いたくないの。
そのための偽装結婚なら…。
ねえ。
お姉ちゃま。
綱輝さんに頼んでみてよ。
偽装結婚。
ここで諦めるなんて私は絶対嫌。
ねえ。
そうさせて。
お姉ちゃま。
お願い。
何とかして。
・
(ドアの開く音)
(綱輝)富貴子さん。
あら。
(綱輝)嘘だよね?冗談だよね?聞いたのね?ニコタマのママから。
(綱輝)バカみたいなこと色々言ってるけど。
信じられないようなことばっかり言ってるけど。
そうなのよ。
私自分でも半分は信じられないの。
でも今信じられないような奇妙なことに体ごとのみ込まれそうになってるんだわ。
どういうことなんだ?いったいどうなってるんだ?
(綱輝)それじゃ僕たちの愛なんてまるでぼろ雑巾のように投げ捨てられちゃったようなもんじゃないか。
僕たちが交わした愛の言葉は何だったんだ?みんなじんあいのように宙に浮いてるってことなんだな?申し訳ありません。
ママの言ったとおりなの。
今まで愛してくださって…。
綱輝さん。
お礼を言います。
でもしかたがないの。
あなたとの婚約は解消して汚らしい金貸しの親父と結婚する。
私はその道を選びます。
それだけじゃないだろう?僕に美輪子と結婚しろだって?偽装結婚よ。
美輪子も承知してるわ。
(綱輝)君たち姉妹はどうかしてるよ。
完全に狂ってる。
小日向家のために美輪ちゃんを犠牲にはできないの。
(綱輝)ローズガーデンなんか手放せば済むことじゃないか。
そうはいかないのよ。
あの薔薇園は美輪子の命のようなものなんだもの。
たとえローズガーデンが小日向家のものでなくなったって薔薇園そのものは誰かが受け継ぐんだろ?あそこにビルをおっ建てるって話じゃないんだから。
毎年季節ごとに薔薇は奇麗に咲き続けるんだよ。
それでいいじゃないか。
それじゃ美輪子は死んでしまうのよ。
助けてやりたいのよ私は。
しかしあなたは小日向家の人間じゃないんだよ?あなたの実家はあの下町の天ぷら屋であの家の娘なんだ。
そこまで小日向家の犠牲になることはないんだよ。
美輪子に降り掛かった受難は私が引き受けるの。
何もかも全部引き受ける。
そう決めてるの。
結局そうなんだ。
君たち姉妹の絆はどこまでも強固で天地がひっくり返ろうともびくともしない。
誰にも断ち切れやしないんだ。
でも綱輝さん。
私あなたを愛してます。
今ほどあなたを愛してると思ったことはないわ。
僕のことなんか…。
いいえ。
違うの。
こんなに愛してると思ったことはない。
分かってください。
好きなの。
どうしようもなく好き。
愛してるわ。
愛してる。
愛してる。
(泣き声)助けてくれよ。
もうどうしたらいいっていうんだ?
(峰靖)そこまで小日向家の犠牲にならなくてもよさそうなもんだのにな。
すみません。
父さんにも母さんにも勝手なことばかりして。
(峰靖)痛々しいんだよ富貴子が。
婚約者のことを諦めてまで。
(伊佐子)でもね物は考えようじゃないの。
相手は金貸しの大金持ちだっていうんだから。
(峰靖)大金持ちほどケチなものはないんだ。
(伊佐子)いくらどケチでも正式に籍を入れちまえばこっちのもんだ。
相手が死ねば多少の財産は富貴子の方に転がり込んでくるよ。
40歳も年上のおじいちゃんだしどうせ先に死ぬに決まってる。
その後は富貴子も安楽なもんさ。
(峰靖)そんな計算してないよ。
富貴子は。
そうだろ?私は美輪子がかわいそうで。
どうしてそこまで妹思いなんだろうね?父さんには分からないよ。
私だって分からないの。
なぜなのか。
とにかくこの子が裕福になれば私たちだって少しはおこぼれにあずかれるんだから。
バカなこと言ってんじゃないよ。
お前は。
人生は長いんだよあんた。
今現在多少の苦労をしたって金持ちの未亡人になってしまえばいくらでも取り返せるんじゃないの。
恋愛だってできるわよ。
・
(杉彦)やめろ。
やめろ!寝言。
父さん。
きっと私何かが取りついてるんだわ。
(峰靖)何かって?美輪子のもう一人の姉のぼたん。
そのぼたんの霊が私に取りついてるのよ。
ぼたんって多摩留に殺されて死んだぼたんか?そう。
ぼたんはぼたん。
私は私だと思っていたけどいつの間にか富貴子っていう名前のぼたんの私に本物のぼたんの霊が取りついてごちゃ混ぜになってるのよ。
だから…。
だから美輪ちゃんのためには何でもしてやれる。
どんな犠牲でも払ってやれる。
そういう魂に染まってきてしまってるんだわ。
富貴子。
お前大丈夫なのか?それで大丈夫なのか?ええ。
大丈夫よ。
亡くなったぼたんが美輪子のために命を犠牲にしたように私もやれる。
美輪子のために何でもしてやれる。
(杉彦)奇麗。
奇麗。
綱輝さん。
お待たせ。
(綱輝)奇麗だよ。
美輪ちゃん。
(萌子)じゃあ今月の28日に?ええ。
牡丹の季節がいいだろうって先方さまがおっしゃって。
何とかホテルの披露宴会場を確保してくださったの。
(萌子)日程が迫っていたのによく押さえられたもんだわ。
そこはまあお金の力じゃないかしら?
(萌子)そうねぇ。
お金さえ動かせば何とでもなるのねぇ。
(萌子)でも富貴子と美輪子がこんな話をよく受け入れて。
美輪子はともかく富貴子が。
ホントに。
好きでもないそんな年寄りのところに。
65歳っていったら私より1つしか違わないのよ。
だからかわいそうで。
誰にもまねのできるようなことじゃないわ。
心の強い子なんだわ。
・
(チャイム)はい。
(杉彦)こんにちは!
(伊佐子)杉彦…。
(杉彦)広い。
(伊佐子)まあ。
奥さま。
(杉彦)広い。
(峰靖)杉彦!
(杉彦)広い。
(伊佐子)このたびは富貴子が思いもかけないご縁を頂きまして私たちもびっくりするやらあきれるやらでございまして。
(峰靖)突然お邪魔いたしまして。
このたびはどうも。
(伊佐子)一言ご挨拶をと思ってね参りましたんですよ。
それはそれはご丁寧に。
まあどうぞ。
お上がりになって。
(杉彦)広い。
広い。
(伊佐子)さすが立派な家ですわねぇ。
でもうちの大事な娘を小日向家のために犠牲にさせられちゃホントにつらいんですけどね奥さまは実の親でいらっしゃるし。
・
(杉彦)広い。
(峰靖)いや。
こちらさまにはなかなか足を向けられない事情もございましたがこのたびの縁談で知らぬ存ぜぬでは相すまないと思ったもんですから。
・
(杉彦)広い。
(伊佐子)もう過去のことは水に流してね生みの母と育ての母なんだから仲良くしてもいいんじゃないかって。
ねえ?奥さま。
はあ。
どうもこれは…。
(杉彦)広い。
広い。
(伊佐子)ちょっと杉彦。
あっ。
(峰靖)おい。
杉彦。
こら。
やめんか。
おい。
(萌子)あら。
ねえ。
富貴子のご両親なのよ。
(伊佐子)あっ。
(萌子)えっ?あの天ぷら屋の?
(伊佐子)天ぷら屋の吉田屋でございます。
こちらもしかしたらお母さん?あの有名な女優の?浅黄でございます。
ああ…。
(峰靖)これはどうも。
お目にかかれて光栄です。
私ね以前からのファンなんですよ。
『よろめき心中』毎回見てます。
(萌子)あらまあ。
あーっ!?
(伊佐子)あっ!?
(峰靖)おい!
(伊佐子)杉彦。
やめてちょっと!
(杉彦)ハハハ!
(伊佐子)キャー!やめて。
(峰靖)お前は!
(伊佐子)杉彦!
(綱輝)いよいよあしただね。
ええ。
美輪子をよろしくお願いします。
よろしくも何も偽装結婚だから僕はロボットに成りきって型どおりにするだけだ。
ごめんなさいね。
本当に。
(バイブレーターの音)金貸しじじいから?
(バイブレーターの音)いいの。
(バイブレーターの音)
(バイブレーターの音)・
(店内のBGM)行こう。
ええ。
愛して。
愛して!最後だから。
これが最後だから思い切り。
(綱輝)富貴子。
富貴子。
ぼたんって呼んでもいいわ。
愛して。
永遠に愛して。
愛し続けるよ。
永遠に。
富貴子。
ぼたん…。
ぼたん!2016/01/25(月) 13:25〜13:55
関西テレビ1
新・牡丹と薔薇 #37[字][デ]【納得できない交換条件】
亡き父が残した莫大な借金。世奈子(田中美奈子)から金融会社を経営する大隈(大和田伸也)を紹介された富貴子(黛英里佳)と美輪子(逢沢りな)は、驚きの決断をする!
詳細情報
番組内容
富貴子(黛英里佳)は、美輪子(逢沢りな)を救うため、驚きの決意を固める。美輪子との結婚を望む大隈(大和田伸也)に、富貴子自身が結婚すると申し出たのだ。大隈は富貴子の提案を了承。ところが、この話を持ってきた世奈子(田中美奈子)が待ったをかける。富貴子が大隈と結婚したとしても、もともとの婚約者の綱輝(片岡信和)との縁が切れないのではないか、と疑っているのだ。
番組内容2
綱輝とはきっぱり別れるつもりでいる富貴子に、世奈子が信じられないようなことを言ってくる。
世奈子が提示した結婚の条件を聞いた眞澄(伊藤かずえ)は、そこまでする必要はないと富貴子を止める。しかし、もしローズガーデンを失ってしまったら、美輪子が壊れてしまうのではないか。それだけは何としても避けたいと思う富貴子だった。
番組内容3
富貴子の結婚話が進む中、綱輝は不条理とも言えるこの状況を必死に受け止めようとするが…。
出演者
吉田富貴子:黛英里佳
小日向美輪子:逢沢りな
牧原世奈子:田中美奈子
浅黄萌子:山口いづみ
瀬尾綱輝:片岡信和
・
大隈春馬:大和田伸也
小日向眞澄:伊藤かずえ ほか
スタッフ
【企画】
横田誠(東海テレビ)
【原作・脚本】
中島丈博
【演出】
西本淳一
【音楽】
中川幸太郎
【主題歌】
サラ・オレイン「涙のアリア」(ユニバーサルミュージック)
【プロデュース】
西本淳一(東海テレビ)
大久保直実(ビデオフォーカス)
坪ノ内俊也(ビデオフォーカス)
【制作著作】
ビデオフォーカス
【制作】
東海テレビ
ご案内
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【公式サイトURL】
http://tokai−tv.com/botabara/
【公式ツイッター】
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ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
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